第21話華音VS衆議院議員(3)

華音は、その中年の女性事務員に声をかけた。

「杉田晴幸先生は、いらっしゃいますか?」


すると、その女性事務員が返事をする前に、華音たちに暴言を浴びせ、華音に掴みかかろうとした秘書の男が、再び、華音に迫った。


「このガキ!何度言ったらわかる!」

「お前たちは馬鹿か!」

「日本語がわからない毛唐か!」

「ああ、毛唐の姉ちゃんが二人もいるな!」

「だから、日本語がわからねえのか!」

「いいから、とっとと帰れ!」

「帰らねえと、不法侵入で警察呼ぶぞ!」


途中、中年の女性事務員が何度も止めようとするけれど、全く聞く耳は持たない。


華音たちが、最後の「警察呼ぶぞ」の時点で、呆れ顔になっていると、今度は事務所から壮年のスーツを着た男が、顔を出した。

ポスターの写真の、杉田晴幸衆議院議員である。


「石川!何を騒いでいる?」

「それから誰?こいつら?」

「渡辺さん、帰して、忙しいの、例の投稿動画の件で」


騒いでいる秘書は、石川。

中年女性事務員は、渡辺というらしい。


ところが、その渡辺事務員は、華音を把握していたようだ。

華音を見て頭を下げ、「先生・・・この若い人は・・・」と耳打ちをする。


途端に、杉田晴幸衆議院議員の表情も態度も、「コロッと」変わった。


「え・・・あ・・・貴方様が・・・三田華音様?」

「どうぞどうぞ、お入りになって」

「本当に失礼を、申し訳ありません」


怪訝な顔で、議員と華音たちを見る石川秘書を強く叱責。

「この人は、三田華音様」

「首相直属の調査官」


「え?」と、腰が抜ける石川秘書には、更に追い打ち。


「三田様は、このビルのオーナー様で」

「我が党の支援者様で、従前から、多大な献金もいただいている」

「もちろん、この私もだ」


石川秘書は、震えあがった。

華音は、そこで嫌味。


「不法侵入って言われましたが、警察を呼ぶとも」

「胸倉も掴まれそうになるし」

「それから、毛唐との発言は、完全に差別用語」

「毛唐だから日本語がわからないとか、そういうことを言ってもいい、そういう考えなのですね、この秘書は、この議員事務所は」


そして議員にも厳しい。

「ここは、暴力団の事務所なんですか?」

「言葉遣いといい、訪問者への対応といい」


顔を下に向ける議員に、さらに言い放つ。

「こんなことでは、事務所の賃貸契約も継続しません」

「もちろん、次の選挙の推薦もお断りします」

「父の三田コンツェルンも、叔父さんの岩崎グループも同じです」


華音の厳しい言葉に、杉田議員も、床に崩れ落ちてしまった。


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