第8話決着
入鹿コロネのマスコット、ドルゴーは「のしっのしっ」と足音を立ててヒサメさんに歩み寄った。両手を下げたまま、口許をへの字に曲げて見上げるヒサメさん。間合いに入るのを待っているのか。
無言で手招きをするドルゴー。両手を上げ、拳を軽く握るヒサメさん。それに応じてやはり両手を上げ、ファイティングポーズを取るドルゴー。
先に動いたのはドルゴー。右フックがヒサメさんの顔に容赦なく直撃。反射的に目をそむけた。だが、痛めた拳をかばいながらアスファルトの上に尻もちをついていたのは巨人型妖怪だった。
「ヒサメさんっ」
「おう、なんともねえよ~、ちょっと待っててな」
ふらつきながらも立ち上がり、つかみかかるドルゴーの顎に余裕の右後ろ回し蹴りがヒット。身長170㎝弱で細身の女の子が、怪物を倒した。
「立てやおら」
仰向けに昏倒したドルゴーの顔を、ヒサメさんは何度も踏みつけた。
「止めて、あたしの顔が痛い」
へたり込み、両手で顔をおおう入鹿コロネ。
「操ってんだからそりゃ痛いよな。おら、も~いっかい」
「止めて、降参」
「ハルマ騙した分も返してやっからよ」
「痛いぃ」
「ヒサメさん、もう止めた方が」
「ハルマが言うんなら止めてやる。コロネちゃ~ん、挨拶してくれや」
「なんであなたは無傷なのよ、ドルゴーの拳を顔で受けてたでしょ」
入鹿コロネが恨めしそうにわめいた。顔に踏まれた跡がついている。
「ここに来る前、車の中でハルマに搾精させてもらった。ダイエット中断してな。つまりぃ、元気いっぱいってことだよ~」
「サキュバスばっかりずるいぃ」
「でさぁ、コロネちゃん。財布見せてくれる?」
ヤンキー座りのヒサメさんに、入鹿コロネは黙ってピンク色の財布を差し出した。
「結構持ってるなあ。ガッコーでカツアゲでもしてんのか?スクールカースト上位フェイスだもんな」
「とりあえず、預かっといてやる」
紙幣だけ抜き取って、ヒサメさんは財布を入鹿コロネに返した。恨みを買わないようにいつも全部は持って行かない。ブレない人だ。
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