94 心配されても、知らずの食い気
ユウヴィーが遠く異国の地で瘴気汚染された巨大な何かが現れたと報告を受けたのは数週間後だった。
夜を昼ような明るさにした光は、寝ていたユウヴィーにとって知らない。仮に夜更かしをして、その光を見ていたとしても何かできたかというと何もできなかったので問題なかった。
状況の報告が入るまでの間は、瘴気汚染した蝙蝠の浄化対応をし、沈静化に務めていたからだ。
瘴気汚染した蝙蝠の瘴気汚染の広がりを見せたものの、光の魔法による浄化で瘴気の浄化漏れがなく、沈静化しつつあったのだった。
各国での対応方法を時間差はあるものの情報連携し、よりよい対策を共有していっていた。
せわしない日々が落ち着くと思った矢先に、不穏な報告だったのだ。
不安を抱えたり、どうしたらいいのか考えながらしなくて済んだのもあり、よかったとも言えた。
ひと段落し、ユウヴィーとレイバレットは学園に馬車に乗って向かっていた。
「鳳凰国、というのをユウヴィーは知っているか?」
レイバレットと長く行動するようになって互いの距離感が近くなり、互いの口調もだいぶ距離感が近いものとなっていた。
「図書館で以前調べた内容くらいしか……まさか、今回の瘴気汚染がその国で何かあったのですか?」
「事前に対策をし、情報を連携していたのだがどうやら瘴気汚染されてしまったらしい」
「らしい、というのは?」
「連絡がつかない、調査隊からの報告だと焦土と化しているとあり、生存者の確認すら困難とあった」
ユウヴィーは世界的な危機に該当することではないかと思うのだった。
「もしも、今回の変容した瘴気が何らかの形でその国に到達し、瘴気汚染された場合はどう考える?」
「さらに瘴気が変容した、と考えるのが妥当だと思います」
レイバレットもユウヴィーの考えと同じだったのか、うなずき神妙な表情をしていた。
「鳳凰国の霊鳥、陽光鳥サンアールフェニックスが瘴気に汚染された可能性がある。詳しい生態は鳳凰国の一部の者しか知られていないが、私がある程度知っているから先に説明しておこう」
陽光鳥サンアールフェニックスは、全身が炎を纏っており近寄れば火傷をする鳥だった。その炎は聖なる炎とされ、様々な瘴気を浄化するものだった。
その浄化する炎を霊鳥から分け与えてもらい、鳳凰国はその聖なる炎で瘴気から身を守っているのだという。
「それじゃあ、変容した瘴気がその聖なる炎より勝っていたら――」
レイバレットはユウヴィーの光の魔法の浄化をすがるしかないと言っているものだった。
「君の力がもしかしたら一番必要になってくるかもしれない」
ユウヴィーは聖水という浄化の力を持つ水が存在することを思い出すものの、全身を炎で覆っている陽光鳥サンアールフェニックスには焼け石に水なのだろうかと思った。
「その霊鳥はどのくらいの大きさなのですか?」
ユウヴィーが対峙した邪龍と同じくらいの大きさだとわかり、聖龍と戦わせれば怪獣大決戦になって私の役目なくならないかなと思うのだった。
「もしかして、人語を介したりとか――」
「いやそれはない」
(巨大な鳥なら、倒した後に食べれるわね。ちょっと味が気になるのよね)
以前、聖鳥を狩猟し、食べたときは極上の味だったのもあった。そのため、食べれるものなら食べたいと思うユウヴィーだった。
もはや、各地で浄化活動をしている中で狩猟も傍らおこなっていたのだった。
行く先々で瘴気汚染の影響でまともに食べれない人たちに近辺に出没する動植物を調達していたのだった。自身の領地でやっていたことなので、手慣れていた。
レイバレットはその行為を最初こそは戸惑っていたものの、すぐに慣れ、騎士たちも進んで協力していた。瘴気で汚染された動植物も浄化されるのもあり、復興にも貢献していたからだった。
「霊鳥が瘴気に汚染されてないことを祈りたいが――」
「確定していない情報だけから推測するだけでも霊鳥である気がしてならないのですが」
困った表情でうなずくレイバレットは、ユウヴィーに対して申し訳ない気持ちをあらわしていた。だが、ユウヴィーはユウヴィーでひさびさの美味しい鶏肉を食べれるかもしれないと不謹慎ながら思っていたのだった。
(一応、あとでさりげなく聞いてみよう。もしも霊鳥だった時に倒したら食べてもいいかどうかを……褒美としてといえばいけるかな)
長く学園から離れ、瘴気の浄化レスキューと現地サバイバル狩猟生活によって、貴族教育の化けの皮が剝がれているユウヴィーだった。
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