第53話 主人公のライバル?
まひろさんにちょっと付き合って欲しいと言われ、俺たちが連れてこられたのは……
「ファミレスに来たけど、みんなでご飯でも食べるの、まひろちゃん?」
「そういうわけじゃないんだ」
学園近くのファミレスである。
まひろは結斗と隣り合わせに座っている。
そして何故か、上だけガラスの壁を挟んで、俺とりいなが座っている。もちろん、こちらは対面でだ。
「笠島くんとりいなもそこから聞いていてね」
「おう」
「お姉ちゃん、なんで私が笠島と一緒なの?」
「それをこれから説明するんだよ」
こほん、と咳をつきまひろは言う。
「実は今からとある人と会う約束をしていてね」
それからまひろが語ったのはこうだ。
少し前から、しつこく交際を迫ってくる人物がいるとか。そこで、結斗に彼氏役をしてもらい、できれば今日でキッパリ諦めさせたいらしい。
「偽装彼氏ってやつだね。僕、頑張るよ!」
「ありがとう、結斗」
恋愛に関しては、まひろは偽装じゃなくて本当に結斗のこと好きなんだけどな。
「私と笠島の役割はなに?」
「りいなと笠島くんには、証言者として話を聞いていて欲しい。隙間があるし、そこから話は聞き取れるだろう。もしものためにね?」
「ふーん、とか言って、ゆいくんを偽装彼氏にしたかっただけじゃないの〜?」
「ふふ。さぁ、どうだろうね」
「でも、まひろさんが苦戦してるってことは、相当手強そうなんだな」
まひろは王子様の異名を持つほど、学園の人気者。よく告白されているのは見るし、放課後も告白関連で遅れてくることが多い。
なんだかんだでうまく断っている印象を受けるが……。
「私だって苦戦はするよ? そもそも私は……おっと、例の人が来たよ」
入り口付近に視線を向けると……キョロキョロと周りを見渡し、まひろを見るなり笑みを浮かべ、こちらへ向かってきた。
告白の多くは女子なので、てっきり女子かと思えば……。
「遅れてきてすいませんっ」
サラッとした金髪の髪に、ブルーの瞳。整った顔立ち。落ち着いた爽やかなボイス。高身長。言わずもがなのイケメンである。男である。
見た目だけなら結斗にも劣らない……が。
「……俺は結斗派かなぁ」
「ゆいくんがいい……」
誰かと声が被った。もちろん、対面に座るりいなだ。
「私たちも今来たところだよ」
「まひろさんは優しいな。絶対そんなことないと思うのに。気遣いありがとう。……もしかして、隣の男の子は」
「ああ、私の"一番大切な人"だ」
「初めまして! 佐伯結斗と言います……!」
結斗、緊張気味だな……。いきなり巻き込まれたもんな。
「初めまして。俺は西園寺蓮斗。一応、隣の学校で生徒会役員をしてます。結斗って呼んでいい?」
「は、はい! じゃあも蓮斗くんでいいかな……?」
「もちろんだよ。よろしくな」
西園寺と結斗は握手を交わした。
「あらら、残念。ゆいくんに新しい友達できたかな?」
「うっせい。別に結斗に友達が出来ることは良いことじゃねえかよ」
ニヤニヤしているりいなに一言言い、視線を戻す。
「だが、結斗。君は俺のライバルだね」
「ライバル?」
「その言い草だと、諦めてもらうことはできなそうかい?」
「むしろ、火がついたよ。そもそも、俺のことをまだ知らないまま、フラれるわけにはいかなんだ」
キリッと真剣な表情をすれば、イケメンが増す。
「こりゃ苦戦するわ」
「いい人そうだね。見た目は」
「中身が問題ありそうな発言ですな」
「諦めが悪い人は大体なんかあるでしょ」
「だなー」
りいなが言うと説得力が増すな。
一旦、ストローでアイスコーヒーを飲む。
冷たくてうまぁー……あー……?
「………アイツもしかして」
ここで記憶が蘇った。
ゲームには笠島雄二以外にも、主人公とヒロインの間に割って入ろうとするモブ悪役がいる。
それが、アイツ。西園寺蓮斗。やけにカッコ良すぎる名前だったから、なんとなくは覚えてだんだよな。
確か、夏休み編で色々あって……。
「ちょっとトイレ」
「最後まで聞いていかないの?」
「トイレは本性を見せるとこだからな」
「ああ、なるほど」
りいなは話が早くて助かる。俺は先にトイレへと向かった。
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