第25話 悪役とメイド。準備と予行練習(?)
車の中でつい寝てしまい、目が覚めたらどこかの駐車場……。雲雀のやつ、もしや俺に不満かなにかあって、その仕返しになにかするつもりなのか……?
………………。
……………………。
………………………。
「林間学校に必要なものを買い揃えましょう」
「変に疑った俺が馬鹿でした」
雲雀に連れてこられたのは、大体なんでも揃っている便利な施設。ショッピングモール。駐車場をわざわざ有料の方に止めたらしく、少し歩いてショッピングモールにきた。
西口から中に入ると広々とした空間にずらっと並ぶ様々なお店……。
「ショッピングモールで良かったぁ」
ちょっと安心した俺に、雲雀がやれやれといったジト目を向ける。
「私にどこに連れていかれると思ったのですか」
「えっ、日頃の恨みとかの鬱憤払しに、どこかの建物に俺を監禁して……身体を鞭で叩く、とか?」
「そんな訳ないじゃないですか。私もそれほど暇ではありません」
「だよなー」
「雄二様はそういうプレイの見過ぎですよ。バカですか、アホですか……ちんちんですか」
「ごめんってば……って、最後のはなんだ! 確かに付いてますけど!」
「……ふっ」
「なんだ、その口だけでバカにした笑いは!!」
ちゃんとデカいの付いてますから! 元は笠島雄二のだけど!!
「こほんっ。その話はここまでとして」
「雲雀が始めたんだろうが」
「今日は、下着類やタオル類。あとは……持ち運び可能な歯磨き粉セットとシャンプー&リンスセットを購入する予定です」
「結構買うものあるなぁ。後半の2つはいるとして、下着類やタオル類は家にあったので良くない? 林間学校のためにわざわざ買い替えるのか?」
「はい。新しく買い揃えた方がいいかと」
「ふーん」
まあクラスメイトと同じ空間に泊まることになるから、新品の方が清潔感もあっていいか。
「それに、雄二様だけがブランド物の金ピカパンツだと気まずい思いをされるかと。皆さんと同じ一般的なものを買うつもりです」
「誰だって金ピカパンツ履いてれば気まずくなるだろ」
「失礼しました。カピカピのパンツでしたね」
「そっちの方がもっと失礼だわ!」
たくっ、誰が夜な夜な自分でおてぃんてぃんを慰めて……。
………………。
………大丈夫だよな? 洗濯は雲雀がしてくれているから確認しないけど、俺のパンツ、実はカピカピだったとかないよな……?
「雄二様。みんな大好き、無印良品に着きましたよ」
「こんな複雑な気持ちで無印に入るのは初めてだ……」
「それは可哀想に。ではゆっくり選んでくださいね」
「はいよー。ん? 雲雀はどこか行くのか?」
俺から離れてどこかに行こうとする雲雀を呼び止める。
「私は2つ隣にある、女性ものの下着を扱うお店に行こうと思いまして」
「ついでに自分のも買うってわけね」
「はい。よろしければ雄二様の下着も見繕ってきましょうか?」
「女性もの下着をつけるのは……それはもう気まずいどころか、通報案件なのよ……」
「ご冗談はこれくらいにしますね。では」
「おう」
お互い目的の店に入っていく。
あと、今日の雲雀は随分と饒舌だなぁ。なにかいい事でもあったのやら。
「雲雀買えたぞー……お?」
数分後。下着類やタオルなど、選んだ商品の会計を終えたので、雲雀を呼ぼうとしたが、
「…………」
彼女は、向かいのアクセサリーを売っている店を物色していた。
「邪魔しちゃ悪いな」
備え付けのソファに腰を下ろす。
アクセサリーには元々あまり興味がない。どのデザインが女性に人気だとかもさっぱり分からない。……もしもの可能性で彼女ができた時にでも勉強しとくか? 今からでも雲雀に教えてもらって……。
「……ん?」
雲雀に再び視線を向けると、とあるスペースで足が止まっていた。目の前にあるアクセサリーが気になっているのだろうか、他のには目もくれずじーと見つめている。
ここからじゃ見えないな……。
「それが気になるのか?」
「っ、びっくりました。急に話しかけないでください……」
「あ、悪い」
後ろから近づく俺に気づかないほど、夢中で見ていたのか。
どのアクセサリーで……
「雄二様行きましょう」
「えっ、ちょ……買わなくていいのか?」
「はい。見ていただけなので」
雲雀が早足で店を出る。
雲雀の誕生日プレゼントの候補にでもしようと思っていたのに、どのアクセサリーが気になっていたから分からなくなってしまった。
教えてもらうのもなんだし、俺も店を出る。ふと、店先に立て掛けてあって看板の文字が目に入り……
「へぇ、アクセサリーって種類別に意味があるのかぁ」
必要なものを買い揃えた後は、モール内を見て回り、気になる店には立ち寄ったりした。
「ん、もうこんな時間か……そろそろ帰るか」
「帰りましたら林間学校の入浴の予行練習ですね」
「……今日の雲雀の口からは次々と謎のパワーワードが出てくるなー」
入浴の予行練習ってなに? お風呂は毎日1人で入れてるよね、俺。
「……一応言っとくけど、混浴じゃないからな?」
「承知しています。しかし、結斗様と一緒に入られますよね?」
「そりゃ結斗は男だからな。男湯に入ってもなんの問題も……。……? 結斗は男だぞ?」
雲雀はもしかして、結斗のことを女の子だと思っているのか?
「制服も男用だし、見た目もどう見ても男だろ。中身は時々女の子っぽい気もしてくるが……」
「……確認されたのですか?」
「え?」
ずい、と雲雀が顔を近づけてきた。
「ちゃんと確認されたのですか?」
「……な、なにを?」
「結斗様の"おちんちん"を」
「…………」
俺は顔を顰める。
昼間のおちんちんの時は、ベルトを外そうとしただけで、本体は見てはいない……。
「雄二様」
「は、はい!」
「おちんちんを確認するまでは女の子です」
「妙に説得力ある言葉やめて!?」
なんか変な汗かいてきたわ!!
「てか、結斗は男だから! たとえ男じゃなくても……なんとかなるわ多分! いや、絶対男! 男に決まってる! だから入浴の練習なんていらないから!」
「そうですか。私との混浴は断られてしまいましたか」
動揺してしまい早口で断ってしまった。くそっ。美人メイドと一緒にお風呂は体験してみたかった……!!
「それにしても今日はほんと、饒舌だな。もしかして俺が林間学校で一泊二日家にいないから寂しくてとか? なーんてな。はっはっはっー」
林間学校に必要な物だって、安く手軽なネットよりわざわざショッピングモールに買いに来たもの、寂しさからだったりして。
「………」
「え、まじ?」
雲雀はなにも言わないが、多分そうなのだろう。真顔の表情が一瞬だけだが、図星とばかりに少し動いたから。
「もし、寂しかったら電話かけてもいいんだぞー」
なんて冗談めいたことを言いながら、先に歩き出す。
「いえ、大丈夫です。雄二様には林間学校を楽しんでもらいたいので」
「ああ、そう」
「でも……」
「ん?」
「帰ってきたら………また、こうやって一緒にお出かけしてください」
意外な言葉が聞こえてきて足が止まる。振り向くと、雲雀がこちらを伺うように見つめていた。
「ふっ、雲雀も少しは素直になったなぁ〜」
「ダメですか?」
「いいや? 雲雀が素直になってきてくれて嬉しいよ、俺は。今度は遊園地やショッピングモール以上に、もっと楽しいところに行こうな」
「はい」
口角がほんの僅か上がった。
最近は雲雀が少しだけ笑う姿をよく見れるな。
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