転校生の何がいい
「どうだい? 二人共仲良くなれたかな?」
「はい!」
父さんの質問に元気良く
元々あまり女性と話すのは得意じゃないし面白いことを言うキャラでもないが、美雨さんと話すのには気を使わなくても楽しく話せる。
「明日からまた学校も始まるだろうし、裕理も色々と美雨さんに教えてやりなさい」
そう言うと父さんは美雨さんのお母さんでもある
それにしても、『色々と教えてやりなさい』って何を教えるんだ?
◆
――月曜日。今日の教室は何かと騒がしい。
と言ってもいつも決まって騒がしいのだが、みんなソワソワした様子でホームルーム前のこの時間を過ごしていた。
するとその騒がしい男共グループの巣から険しい顔で出てきたのは、友達の中でも一番バカで一番仲のいい
裕翔は疲れた様子で僕の席の目の前にしゃがみ込み、うるっとした目でこっちを見てきた。
「お前は朝からなんであのむさ苦しい
「え?」
「え? じゃなくて……。あそこで何してたんだよ」
「
「町は待ってないだろ」
嬉しそうに飛び跳ねながら僕に訴えかけてくる裕翔とまるで好奇心旺盛な動物のようだった。僕はそれを見て呆れ顔になった。転校生なんて他の学校から移転してきただけの人であり、新鮮味や興味も数週間も経てば失われるであろう。それにみんなが転校生に思い描く綺羅びやかな理想はのただの押しつけでしかない。
「女子か男子か知らないけど、転校生くらいでそんなに盛り上がるのか?」
そう僕が聞くと裕翔は前の席の子の椅子を引いて座り、ニヤッとして僕の机に肘をついた。
「噂だぞ? 今日の転校生、むちゃくちゃ可愛いらしい」
「え? それだけタメがあって可愛いだけ??」
「いや、十分だよ。裕理はほんと由芽ちゃんと別れてから女っ気がないよなぁ」
「その名前を出すな。気分が悪くなる」
裕翔は中学からの仲で、僕の元カノであり今では天敵の由芽のことを知っている。
僕は当時、あの女に告られて付き合ったわけだが、愚かなことに僕も好意を寄せていた。今では主婦とゴキブリぐらい仲たがいしているのだけど。
そしておめでたいことに当時の僕は親友である裕翔にあの女と付き合うための相談や協力を求めた。それもあってか僕らは裕翔を橋渡しとし、お互いの好意に気づいて最終的には付き合うという結末になったのである。
だから裕翔は誰よりも僕たちの過去の関係を知っている。
「でもな裕理、由芽ちゃんも由芽ちゃんなりに考えてたんだぞ。それはわかってやれよ」
「わかってるよ……」
わかってるよ。あの女が僕のことを大事に思ってたことも、好きでいてくれたことも、バイトに行って頑張ってお金貯めて、僕との時間に真面目に費やしてくれたことも。でも由芽は他の男と僕に内緒で楽しそうに……。結局、僕が勘違いして、嫉妬して。勝手に浮気だって決めつけて怒って。僕が悪いのも十分知っている。
「あ!! 裕理、転校生来たぞ!!」
「あ、うん。……ッ!?!!!」
視線を向けた瞬間、身体が硬直して手に軽い痺れを感じた。
――その原因は、教卓の横に先生と一緒に並んで立っていた転校生が元カノと義妹の顔によく似ていたからだ。
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