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総合先端未来創世高校 80-5 乃小沢・赤村・霧下高校連合チーム
「不満そう」
ノーサイドになった瞬間に、森田は言った。
「そりゃそうよ」
宝田は答えた。
「理由推測しよっか。100点取れなかった。完封できなかった。林君がチームプレーできなかった。えーと、それから」
「……」
宝田は黙っていた。図星だったから、だけではない。
自分は、何点だ?
メンバーはあれでよかったのか? 作戦は? もっと声をかけられたのでは?
林はあんなに熱くなる奴だったっけ? 犬伏は蹴るのを控えている? 近堂をどこかで出すべきだったか?
いろいろな考えがぐるぐると回る。自分の采配次第で、大きく結果が変わってしまうかもしれない恐怖。
監督なんて、やりたくない。
自分がフィールドにいたら。何回もそう考えた。
一番の不満は、試合に出られないことなのだ。どうしようもないことだったが、払拭しきることはできなかったのだ。
「
「……そうだな」
宮理高校 121-0 吉川高校
「あー」
第二試合を見終わった鹿沢は、思わず声を漏らした。
県内最強の宮理高校、一回戦は全く隙のない試合だった。どの選手も素晴らしかったが、一年生ナンバー8の榊は特に目立っていた。強くタックルし、力強く走り、タイミングよくパスをする。全てが一流に見えた。
強いチームにうまい一年。不公平だ、と鹿沢は思った。しかし誰だって、強いチームで上を目指したいのだ。仕方ない、ともいえる。
総合先端未来創世の金田もいい選手だった。独特のステップと、パスを出すタイミング。そこが素晴らしい。ただ、鹿沢はどこか物足りなさを感じていた。
それを「色気」と言った人がいる。うまいけれど、色気のない選手がいるのだ。
鹿沢はメモを取り出し、最後に一言、書き加えた。「金田 溶け込めていない?」
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