緊急事態発生1(FFXX本隊 vs 炎竜“青付き”)

「ル……空獣ルフトティーア!?」


 突如として出現した空獣ルフトティーア炎竜フランメ・ドラッヒェを見たライラは、思わず叫ぶ。


「こちらアドレーア、『稀少』級空獣ルフトティーア出現! 繰り返します、『稀少』級空獣ルフトティーア出現!」

「クソったれ、よりにもよってこのタイミングか! ヴェルリート・グレーセアもぇ!」


 毒づくゼルシオス。

 彼の直感は、“直感を認識した時点を基準に、時間が経てば経つほどに漠然とする”という一種の制約があったのだ。ゆえに「何か危機が起こる」とは認識できても、「炎竜フランメ・ドラッヒェの出現を察知する」とまでは行かなかったのである。


 彼にとっては非常に不本意なことに、「自らアドシアを駆って出る」ということが出来なかったのである。


「ッ!」


 と、炎竜フランメ・ドラッヒェが息を吸う動作を始めた。ブレスの予備動作だ。


「まずは……てめぇらから焼き尽くしてやらぁ!!」


 首を伸ばし、顔を上に向ける炎竜フランメ・ドラッヒェ

 喉元にある青いウロコが、ゼルシオスの視界に入った。


「……テメェ、“青付き”かよ!」


 ゼルシオスが半ば反射で、しかし半ば直感でその名前を叫んだ瞬間、炎竜フランメ・ドラッヒェがブレスの予備動作を中断する。


「誰が『青』だってェ!?!? 人間ごときが、俺をイラつかてせんじゃねぇ!!」


 空気をたっぷりと吸った炎竜フランメ・ドラッヒェ“青付き”が、ゼルシオスたちに顔を向け――


『ゼル君!』


 ブレスを吐くまさにその瞬間、“青付き”の口元に300mmミリグレネードが叩き込まれる。


「ごはぁっ!?!?」


 攻撃の瞬間という隙を突かれ、大きく動揺する“青付き”。

 追撃として、さらに100mm弾が数発、正確に“青付き”の目元に叩き込まれる。


「クソォッ、誰だ!! 俺を邪魔しやがるのは!?!?」

「シルフィア!」


 ゼルシオスが振り向いた先には――ドミニアの甲板に立っているアドシア、“桜玖良さくら弐式にしき”であった。

 ゼルシオスの幼馴染であるシルフィア――シルフィア・マイシュベルガー大尉専用機であり、白と桜色の機体がよく映える。狙撃仕様に調整された機体であり、その特性とシルフィアの技量が、先ほどの見事な援護を果たしたのである。


 そんな狙撃手スナイパーであるシルフィアが、ゼルシオスの腕輪端末に顔を見せていた。


『無事みたいだね。良かった、ゼル君』

「間一髪だったぜ。出撃体制整えてたから、すぐ出たのか?」

『うん。それと、アドライア様が「あの男がああ言うからには、何かある」って私を先に出撃させてくれたんだ』

「変なとこで信頼されてんな、俺……」


 やり取りをしている間にも、増援のアドシアが続々と出撃してくる。

 現行機のアークィス、最新鋭機のリヒティアと、既に機数は30機を超えていた。


『ゼルシオス閣下、ご無事ですか!?』

「無事だよ! 俺も後でヴェルリート・グレーセアに乗るから、それまで踏ん張れよ」

『了解です!』


 忘れられがちであるが、ゼルシオスは爵位持ちの男である。


 それはともかく、炎竜フランメ・ドラッヒェ――“青付き”は、出現頻度「稀少」の空獣ルフトティーアだ。

 同様に出現頻度「稀少」の空獣ルフトティーアである三首竜サーベロイ・ドラッヒェという種族がいるが、16機編成のアドシア部隊をたやすく壊滅させる能力を誇る。


 “青付き”――炎竜フランメ・ドラッヒェは、三首竜サーベロイ・ドラッヒェと比しても劣らぬ力を有する。

 それゆえに――


(30機ほど、か……。最新鋭機のリヒティアがいるってのは分かってるが、それでも時間をかけるとヤバいな。これはナメていい相手じゃねぇ)




 この状況にあってなお、ゼルシオスは安心しきっていなかったのであった。

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