4

西木(FL 1)→甲来(FL 3)

二宮(SO 2)→林(WTB 3)



 後半、二人の三年生が入った。カルアは、ウイングからスタンドオフに回った。

「結局こうなるの?」

 森田は記録を付けながら、宝田に尋ねる。

「こうって」

「物足りないんでしょ」

「まあ」

 過去二年、こういう試合では圧倒してきた。それでも届かないのが、全国への切符だったのだ。

「変わる?」

「林が変えるよ」

 その言葉通り、後半開始直後に林が独走してトライを決めた。さらにその後には、金田が大幅に前進し、最後はフォワード陣が押し込んでトライ。

「言った通り」

「まあ、犬伏にはつらい展開かもな」

 カルアはこの試合、特に活躍出来ていない。ウイングとしては総力や突破力があるわけではなく、林との差は歴然である。

「活躍させてあげればいいのに」

「優しいな」

「だってかわいいもん」

 カルア自身も焦っていた。ウイングとしては、何もできなかった。スタンドオフでも、レギュラーである二宮との差ははっきりしている。「どこでもできる」と言ったものの、それは弱小チームにおける話である。現在のチームでは、「どこにも適さない」かもしれないのだ。

 二宮のスタンドオフを後ろから見て、カルアは気が遠くなったのだ。元来、司令塔の役割を果たす重要なポジションである。カルアは「キックを蹴ることが多い」という理由で、そこを任されることが多かった。だが、実際にはパスもランも、より求められる位置である。

 金田は問題なくレギュラーに定着しそうである。西木も前半頑張っていた。現状、負けている。カルアはそう実感していた。

 荒山から、パスを受け取った。スタンドオフとして、今の自分にできること。カルアはゆっくりと構えて、ボールを蹴った。

 


「はあ?」

 鹿沢は、持っていたペンを落とした。

 自陣から蹴られたボールはそれほど高く上がらないまま、まっすぐに空気を突き抜け、相手陣奥深くまで飛んで、コロコロと転がった。連合チームのフルバックがそちらへと走るが、総合先端未来創世の集合も早い。フルバックがボールをつかんで蹴り出そうとする前に、タックルが決まった。

「ボール……ワープした?」

 ありえない飛距離だった。あり得るとしても、ここで見つけられる逸材ではないと思った。

 どこに隠れていたんだ? もちろん、鹿沢も全国の中学ラグビー界を注視してきたわけではない。だが誰かに見つかっていれば、ここにはいないのではないか?

 だが、先ほどまでのプレーを思い出す。ウイングとしては駄目駄目だった。スタンドオフの方が向いていそうだが、それでも二年生レギュラーにはかなり劣る。「判断しようとする力」はあるが、「判断力」はあまりなさそうである。リーダーをやってきた形跡はあるが、このチームにはフィットしていない。

「そうか……」

 わたわたとする連合チームの様子を見て、鹿沢は気が付いた。

「犬伏、お前はあちら側だったのか……」


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