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西木(FL 1)→甲来(FL 3)
二宮(SO 2)→林(WTB 3)
後半、二人の三年生が入った。カルアは、ウイングからスタンドオフに回った。
「結局こうなるの?」
森田は記録を付けながら、宝田に尋ねる。
「こうって」
「物足りないんでしょ」
「まあ」
過去二年、こういう試合では圧倒してきた。それでも届かないのが、全国への切符だったのだ。
「変わる?」
「林が変えるよ」
その言葉通り、後半開始直後に林が独走してトライを決めた。さらにその後には、金田が大幅に前進し、最後はフォワード陣が押し込んでトライ。
「言った通り」
「まあ、犬伏にはつらい展開かもな」
カルアはこの試合、特に活躍出来ていない。ウイングとしては総力や突破力があるわけではなく、林との差は歴然である。
「活躍させてあげればいいのに」
「優しいな」
「だってかわいいもん」
カルア自身も焦っていた。ウイングとしては、何もできなかった。スタンドオフでも、レギュラーである二宮との差ははっきりしている。「どこでもできる」と言ったものの、それは弱小チームにおける話である。現在のチームでは、「どこにも適さない」かもしれないのだ。
二宮のスタンドオフを後ろから見て、カルアは気が遠くなったのだ。元来、司令塔の役割を果たす重要なポジションである。カルアは「キックを蹴ることが多い」という理由で、そこを任されることが多かった。だが、実際にはパスもランも、より求められる位置である。
金田は問題なくレギュラーに定着しそうである。西木も前半頑張っていた。現状、負けている。カルアはそう実感していた。
荒山から、パスを受け取った。スタンドオフとして、今の自分にできること。カルアはゆっくりと構えて、ボールを蹴った。
「はあ?」
鹿沢は、持っていたペンを落とした。
自陣から蹴られたボールはそれほど高く上がらないまま、まっすぐに空気を突き抜け、相手陣奥深くまで飛んで、コロコロと転がった。連合チームのフルバックがそちらへと走るが、総合先端未来創世の集合も早い。フルバックがボールをつかんで蹴り出そうとする前に、タックルが決まった。
「ボール……ワープした?」
ありえない飛距離だった。あり得るとしても、ここで見つけられる逸材ではないと思った。
どこに隠れていたんだ? もちろん、鹿沢も全国の中学ラグビー界を注視してきたわけではない。だが誰かに見つかっていれば、ここにはいないのではないか?
だが、先ほどまでのプレーを思い出す。ウイングとしては駄目駄目だった。スタンドオフの方が向いていそうだが、それでも二年生レギュラーにはかなり劣る。「判断しようとする力」はあるが、「判断力」はあまりなさそうである。リーダーをやってきた形跡はあるが、このチームにはフィットしていない。
「そうか……」
わたわたとする連合チームの様子を見て、鹿沢は気が付いた。
「犬伏、お前はあちら側だったのか……」
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