アリア攻略編7 勇者の攻略

「マコトさぁ、じぶんの事あんまり話さなかったのに、なんかめっちゃ語るじゃん? これさぁ、あれでしょ?「うざ」

「惚れちゃったんでしょ。あたしに」


 5分前の自分の行動をもう後悔していた。それくらいエミはゴキゲンで死ぬほどウザかった。睨みつけて言ってやる。


「うぜえ」

「もぉ〜。デレデレじゃ〜ん」

「殺すぞ」

「ふっふっふ。堕ちたな」


 堕ちてないし。俺が攻略されてどうすんだよ。なんかエミが絡みついてくる。


 ひっついてキスをせまってくるエミを、首を掴んで引き剥がす。まだニヤついた顔。愛嬌があってかわいいのがムカついた。右手の親指と人差し指で頸動脈を圧迫していく。


「ぐぇ」

「死ね」


 エミの表情をじっくりと観察する。そこにあるのは俺に対する親愛の感情くらいだ。裏は感じられない。俺は自分の勘を、もうしばらく信じることにした。ウザいけど。


「あぅ。んっ、ん……」

「……」


 恍惚と苦痛の表情が入り混じってきた。首を絞められて喜んでやがる。ノーマルなはずの俺まで興奮してきたところで、取り返しがつかなくなる前に指の力を緩めた。


 倒れ込んでぜーはー言ってるエミ。頭を撫でてやると、きもちよさそうに目をつぶって、撫でられるままにしている。なんだかネコみたいなやつだな。


 洗脳由来の頭痛はなかった。この程度なら反応がないのは、もう何度も検証済だった。プレイの一環扱いなんだろうか? 行為は男の暴力のようなものだ。女が受け入れているかが判定されてるのかもしれない。


 ちなみに10秒を超えたあたりで先に俺が気絶する。ウラハ家の貴族を害することはいまだに無理そうだった。他の貴族については、会ったことがないため未検証だ。


「ねぇ。ききたいことあるんでしょ」

「洗脳について何を知ってる。全部吐け」

「いや、そういうんじゃなくて? あたしのこととか?」


「ウザいな。ホント殺すぞ」

「いいけどさ。うーん……」


 うーとかむーとか言いながら、目をつぶって考えこむ。質問が漠然としてたので具体的に聞く。洗脳魔法の効果や制約を割り出したかった。


「アリアはエミを洗脳できるか?」

「ムリかな。あーでも、あたしの魔力を奪って空にしたらできると思う」


 召喚直後の俺なら洗脳できるが、魔力を得た後はすでに命令されたこと以外は大丈夫そうだな。特殊な条件下でなければだが。


「アリアは魔力1の平民を洗脳できるか?」

「だから、魔力が空じゃないとムリだって」

「そういうものなのか」


「かるい精神魔法ならともかくさー。恐怖とか混乱とかの」

「へえ。おもしろいな」

「そう?」


「あぁ。アリアは物理系の魔法以外には貝なんだよ」

「貝みたいに口を閉じるってこと? あははっ。アリアは貝、いー」

「ふっ、そんな感じ」


 唐突な貝の顔マネにちょっと笑った。魔力は1でも残れば洗脳にレジストできそうなのも朗報だった。意外と条件がキツいようだ。


「あ、マコトなら魔力1でも洗脳できるよ」

「は?」

「手は出さないでね。従者メイドのあの子とか」

「……。数万倍あれば、洗脳はできるのか」


「もー、わるいこと考えないでよ?」

「違うって。エミのこと考えてた」


 エミの魔力を一時的に弱めれば、洗脳することができるのか?

 洗脳すれば、やっと心の底から安心できる気がした。


 窓から入るわずかな光に、白い裸体が照らされている。ほどよい大きさのやわらかいふくらみや肉付きのいい腰をシルバーブロンドの長い髪がつたっている。何度味わってもあきる気がしない。


「えー、やば。すごいことになってるよ。どうしちゃったの?」


 この美しい少女の身も心もすべてを支配する妄想は、俺をひどく興奮させた。

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