うそつき市長(その14)
母屋は丸焼けになった。
山崎は全身火だるまになって追ったが、途中で力尽きて倒れ、元市長は命からがら逃げおおせた。
全身に火傷を負った山崎は、病院に担ぎ込まれたが命に別状はなかった。
やがて順調に回復した山崎は、病院で警察の調べに応じた・・・。
永田市長は、山崎がバーテンダーをやっているカラオケスナックで酒を飲み、閉店後に不意に舌を噛んで自殺した。
ママとの愛人関係が公になるのを恐れた山崎は、じぶんのワゴン車で遺体を市長の自宅前まで運んだ。
市長は嘘つきの常習犯との悪評があるのを思い出し、「うそついたらはりせんぼんの~ます」のわらべ唄のように、市長に針を飲ませ、小指を切って放置した。
ほとぼりが冷めるまで、身を隠すようにママに言ったが、どこへ隠れたかは知らない。
・・・山崎は、おおよそそんな供述をした。
これは、警察のリークとメディアとネットの裏情報から知った。
「水元市議を殺害したのも、元市長に指を送り付けて脅迫したのも、すべて自供したようだね」
コーヒーを飲みながら、話しかけると、
「テロリストの仕業に見せかけたのも間違いないですね」
と可不可は相槌を打った。
「ああ」
「『永田市長がスナックで自殺した』と、そのまま警察に通報すればよかったのです。その嘘を隠すために、テロリストを装って市会議員まで殺した。・・・それとも、山崎は、真正のテロリストだったでしょうか?」
「市長が自殺だったら、死体損壊遺棄の罪で挙げればよかった。警察は、はじめから自殺説を疑っていたのかもしれない。それで山崎を泳がせた」
「『泳がせる』は都合のいいことばです。『手をこまねいていた』が正確ではないですか。泳がせているうちに、別の殺人を犯す。これは警察の悪いパターンです」
可不可は突き放すように言った。
「おい、おい。日本の警察の悪口はいかん。・・・証拠を固めなければ警察は動けないよ」
可不可は口をパクパクさせたが、それ以上は何も言わなかった。
「待てよ、・・・今、何て言った?」
「真正のテロリスト、と」
「嘘つき政治家たちに腹を立てていた山崎は、すぐ側にいた政治家の端くれである永田市長を見せしめとして、殺した。・・・。確率は?」
「50対50」
・・・この確率は、ほとんど意味がない。
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