93 悪役令嬢のエリーレイドは覚悟を決める。
エリーレイドは政略多重婚をするために瘴気対応と同時に根回しをしていった。
しかし、当人であるユウヴィーが各地の被害が大きい場所に転々と出払っている事もあってうまく引き合わせることができなかった。
攻略対象者たちはそもそも安全面から、瘴気の被害があった場所に行かないからだった。聖剣士マックスくらいなら引き合わせる事が可能ではあったものの、あれはすでにいちゃついてるという報告があった為、除外していた。
また、攻略対象者と縁がある国の瘴気対応に派遣しようとしても、各国の攻略対象者が先に解決するということが多発したのだった。
瘴気汚染された蝙蝠が空を飛び、瘴気に汚染されると人からバケモノに変容するという今までの歴史にはなかった。そんな未曾有の出来事が多発している中で各国は協力しあい、解決していった。
エリーレイドは執務室で頭を抱えていた。
「強制力なのぉぉぉ?」
ハーレムエンドにしようとしたがどうにもうまくいかず、どれもかすりもしなかったのだった。
次第に、各国の瘴気状況が次第に収束していくことを報告を受ける。ハーレムエンドは厳しい現実を知る。
「このままじゃ、もう私が腹をくくるしかないってことなの? 普通に生きたかった、今度こそ普通に」
すでに公爵家の令嬢であり、前世の知識チートで過ごしている時点で「普通」からかけ離れているのだが、エリーレイドは現実逃避していたのだった。
そんな中で窓の外から光が入り、夜が昼のような明るさになる。
「あの方向は……鳳凰国? いやでもあそこは早期に浄化や結界で……」
エリーレイドは攻略対象者が存在しない国は、可能な限り支援していた。理由としては、そこに足を引っ張られる公務があるとユウヴィーの殉愛が成功しないと考えていたからだった。
かなり念を入れて、リレヴィオンが開発した浄化システムや聖教国の聖剣の素材をかけ合わせを提案し、強化浄化システムと結界魔法で万全だった。騎士も更に派遣し、今回の危機は鳳凰国にとって看過できない事も伝えていた。
エリーレイドのポケットマネーでも色々手を回していた。
遠くの空が赤く昼間のような光が空に向かって伸び、いくつもの線が意思を持っているかのようにうねっていた。
次第にそれは収束し、大きな両翼になり、鳥の形を形成したのだった。
「火の鳥……フェニックス? マーベちゃん!! 攻略本!!」
エリーレイドは鳳凰国には霊鳥が存在し、国を守護している事を思い出し、それが瘴気に汚染させられたと思うのだった。
「わ、我が主、こ、この攻略本によると……あ、ありません、ありませんっ!!」
「なにあれ、知らない……わからない、何が起きようとしてるの!?」
攻略本にも記載されていない事態が多くの人たちの目に映るような出来事が起きた事に動揺していた。
はるか遠くの空に見える大きな炎の鳥の形をしたものは次第に小さくなり、元の夜の闇が戻ってきたのだった。
エリーレイドはぞわりと背筋が凍るような感覚から不安と恐怖で祈るように両手を握っていた。
「マーベちゃん、攻略本に最後のラスボスに対して、誰が集まってる?」
どうやって倒すのかはわからない。ただ、力ある者だけではなく、乙女ゲームならではの思いの力によって倒すはずだと思ったのだった。
「我が主、この攻略本によると――」
使い魔のマーベラスからすべての攻略対象者名と告げられ、どうやって戦場に引っ張り出せばいいのかエリーレイドは頭を悩ませた。
「騎士たちを動員したとしても、要人を一箇所に集めるというのは流石に……ユウヴィーを人質にとったとしても、いやそれじゃ何してんだっていう」
考えがまとまらず口に出しながら、どうすればいいのかとエリーレイドは答えを出す。
「ぐ、偶然を装って……一箇所に集めるようなスケジュールに? いやそんな都合良くいくかしら? 強制力が働くかしら?」
攻略対象者の中には、レイバレットの名前が挙げられたが彼女は世界をどう救えばいいのかを優先したのだった。
悪巧みを必死に考えてもどれもうまくいくわけがないことが明白で、そんな事を考えても仕方ない状況であると次第に自覚するエリーレイドだった。
ギュッと目をつぶり、手が真っ赤になるくらい握る。
(私の負け、完全に負け。なら……潔く、カッコ良く、生きていこう。たとえ、死ぬ事になっても……)
「や、やるしかないわね。私だって、この世界は前世でお世話になってるしね。やるしかない、やるしかないわ!!」
エリーレイドは覚悟を口にし、涙目になりながらも、震える声を必死に悟らせまいと叫んだ。
「我が主!!」
「やるわよ!! マーベちゃん!!」
エリーレイドは即座に計画を練ることにした。使い魔のマーベラスと共に、攻略本の情報、この世界の地図、攻略対象者たちの行動、まだ見ぬ瘴気に汚染された鳳凰国の霊鳥について、想像をし対策を考えたのだった。
彼女はこの時はじめて、影の聖女となったのだった。
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