一日一首(令和三年八月)
蒸す大気をゆすれる草刈りエンジン音 不快指数をさらに上げをる
蒸し暑き大気にひびく笛太鼓はねぷた祭りのお囃子ならむ
新しき網戸に替へて心地よし真夏の夜も良き眠りとならむ
つがる市のふるさと納税おもひ立つも返礼品の多彩にまよふ
バタバタと〈えんじゅの里〉をとびまはるスタミナ配分顧慮の外(ほか)にて
青森県つがる市さへも熱波受く 炎暑の今こそ地吹雪おこれ
〈えんじゅの里〉の診察室の引越に汗かきてスタッフら絆を深む
温度計の‘三十六度’をにらみつつ「今日は立秋」と唱へてをりぬ
深緑色の公用旅券に記さるるアラビア文字のかなし懐かし
エアコンの吐く水ながめ感謝せり蒸す大気より絞りし技に
掛軸を替へむと床の間の父の遺品を曝涼すなりお盆に向けて
雨あがり涼風至る夕まぐれうす掛け羽毛布団を早目に出して
夕暮れにカナカナと響く蜩の生き急ぐごとき声のせつなさ
夕暮に蜩の鳴くカナカナの響きは気に沁み心ふるはす
お盆とて茄子と胡瓜に箸さして精霊牛馬となし仏壇の前に
仏壇へ朱塗りのお膳をそなへたり浄土三部経のCD聞きつつ
ひさびさに『失敗の本質』を読み返す終戦記念日のおだやかな午後
二十歳からハンドルにぎりし半世紀の〈運転経歴証明書〉を得ぬ
肺炎と診断をつけ点滴し自宅へいそぐ薄暮の津軽路
雨ふりて緑濃き林檎や稲田ぬひ津軽路を経て〈えんじゅの里〉へ
理事長へプレゼンせむとパソコンにデータを打ち込みパワポで飾る
エネルギーを使ひはたしし金曜は帰宅の車中で舟をこぐなり
夕飯と十時間余りの爆睡で老医師われは充電完了
めざむれば蒙霧升降する庭さきに新しき日よけのストライプ眼に沁む
盆すぎて処暑に入りぬ出勤のタクシーに上着を羽織りて乗り込む
ボイラーを新調しての初シャワー疲れも流す打たせ湯さながら
強き雨に黄色の合羽をはおりたる案山子立つなりお役目として
アマゾンからコンデジカメラ買ひたれど届きしは大箱でほとんどが空気
薬剤の散布車〈スピードスプレーヤー〉は津軽路に渋滞おこし林檎園へと
津軽でも診察終へれば媼らは笑みて掌(て)を合はす。医者冥利なり
「天地始めて粛し」とふ処暑の候なれどエアコンをドライに〈甲子園〉を観る
岩木山を眺めて通ふ津軽路に無数の林檎が色づきはじむ
岩木川のラバーダムにひそむ小魚をあさりて飽くなき白鷺に秋
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