第6話 清算したら次の計画を立てよう!

「お。本当か」

『はい。理解に苦しみますが事実です』

「ひどくない?」

『私はマスターに嘘をつけないように設計されています』

「まったく。どれどれ」


 入札内容を見てみて。

 AIの言い分にも少し納得した。


 なんだこれ。

 金額を間違えてない?

 こいつが本当なら、今の宇宙船を2ランク上のに買い換えられる額だぞ。


悪戯いたずらじゃないよな。入札者は何者だ?」

『イッポン人となっています。この宙域の宇宙軍所属とのことです』

「うわ」


 イッポン人。宇宙に名をとどろかせる戦闘民族だ。

 味方にすれば親切で頼もしいが、敵に回せば即奇襲や強襲が当たり前の、生きる危険物。


『とても情熱的なコメントが添付されています。読まれるべきかと』

「読みたくねえー」


 開いたコメントには、なんかすごい丁寧ていねいな表現の文章が書かれていたが、要約するとこうだ。


 一目でれた。

 ここまで長く真っ直ぐに伸びた竹は見たことがない。

 海賊船を土台、養分にする武断的な感覚センスも気に入った。

 希少価値もあるが、縁起物えんぎものとしてもご利益りやくがありそう。

 名前といい姿形といい、我々イッポン人の心にビンビン来る。

 すぐにでも購入したい、と。


 とんがったものって、妙な価値がつくものなのかね。

 いや、アレに価値を見出す希少な買い手と、たまたま巡り合ったと思うべきか。


『どうしますか、マスター』

「売る。すぐ売る」

『競売形式でしたので、期間短縮の手続きが必要です。それに値段交渉も可能ですが』

「いいから即売りで。相手の気が変わったら困るし、この値段なら文句ないよ」


 コメントから、なんというか、すぐ返事しないと襲撃してきそうな気迫を感じる。


『承知しました』


 モニター上の文字が動き始め、売却の手続きが進んでいく。

 相手も待ち構えていたんだろうか、すぐに入金する旨の連絡が入ってきた。


『売却処理が完了しました。商品は交易港に預けられ、入金確認後に相手へ引き渡されます』


 モニター上に、<海賊船もブチ抜く一本の竹槍>を回収するための工作船が表示された。

 イレギュラーの結果で生まれた私の処女作だけど、これでお別れか。

 まぁ、各種データは保存してある。その気になったら再現映像を見られるし、条件が揃えば現物の再現も可能かもしれない。

 原料の海賊船をどうやって仕入れるかという問題はあるけど。


『直近で実施すべき作業タスクはすべて完了しました。これから、どうしますか』

「そうだな。新しいコンテナは買うとして、他はなぁ」


 この臨時収入で、選択肢は広がった。

 しばらく遊んで暮らすこともできる。

 大型の貨物船を買って交易し、さらに金を稼ぐことも可能だろう。

 だけど。


「船を1ランク上にしよう。武器もついてるやつ。それと種も上のランクのを買う」

『種とは、また世界樹ですか?』

「ああ」


 あの種を植えたとき。

 育成計画を考えているとき。

 育った世界樹の姿を想像したとき。


 間違いなく、楽しかった。

 なら、それをもっと続けてみよう。

 人生は楽しんでなんぼ、だ。


『また同様のトラブルが発生する可能性があります』

「そのために武器も積む」

『今回ほど高い収益を得られる可能性は低いです』

「わかってるよ。別に収入が第一じゃないんだ。世界樹を楽しんで育てて、副産物を売る。世界樹そのものを評価してくれる人がいたら売る。で、また種を買って育てる。それでいいじゃないの」

『ではせめて完成品には、もっと多くの人の目を引けるような名付けをするよう提案します。今からでも候補を考えておくべきかと』

「えー。ならお前も試しに案を出してみなよ。参考にするから」

『近況から単語選定。類似品の名称取得。候補選出完了。出力します。<最後の花火>。<博打ばくちの末路>。<死んで花実はなみが咲くものか>』

「……うん。やっぱ自分で決める」

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外宇宙で世界樹盆栽 海原くらら @unabara2020

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