黒に抗う兵たちの軍勢、合流間際――(ユニット:FFXX本隊)

 ゼルシオスたちはゴムボートに乗って、200名いる集団との合流を果たそうとしていた。


何者なにもんだ、あいつら……? 敵意がぇのは承知してるが……あ、そうだ)


 ハルカたちによる報告でこの事実を知ったゼルシオスは、ハルカナッソスへと連絡を入れる。


「おう、ハルカ。“ご主人様”として命令、出すぜ」

『何かな? アタシらとイチャつきたくなった……ってワケじゃなさそうだけど』

「ああ、残念ながら真面目なモンだ」


 ゼルシオスは、空のある一点を見上げながらつぶやく。


「即刻、艦内ドミニアへ退避。全員な」

『了解っと』


 やり取りを最後に、比較的近距離の周辺警戒にあたっていたハルカたち30名がドミニア内部へと帰還していく。

 それを見たゼルシオスは、しかしいまだ安堵の表情を浮かべていなかった。


「アドレーア」

「何でしょう?」

「挨拶なんてしてるヒマ、ぇぜ。そんなのは艦内でやれ」


 直感に基づくゼルシオスの言葉を聞いて、ライラが不満を示す。


「挨拶は相互理解の第一歩です。いくらゼルシオス様でも、今の言葉は聞き捨てなりません」

「だろうな。だが、俺の言ってるこたぁ事実だ。いや、事実になる」

「どういう意味でしょう?」

「“チンタラしてんじゃねぇ”ってこった。挨拶ハナシはそれからだ」


 いつになく、ゼルシオスは警戒体制である。その雰囲気が全身に出ているのも相まって、ここまで言われて察さないライラではなかった。


「承知しました。アドレーア様、予定を変更します」

「聞いた通りです。あちらの皆様を、ただちにドミニアにお乗せしましょう」


 予定変更を承諾したアドレーア。

 後続のゴムボート群も、続々とゼルシオスたちに追いついてくる。


「そんじゃ、ここは俺がっと」

「あ、ちょっと!」


 ライラが止める暇もあらばこそ、ゼルシオスは200人の冒険者たちの前に立つ。


「よく来たな! いろいろ挨拶してぇとこだが、まずあのでけぇ船に乗ってくれや!」


 いきなり出てきたガタイの良い――しかもイケメンフェイス――男を見て、冒険者たちがザワつきだす。

 だが、それを許すゼルシオスではない。


「ほら、ザワつくのは乗ってから! はよ乗れ!」


 手近な女性冒険者一人の腕を取り、エスコートするように乗せるゼルシオス。

 やり方は強引だが連れていくこと自体はそれなりに緩やかであり、乱暴さはカケラも見当たらなかった。


 と、ゼルシオスはゴムボートを運転する、ドミニア陸戦隊りくせんたいの兵士に相談をする。


「何人乗れる?」

「16人だな」

「あいよ……となると13で足りるな」


 200/16は12.5、あるいは12余り8。余りを切り上げるとなると、ゼルシオスの言葉通り13になる。

 訪れた人数が200名という大所帯なこともあって、ゴムボートは13よりさらに多く来ていた。


「よし、誘導しろ! 押すなよ、一人ずつ順番に!」


     ***


 それから15分もかけず、全員をゴムボートに乗せる。


「何とかなりましたね」

「まだなってねーよ」


 アドレーアの言葉を、すげなく否定するゼルシオス。


「全員がに乗り終わるまで、俺の視界にチラつく嫌な気配は消えそうにねぇぜ。出してくれや」

「了解」


 せっつくゼルシオスにも、嫌な顔ひとつせず従う陸戦隊兵士。

 と、赤い服を着た青年が砂浜に近づいてくる。


「ドミニア!? なぁ、今“ドミニア”っつったか!?」

「なんだテメェ? ああ、言ったよ」


 初っ端からケンカ腰な青年に対し、ゼルシオスは嫌な顔を隠さず返す。

 と、次の瞬間。


「ドミニアァ!! その名は聞き間違えようがねぇなぁ!! じゃあ決まりだ、赫竜エクスフランメ・ドラッヒェが乗ってやがらぁ!!」

「最大速力! 今すぐあいつから逃げろ!」


 青年が豹変すると同時に、ゼルシオスは最大限の警戒心を出す。

 ゼルシオスの指示に従い、ゴムボートが速度を上げた次の瞬間――


「そのドミニアごと、赫竜エクスフランメ・ドラッヒェを叩き潰してやるよぉ!!」




 青年が、ドラゴン――炎竜フランメ・ドラッヒェとしての本来の姿を現したのであった。

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