第121話 おやすみ中な守護者

〜ケイト〜


柔らかいソファーでコーヒーを飲みながらパソコンを操作する男が1人。

パソコンの画面には、現在ケルベロスと守護者が戦っている映像が映っている。


隙を作ることは成功、後はトドメだけですね。


目の前のタブレットを操作し、小型の虫型カメラを一時停止する。

ナインや他の数字持ちに報告書を提出する時、私と契約している悪魔の存在がバレるのはよくない。


悪魔は、

『俺の魔法で契約者であるお前が撮らなければ映像に映らん』

と言っていた。

最後のトドメは悪魔が刺す予定のため、カメラを止めたのだ。


契約に

・悪魔の行動を全て私に見せる

を追加したのは正解でした。


映像に映らないなら暗躍されても気づけない可能性が高い、私の計画を契約の穴をつき妨害する可能性も十分あった。


ガチャ


「早いですね、もう終わったのですか?」


扉が開いた音が聞こえ、少し早いと思いつつ後ろを向く。


「!」


悪魔はボロボロになっていた、左腕は無く身体中の鱗が剥がれている。

その姿に驚くも直ぐに切り替える。


「おや、素敵な姿ですね。」


「黙れ!さっさと影に入れろ。」


ボロボロの姿でも高圧的なのは変わらないのですね。


「えぇ、どうぞ。

私のカメラは止めてしまいましたし、何があったか教えていただいても?」


『まさか概念の武器を神以外に渡すとは、よほど信用しているのか、ただのバカなのか。』


悪魔は私に話しかけているのではなく、考えを整理するために独り言を喋っている。


『此処がレベルの高い世界とは知っていたが…

魔法で縛っているのか?いや、アレなら無効化できる。』


しばらくは話しをできそうにありませんね。


悪魔の独り言が煩わしく感じるも、再びタブレットを操作しカメラを起動する。


「守護者?いや、あれは…」


守護者がケルベロスと戦っていると予想していたが、ハズレたようだ。


戦っているのはケルベロスと金髪の少女だった。



〜カマー〜


「カマーどうするの!

あそこで寝てる守護者ちゃんは放置なの?!」


「槍の攻撃で悪魔が引いた事を考えると、あの場にいくのは危険だわ。」


ケルベロスと守護者の戦いを、相変わらず馬鹿げた強さねぇ、なんて考えながら見てたら急展開。


悪魔が後ろから現れて守護者を捕まえ、

助けに行かないと!ってエイラが騒いで

背後からキラキラした槍が飛んできて悪魔は撤退


最後には謎の金髪少女登場。


もう意味がわからないわ。

まさか悪魔自身が出てくるなんて、魔法で盗撮を阻止されかけた。

まぁ貯蓄してた魔石を殆ど使い切ってなんとかなったけど、音は拾えなかったわ。


金髪少女の行動を見る限りでは、守護者の味方だと思うのだけど…

でも眠らせるのは少しおかしいわね。


「これさ、上空に居るカマーのゴーレム使って眠ってる守護者ちゃんだけ回収できない?」


「できるかもしれないけれど…」


「じゃあやって!」


この子、本当に優秀なのよね?

少し危機管理能力が低すぎないかしら、これだけイレギュラーが起きてる状況で動くなんて危険すぎる。


「それはできない、危険すぎるわ。」


「…でも!むーーーー!」


エイラが反論しようとしたが無茶を言ってるのがわかったのか、頬を膨らませてむくれている。


なんだ理解はしてるじゃないの。


映像ではケルベロス相手に無双してる金髪少女、槍を一振りで建物が崩れていく。


守護者と違って被害を気にしてないし第二の守護者とかではない、また新しい勢力?

でも守護者は結界で守られてるから、少なくとも敵対はしてないはず。


「イチャイチャできると思ったのに…」


「エイラ貴方この前は友達になりたいって言ってなかったかしら?」


「一緒にずーーっと過ごしたら友達でしょ?」


「…えぇ、そうね。」


よくわからない理論だけど理解が難しい事はわかるわ。


エイラが部屋の角で体育座りになり、静かになったから集中して観察できると思ってたら


バン!


「おいおいおい!

楽しそうな事してんじゃん!」


「俺達も混ぜろ!」


扉を勢いよく開けて

脳筋カス騎士2人組が現れた。


「はあぁ…」


頭が痛いわ。

あの2人、契約の魔法で指示した事を直ぐに終わらせて自由になるから私のストレスが緩和どころか煽ってきて倍増よ。


「貴方達、アレは悪魔の僕であるケルベロスよ。

相手をみてから言いなさい。」


「ただのデケェ犬じゃん。」


……スー


「じゃあ言ってくればぁ?!

ただし私は危なくなっても絶対に助けないし、顔は絶対に隠しなさいよ!!」


「ラッキー行くぞー。」


はぁはぁ…

私もう帰ろうかしら、


「でもこの世界、食べ物美味しいのよね。」


シェイクと呼ばれる飲み物を飲みながら、映像を見て


「グバァ!」


盛大に咽せた。


「な、ななな…」


なんで、あのエイラまで行ってるのよぉぉ!

しかも金髪少女と戦闘までしてるし!


口を拭いながら、遠距離で会話できる魔法を使う。


「聞こえるわね?!

エイラは今直ぐ帰ってきなさい!」


『あと少し、あと少しで守護者ちゃんの所だから。

ケルベロスがやられるまで待って!』


なにがあと少しなのよ!

全く守護者に近づけてないし、ケルベロスはもう満身創痍。


あ、ケルベロス倒れた。


「早く帰ってきなさいって!」


『待って!

この子もエルフだ!』


その情報はありがたいけど、

今じゃないのよ!

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