一日一首(令和二年十二月)
「食べてすぐ寝ると牛になる」といふは老いの肺炎予防によろし
寝室のカーテンを開け驚きぬ近々と冬空に浮かぶ満月
随筆を小説じたてに書きたれば差し障りなく筆すすみけり
寝室のカーテン開くれば眼下には真白に広がるミニチュアの街
人口構成ピラミッド型や崩れ去る団塊世代も高齢化して
歌会はいづれが生徒か先生か笑ひ絶えざるデイサービスなり
歌会では個々の短歌をただ褒め合ひ昔話に過ごすデイサービス
『コロナ禍に愚考す』と書きし四千字フォーマットにあふれ投稿できず
ぼけぬまに棚卸せむとクラウドの駄文ならべて『ときをただよふ』
窓外にサインカーブを保ちつつ餌場へ向かふ白鳥の列
キンドルの電子出版を準備して値はとりあえず百円としぬ
キンドルに『百円文庫』レーベルで三冊上梓し作家の気分
CT画像に前頭葉の萎縮ありてその主(ぬし)の顔をそつと窺ふ
コロナ感染予防に窓をあけ放てば雪が吹き込む けふは真冬日
第六回東奥文学賞の落選に参加証つくり次回へつなげむ
夕食後に『万引き家族』を録画に観てわれら老夫婦黙(もだ)深くゐき
肺炎か!細菌感染にホッとして抗生剤の点滴を打つ
誤嚥性肺炎の老いを診ておもふ介護士の「もうひとさじ」が仇となりしか
凍てし街をじんわりとかす太陽の無量の熱に慈愛さへ感ず
たまさかに幾多郎歌集を読みて知るこの哲学者の子煩悩なる面を
真夜中に大きな揺れあり目覚むるも冬至の夜の明けはまだまだ
すつぽりと雪雲にしづむ盛岡なり救急車の唸り聞くのみにして
日捲りに「平成の日」といふ赤き文字入るか暮れの祝日として
図書券の五枚届きてうち二枚を妻へお裾湧分けクリスマスゆゑ
コロナ禍の第一波二波三波と揉まるる日本は船頭不在なるらむ
コロナ・ウイルスの大波のなか海図なく地球丸は何処へ向かはむとすや
イギリスの変異種コロナを運びしは検疫フリーのパイロット、嗚呼
年末の連載よみて心はやり一月四日の稿をおくりぬ
三密の極みなる国会にコロナクラスターの起こらぬ不思議
死の近き生き物なれば食べぬなり逆にあらずとあらためて知れ
有明のコールド・ムーンの照らせるは白く凍(しば)れる歳暮(さいぼ)の盛岡
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