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7-7、試合は同点となった。
再開後、前列の4選手とウイング・センターの選手がポジションを交代した。本来の位置に戻したのである。
「どうしますか」
カルアは星野に聞いた。スクラムハーフとスタンドオフは連携していく関係にある。
「相手は逃げ切る気かもしれない。ペナルティがあったら狙っていく。ドロップゴールも行けたら行け」
「はい」
星野は苦い表情をしていた。カルアに説明したとおり、相手は同点狙いかもしれない。同点でトライ数も同じ場合、準決勝進出は抽選で決まる。
ポジションも変えてきた以上、相手の作戦は変わるだろう。もし守備に徹するとすれば、経験者の多い新口は厄介なチームとなる。
荒山ならばどうするか。ちらりと、星野は後ろを振り向いた。目が合った荒山は、ゴールポストを指さした。
「間違ってなかった」
星野はほっとした。
彼なりに、プレッシャーがあったのである。荒山の代わりにスクラムハーフをするということもそうだし、テイラーが1回戦でそこそこちゃんとこなしたこともあった。待っていればレギュラーになれるわけではない。今、つかみ取らなければならないものがある。
同点からの逃げ切りが狙いだったとしても、ラグビーではそう簡単にいくものではない。
だが、星野の気持ちは、すぐに砕かれた。
「馬鹿が。メンバー同じだから取れる作戦は変わらないんだよ」
江里口は歯茎を見せて笑った。
中央志向に変わったとはいえ、新口の狙いは同じだった。再び組まれたモールを、総合先端未来創世は止めることはできなかった。
キックは外れたものの、7-12。総合先端未来創世はリードを許すことになったのである。
「二人ともミスったな」
「えっ」
鹿沢のつぶやきに反応したのは松上だった。なぜトライされたのか、彼なりに考えていたのである。
「松上は気づかなかったのか」
「二人っていうのは……」
「星野と荒山だ。二人とも相手が守りに入ったと思って、逆に自分たちが守りに入ってしまった。あんなモール、止める力はあるんだ。でも、心の準備ができてなかった」
松上も考えていたのだ。二度までもモールにやられたのはなぜか。そんなに激しい攻撃には見えなかった。あれにやられるならば、宮理の攻めは絶対に止められない。
「油断ですか」
「一言でいえば。ただ、コントロールできなかったのは主将の責任だ」
ポジションが変わったとはいえ、チームのキャプテンは荒山である。そして荒山は、星野と会話していた。方針を伝えていたのである。
「攻めないとだめですか」
「まあそうなんだが……もっと嫌がらせをしないとな」
鹿沢は何回か、膝をたたいた。
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