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「計画が変わった」
全員を前に、鹿沢は言った。
次戦に向けてのミーティング。監督の表情はさえなかった。
2回戦の相手は
「新口はずっと1回戦負けだったが、優秀なコーチと1年生の入部で変わったようだ。昨年までも接戦で負けていただけで、弱いチームじゃない」
総合先端未来創世高校は、ここ数年新口高校とは当たっていない。部員の中にはあまりイメージがなかった。
「そこで新口戦は、前倒しで荒山のウイングで行く。ハーフは星野。瀬上も最初から行く」
特に三年生たちの表情が引き締まった。上のことばかり言っていたが、当然下から突き上げてくるチームもいる。
「あと、5メートルラインに気をつけろ」
「5メートルライン?」
思わず聞き返したのは荒山である。前監督からは、そんな注意は受けたことがなかった。
「やたらと端でプレーしているみたいだ。何か狙いがあるんだろう。芹川、星野、犬伏で位置もコントロールしていけ。金田は走れそうだと思っても端は避けろ」
「えーと……はい」
「走りそうだな……。まあ、金田なら抜けられるかもしれんが。タッチラインだけはどうしても避けられない。自信があっても近づかない方がいい」
言いながら鹿沢は、かつて大事な場面でゴールライン手前で押し出されたことを思い出していた。
「ついに、か」
夜のゴールポスト。見上げているのは、長身の男だった。
「やっぱりいた。エリちゃん」
そして、筋肉質の男がやってきた。
「なんや、了」
「ベスト4の壁。越えんとな」
江里口才之助は、力強くうなずいた。それを見て、今原了は笑う。
二人は、新口高校ラグビー部の一年だった。そして去年までは、ギガンテスクラブに所属していた。芹川や松上の後輩にあたる。
江里口は、県外の高校から推薦の話があった。だが、江里口の親は県外に行くことを反対した。それを知って、今原も地元に残ることを決めた。
ラグビー部のある高校は少ない。二人が選んだのは、家から一番近い新口高校だった。県ベスト4は、ここ数年全く同じ高校で占められている。そこに風穴を開けるのが、二人の目標だった。
チームメイトや、他のチームのメンバーにも声をかけた。新口で、上を目指そう。東嶺とか、抜いてやろう。
新口は連合チームになることもなく、レギュラーの半分が一年生のチームとして生まれ変わった。
「あいつには一泡吹かせてやらんとな。なんとかの、金田」
「確かに。よく抜かれたなあ」
この世代にとって、金田と宮理の榊は別格だった。そして、どういうわけか金田の方が目の敵にされている。
「俺、思うんや。漫画や小説だったとしたら、俺たち主人公やって。だから、絶対勝てる」
「そうやな、地区大会は抜けるんがお決まりやもんな」
二人は夜の中で笑った。
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