第20話華音VS衆議院議員(2)

シルビアは呆れたような顔

「どうする?華音」

春香は失笑

「まるで馬鹿やな、あれも議員さんの秘書やろか」

「少なくとも、京都の議員さんの秘書は、もっと慇懃にお断りや」

雨宮瞳は気がついた。

「うん、立会演説会で見たことある、その時は、えへらえへら顔で会場整理していたな」

エレーナは華音に聞く。

「事務所まで行くの?」

華音は頷いて、二階の議員事務所につながる正面の階段をのぼり始めた。

「まあ、入る前までは表敬訪問」

「でも、今は・・・違う」


二階の事務所のドアには、大きな木の看板「杉田晴幸衆議院議員事務所」とある。

窓ガラスのあちこちに「地域の声を国政に、杉田晴幸」「誠実な男、杉田晴幸」のポスターが貼ってある。

華音の一行が、事務所のドアに近づくと、さっきの野太い声の主だろうか、坊主頭、黒いタートルネックのセーターに紺のジャケットを羽織った太目の男が出て来た。


「おい!お前ら!何をしに来た?」

「とにかく今は帰れ!」

「おおかた、学生の選挙事務所訪問かなんかだろう?」

「選挙前で、アルバイト募集している、そんなこと思って」


華音は、その野太い声には、全くひるまない。

「選挙?」

「選挙に出るの?」

シルビア、春香、エレーナ、瞳は、華音のとぼけた返しに、思わず吹いている。


すると、野太い声の秘書が、いきなり激高。


「何だ?このガキ!」

「しばかれてえのか?」

「ここをどこだと思っている?」

「恐れ多くも、お前らとは身分が違う、杉田晴幸衆議院議員大先生の事務所だ」

怒りのあまりか、華音の首元に腕を伸ばした。

襟首でも、掴もうとするらしい。


しかし、その伸ばした腕は、華音に届かない。

すっと華音が身をかわし、野太い声の秘書は、床に転びそうになる。


華音

「今の、録画した?」

シルビア

「入る前の、帰れ、からだよ」

春香

「いいよ、こんな秘書がいるなら、契約切って」

エレーナ

「選挙民に暴行しようとするしね」

雨宮瞳

「推薦も切ったら?」


そんな大騒ぎが聞こえたのだろうか。

衆議院議院議員事務所のドアが開き、今度は中年の女性事務員のような人が、顔を出した。

華音の顔を見るなり、「あっ!」と声を出し、焦り顔に変っている。


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