第15話 同時刻——美人姉妹は(?)
「雄二様、着きました」
「ここって……」
電車を乗り継ぎたどり着いた、雲雀が行きたい場所とは———
——同時刻。澄乃家にて。
パキッ、ポリポリ……
「ん……」
妹、りいなはリビングのソファに寝転びながらポッキーを食べていた。
サイズがひと回りでかいだぼだぼの黒のパーカーに、黒いショートパンツを履いて、綺麗な足をさらけ出している。家では意外とズボラなのである。
そして今日は何かを考えるように一点見つめ。朝ごはんを食べ終わってからずっとこの調子。
ふと、リビングの扉が開いた。
「ふぅ、いい湯だった……。りいな。まだパジャマでゴロゴロしてるの? もう10時過ぎだよ」
姉、まひろが濡れた髪を拭きながらやれやれ、と注意。彼女は朝のランニングから帰ってきてシャワーを浴びてきたところだ。
「せめてお菓子は起き上がって食べないと、胸にお菓子のカスが飛び散るだろう」
「はぁーい」
ソファから起き上がったりいなの隣にまひろは座る。
「せっかくの休日なのにダラダラしていたらもったいない。もっと有意義なことに休日を使わないと」
「休日だからこそ、ダラダラするんです〜」
「はいはい。休日の過ごし方は人それぞれって言いたいんだね。それで、先ほどから何を考え込んでいるんだい?」
「……やっぱりお姉ちゃんにはバレちゃうかぁ。なんたって双子だもんね」
「ああ。それに考えていることもなんとなくなら分かる。あの男の子のことだろう? 確か名前は……」
「———笠島雄二」
「そうそう。笠島雄二くん。へぇ、りいなが結斗以外の名前を覚えてるとは珍しいね」
「ここのところ毎日、ゆいくんからアイツのことを聞かせられれば嫌でも覚えちゃうってのっ」
結斗の口から雄二の話題が頻繁に上がるようになった。初めての男友達とあっての嬉しさもあると思うが、話題が切り替わっても、またすぐに雄二の話題を話すほど、雄二に夢中になっていた。
そして決まって最後には、
『雄二くんはすごくいい人なんだよ!』
満面の笑みで言うのだ。
『へぇ、興味なかったんじゃないの?』
『興味ないよ。むしろ……あの人にゆいくんが興味がなくなるようにしたい』
まひろは、思い出して聞く。
「彼になにかやるんだっけ?」
「そーだね。このままだとアイツにゆいくんとの時間をゴッソリ取られるどころか、"私の"好意がゆいくんに一生気づいてもらえない気がするしね〜。ゆいくんはほんとに鈍感だよー。まあそこも好きだけど♪」
「結斗はどんな姿でも可愛いよ。そんな結斗の隣にいる彼は、今は悪いことは何もしていないから、手出しができないって悩んでるってところかな?」
りいなは顔を顰める。
「そーなんだよねー。怖い顔して、悪さしないんだよねー、恐喝とか。ムカつくけどゆいくんのいい友達してるー」
「りいなは噂とか信じないタイプだよね」
「あー、あの人。なんかヤバイことに手を出してるって噂たってるんだっけ? でもほら。私が勘違いされやすい見た目している側だしね。噂なんて信じないよ。信じるのは、実際に目の前で起こった出来事だけ」
「そうだね」
噂に流されずちゃんと人を見るところが妹のいいところ。
と、まひろは心の中で感じ、微笑む。
りいなは疲れたように腕を上げた。
「はぁ〜〜、私って考える柄じゃないから疲れた〜。よし、お姉ちゃん。せっかくの休日なんだし、どこか出かけよう」
「そうだね。結斗も誘おうじゃないか」
「ゆいくんを誘うのはもちろんだとして、今度はゆいくんがアイツを誘ってくるじゃん」
「大丈夫だよ。結斗は彼とは連絡先はまだ交換してないようだし」
「なんで分かるの?」
「結斗の連絡先一覧を見たから」
「………」
堂々と結斗のスマホを勝手に見たことを公言するまひろに呆れた視線を向けながら、
「それでどこに行く? ショッピングモールとかはたくさん行ってるし、身体を動かすって感じでもないし……」
「じゃあ童心に戻ってあそこでもどうだい?」
「あそこ?」
見当がつかないと首を傾げるりいなに、まひろは言う。
「——遊園地とか」
「見ての通り、遊園地でございます」
そして、同時刻。雲雀も雄二の前で言ったのであった。
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