一日一首(令和三年一月)
初春やふさはしき歌をと詠みければ令和三年も斧正こひたし
書初めせし『心機一転』を眺むれど佳き短歌(うた)うかばず墨かわきけり
初夢を見しか見ざりしか二度寝して確かめたくなる温き床にて
年明けて初の仕事にいざ出でむ老いらの無事を幸ひとして
暦では「小寒」なれど盛岡の朝の凍(こご)えは「大寒」と言ふべく
朝陽あび白く輝く南部富士の峰ゆ舞ひあがる雪煙あをし
唐土の鳥が渡らぬさきに」と七草をきざみし妻と粥をすすらむ
極北のブリザードのごとき夜のあけて白きベランダに陽のありがたし
吹雪さりて倒れし鉢をもどす手にローズマリーの香の残りゐる
コロナ禍の緊急事態宣言に毫も響かぬ総理の言行
「捻りすぎ」と妻の辛口批評うけわがエッセイを切り抜く手ゆがむ
コロナ禍に意地をはりあふ狐狸をりて弱き人らは泣くばかりなり
コロナ禍に台湾モデルの凄さ知り「台湾に学べ」と今さら羨む
中国の隠蔽体質なかりせばコロナなき世ののどけからまし
WHOを手玉に取りし中国のめざす世界に安寧ありや
「偏見」とふ酷烈なる言を受くれども吾は詠はむ忖度などせず
小正月に妻のつくりし〈けの汁〉は亡母(はは)の味なり津軽なつかし
〈けの汁〉を子らに送りて妻いはく「あなたにはまた作るからね」と
夜の更けて逝きし媼は笑みうかべ生保内(おぼない)の空へ魂(たま)駆けをらむ
新しきグンゼの股引ぬくければ夜更けの呼出しもう苦にならず
施設長室の屋根雪どどどと滑り落ち岩戸が開くがに天窓ゆ陽の箭(や)
大寒(だいかん)も盛岡の路面は黒きまま。津軽の大雪ふと懐かしき
トランプ氏乗せてエアフォースワンは飛び立てり。悪夢のごとき不祥事残して
新しき主(あるじ)迎へしホワイトハウス、その白頭鷲の慈眼を恃まむ
「最初だが最後ではなかろう」と副大統領のコートはパープル
養生は自ら律するものなればメタボ健診も潮時なるらむ
「ヤギさんのおヒゲ」と妻の微苦笑に電動バリカンをしぶしぶあてる
マダガスカルでの写真が二十年(はたとせ)の時空こえ届きぬあつき人情とともに
本当にオリンピックをやれるとは菅総理さへ思はざらまし
永年の抗精神病薬の軛(くびき)から解放されて翁は逝けり
祖母の編みし赤マフラーで銀賞の小学時代をひとり恥ぢたり
白雪に朝陽まぶしき盛岡で七十三歳 わが生さらに
目覚むれば窓から満月われを見る「今日から73歳、さあがんばるぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます