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だったら、同じことをしてやろう。宝田はタッチラインを割らないように、大きく蹴った。
受け取った相手は、同じことをしてきた。宝田も蹴り返す。もう一度同じラリーが続いた時、宝田の蹴ったボールがタッチラインの外にいってしまった。すかさず新口は、クイックスロー(ラインアウトが形成される前であれば、直接フィールド内に投げられる)で試合を進める。5メートルの内側を、ウイングが走ってきた。
総合先端未来創世は押し出すことも含めてディフェンスしようとするが、ウイングはさっとパスを出した。そこには江里口が走り込んできていた。ボールを受け取り、内へ内へと切り込んでいく。
「待ってたよ」
「だろうな」
江里口と金田が対峙した。そのままぶつかるかと思われたが、江里口は再び外へとボールを回した。内へと走っていた総合先端未来創世のディフェンス陣は、再び外へと走る。
「変な戦法だなあ」
ベンチで西木がつぶやいた。
新口は、端で拠点を作り内に切り込み、再び外に戻し続けた。特に大きくゲインされているわけではない。
「見たことないな」
松上も首をひねっていた。ラグビーは横幅が70mほどあるコートで行うが、基本的には真ん中40メートルが使われることが多い。狭いところでは、守備がしやすいのである。
「これ、カルアちゃんが何とかできませんかね」
「犬伏が?」
「あっち蹴って」
西木が指さしたのは、ボールがあるのとは反対側サイドの奥だった。
「そんな単純なことか?」
「多分、想像以上のサイドチェンジになるので」
「うーん」
その時、ボールが星野からカルアに渡った。カルアは大きく右足を振りかぶり、力強くキックをした。ボールはぐんぐんと伸びて、反対側の奥、西木が指さしたところに落ちた。
「ほらー」
西木がベンチで騒ぐ。
「いや、準備されていた」
今原が、素早くボールへと走る。そして、再び反対サイドへとパスが回された。
「右サイドに落とし穴でも仕掛けてんのかー」
西木は頭を抱えた。
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