黒に抗う兵たちの軍勢、合流準備(ユニット:FFXX本隊)

「ふぅ、あわただしかったぜ。ま、休む余裕もあったけどな」


 睡夢竜メルテが合流してから、20と数時間が経過した頃。

 ゼルシオスたちが海水浴を終えた後には、さまざまな出来事があった。


 メルテの要望通り、部屋の一室において一人用寝具以外の全てのものを取り払い、蝶番ちょうつがい式のドアを含めた壁と言う壁にクッションを固定した部屋を、ゼルシオスとゲルハルトをはじめとした男性クルー数名がかりで用意したり。

 あるいは砂浜でケンカをしていた不良グループに、ハルカたちが総出で“仲裁”と称して卵爆弾(非殺傷)という卵爆弾をしこたま投げつけたり。

 またあるいは、メルテの存在を聞きつけたティトットが暴走しかけたのをフレイアとヒルデ、そして助手のアメリアが3人がかりで押さえこんだり。


 とにもかくにも、にぎやかな20と数時間であった。


『もしもし?』


 ゼルシオスが自室でくつろいでいると、思わぬ人物からの通話が来る。


「おう、エヴレナじゃん。どした?」

『実は――』


     ***


 一方、同じ頃。

 アドレーアは休憩を兼ねた別の目的を、この時間中に達成したと判断し――


「さて、そろそろ情報収集も潮時でしょう。たまたま立ち寄っただけとはいえ、人が集まる保養地であればそれなりの情報は集まったはずです」

「はい。分析したところ、それなりの情報は得られました。しかしまさか、このためにゼルシオス様の行動を許されるとは……」

「いえ、そういう意味ではありません。情報収集はついでです」

「ついで、ですか?」


 頭に疑問符を浮かべるライラを見て、アドレーアが答える。


「はい。ゼルシオス様であれば、まず間違いなく『泳ぎたくなる』のではないかと思って」

「そういうことでしたか……」


 戦略・戦術的観点も何もあったものではないあるじの回答を聞いて、ライラは「そういえば、そういう方でしたね」と思い直したのであった。


 と、ライラの端末に通信が入る。


「ハルカですか。失礼します」

「この場でどうぞ」

「では。……どうしました?」


 ハルカナッソスからの通信だ。


『なんか、「FFXXツヴァイエフ・イクスクロイツに会いたい」って人たちが来てんですよ。ざっと200人くらい』

「FFXX……私たちのことですね。どのような方々なのでしょうか」

『えっと、装備は全然統一されてないんです。アタシらが戦った、王国の騎士団と違って……よく見たら似た装備の持ち主はいても、ほとんどバラバラです』


 まだFFXXに加入する前、ハルカたちはある王国の騎士団と戦った。もっとも、「戦った」とは言葉上だけの話で、実際は一方的な蹂躙だったが。

 装備もバラバラ、その上動きも統率が取れておらず、現状のままでは烏合の衆と評されてもおかしくはない。


「どうしましょう?」


 ライラはアドレーアに、決断を求める。


「おい、アドレーア!」


 と、そこに急いだ様子のゼルシオスがやってきた。


「エヴレナから連絡だ。『200名の人員を、FFXXそっちで預かってほしい』ってな。今すぐ着水してくれ!」

「200名……ちょうど報告の数と同じくらいですね。承知しました、ゼルシオス様」


 アドレーアは決断素早く、即座に着水を指示する。

 砂浜から十分な距離を取って着水後、ドミニアはアドシアの格納庫――非戦闘時は大人数向けの搭乗口も兼ねている――を解放し、多数のゴムボートを用意した。


 とはいえ、いきなり200名もの人物を乗せるわけではなく……。


「私とライラが、代表として挨拶をします」

「俺も入れろ。あと、警備体制は整えとけ。見た感じ敵意はぇが……」


 言葉に詰まるゼルシオスを、アドレーアの瞳がのぞき込む。


「ねぇが?」

「なんか、嫌な予感がするぜ。思ってんのとは別の方向から、な。アドシア、あとフレイアとヒルデも出撃準備だ」




 ゼルシオスは、この出来事が厄介なことになると見ていたのであった。


---


★解説

 ようやく時系列が追いついてきました。


 そしてタイトル通り、ここで黒抗兵軍こっこうひょうぐん――その第2中隊が合流です。


 が、タダの合流で済むワケもなく……w

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