アリア攻略編10 エミの嫉妬
恋人と情熱的な夜を過ごし、ふと起きると、隣りで寝ていたはずの恋人が姉に無理矢理キスされていた。初めのうちは抵抗していた恋人も、すこしずつ、すこしずつ流されていき、最後には自分から唇を求めていっていた。
ケダモノみたいにムチュムチュと唇を
「続きは、あとでしようね♡」
とでも言うかのように、姉は可愛く手を振り微笑んで、部屋を出ていった。
それから恋人は、私を起こさないよう慎重に身支度をして、いそいそと姉を追いかけていってしまった。私を残して。
腹違いの義理の姉、正妻の子。私は妾の子。昔から差を付けられてきた。母の扱いも、私の扱いも。蛙の子は蛙。妾の子は、妾になるしかないんだよね。私なんて、どうせ。
───エミの思考はこんな感じだろうか?
思いがけず良いシチュエーションになったな。いや、ヤバいか。やり過ぎたかも。俺だったら脳が破壊されてるよ。
エミは起きていたはずだ。アリアが毎朝起こしに来るが、顔を合わせたくなくて寝たフリをしているのを俺は知っている。エミの魔力はいまだに見えないが、すこし触れればわかるんだ。簡単にわかってしまう。俺たちの魔力は波長が同じだ。
理想は今朝、ベッド脇の足元に転がる流星剣をアリアの腹に突き刺してほしかったんだが。エミの好感度はまだまだ足りないようだ。もう旅立ちまで時間はないのに。
この世に最強の矛は存在しない。少なくとも、男と女の間においては。
女を必ずオトせるテクニックも、必ずイカせるテクニックも、あるわけがない。すべて
エミは俺を好いてはいる。体も重ねている。便宜も図ってくれる。
ただ、それだけだ。感情に流されることはあるだろうが、流されないこともある。
それなりに執着されている実感はある。魔王討伐後は俺はアリアと結婚し、エミは他の下位貴族と結婚するという話をわざわざしてきた。
あれはアリアを捨てて私を奪って欲しいという乙女心からだろう。無垢で、純粋で、お姫様のような発想。俺のような男でさえ、胸がぎゅうと掴まれる。守ってやりたくなる。
だが、俺が欲しいのは共犯者だ。助けられるのを待っているだけのお姫様は要らない。受け身じゃ困るんだ。
聖女殺し。
この大悪事を一緒に成してほしい。だから、エミが闇に堕ちるまで、俺も心を砕くよ。アリアの洗脳は日を追うごとに深まっている。殺意を維持するのがキツくなってきた。時間がない。
俺たちは魔力の波長が同じだ。きっとこの想いは伝わるだろう。
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