巨鯨との交渉(ユニット:神錘の代行者)

『しばし、待っていただきたい。代表者を派遣する』


 声が伝えてからしばらくして、1機の機体が派遣される。

 非武装であり、しかし全高30mメートルにも達する漆黒の機体は、見るものに威圧感を与えた。


 その機体――“シュヴァルリト・エクスグラン”は、代行者から100m程度の距離を置いた場所で着陸した。

 中からは、防寒装備を十分に着込んだ体格の良い男が降りてくる。


「俺……いや私は、戦艦ゲルゼリア改の代表として参ったゼルゲイド・アルシアスだ。貴公が代表か?」

「いかにも。我が名は無いが、神錘の代行者と呼ぶが良い」

「しんすい……? 承知した、そのように呼ばせてもらう」


 耳慣れぬ単語に一瞬疑問を浮かべたゼルゲイドだが、対応としては協力的なものだ。

 そんなゼルゲイドは、さして間をおかずに本題に入る。


「さて、話というのは簡単だ。この場所についての説明を求める」

「ここか。ここは、余人の立ち入る場所ではない」

「やはりか……。ゲルゼリア改がいかに威圧的な大きさとはいえ、近づくだけで攻撃されるほどだからな。しかし、貴公はどうして立ち入れたのか?」

。それだけのことだ」


 代行者が短く告げると、ゼルゲイドは納得する。


「そうか。深くは踏み入るまい。この世界に来てからは、気の向くままだ。そうして進んでいたら、このような所に来てしまったというわけだからな」

「道案内が必要か? 現地の存在が、私の付き添いにいるぞ」

「それは頼もしいな。であれば――」


 話がまとまろうとした、その時。


「む」

「どうした?」


 代行者にだけ聞こえる声が、響き渡る。


『私は示す。今汝共に在る霊竜、彼が出でた地に再び向かえ。そこにいる乙女に、「想い人の元へ導く」と告げよ』


 謎の機体から発せられた声を聞いて、代行者は頷いた。


「何かあったのか? 良ければ乗せるぞ」

「ああ。そして、その上で済まないが……立ち寄ってほしい場所があってな」

「承知した。付き添っている者を連れてくれ。私は少し、連絡を取る」


 ゼルゲイドが通信端末で連絡を取ると同時に、代行者は同行するミミミたちに話しかける。


「急ではあるが、あの戦艦に乗せてもらう運びとなった。ついてきてもらいたい」

「みー、私は大丈夫」

「わたしも!」

「異世界の“戦艦”なる乗り物か……興味深い」

「同じく。なかなかの技術が使われていると見受けられます」

「二人きりになれる部屋はあるのかしら?♪」


 全員が賛意を示す。元より反対する理由など無い。


「決まりだ。では、行くぞ」


 かくして代行者一行は、戦艦ゲルゼリア改との合流を果たすこととなった。


「済まないな、サイブレックスよ。騒がしくしてしまった」

「いえ、お陰様で同型機と会えました。ありがとうございます」

「ならば幸いだ。息災であらんことを」

「そちらこそ」




 サイブレックスとの別れを済ませた後、代行者はゼルゲイドに全員が合流することを伝えたのであった。


---


★通達

 FFXX別働隊3(ゲルゼリア改)が、別働隊1(代行者一行)と合流しました。

 以下、エリア6へ向かいます。

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