悪意の排除2(??? vs〝変転・反〟の概念体【Stanford】)

「次は、そこか」


 謎の機体は、エリア7“不滅のメガロポリス”の外端部に転移していた。


「領域の境界さかいが見えり。やはりあれは、先ほどの存在と同質なり」


 先ほど、敢えてフレドリックの領域内に入った謎の機体は、特性を完全に分析・理解していた。

 現在、機体のカメラアイ――正確には、謎の機体に宿った神魂――が捉えるは、また別の領域。その名を【prison experiment】と呼ばれる。


 そしてその領域の中心に位置するは、概念体Stanfordスタンフォード。いかつい看守のような姿は、謎の機体の最大望遠で捉えられていた。


「位置さえ見定めれば、あとは容易い」


 謎の機体が今度に構えるは、SGアサルトライフル。100mmミリ口径のSGエネルギーを発射する銃は、しかし半径50kmキロを誇るスタンフォードの領域に入らずして当てるには遠すぎた。


 だが、謎の機体にとっては――


「因果をつむぐ。はなてば当たる――そのように」


 スタンフォードの正体を捉え続ける謎の機体は、全身から黄金きんの粒子を放つ。

 誰にも見られていないそれは、しかし謎の機体が励起状態を示す目印となっていた。


「この世界に歪みを生む存在よ――私は貴様を、認容しない」


 誰に聞かせるでもなく、ただ自らの抱く感覚をそのままに、謎の機体は呟く。


「滅せよ。既に消失した、同質の存在がごとく」


 そして、謎の機体は引き金を引く。

 放たれた弾丸は銃のすぐ目の前で消失し――次の瞬間、スタンフォードの内部でぜた。


「……!?!?」


 自身に何が起きたのかを、理解する時も無く……スタンフォードは消失し、同時に監獄実験の領域【prison experiment】もまたその姿を消した。


「これで、2体。残るは1体」




 謎の機体は残る最後の悪意を探すべく、一度高高度に転移したのであった。


---


★感想

 瞬殺。距離にさえ気を付ければ何とでもなる相手だった。

 これぞ桜付きのスペック、これぞ桜付きが積極戦闘に出張でばった際の好例。


「ソルト様への敬意リスペクトはどこ行った」と言われかねないくらい、あっさりと決着したが……個人的には「むしろこれでいい」。なぜなら、このレベルでこそ“禁止カード”の強さを示せるから。


 前回のフレドリック戦でわざと領域に入っていたことにより、スタンフォードの領域そのものや外端部を探知出来ていた……という設定。もう少し噛み砕くと、「フレドリック戦がここで活きた」という感じ。描写はかなりあっさりだったけど。

 というか、フレドリック戦をしていなければ「うっかり領域内侵入、からの因果律操作&粒子テレポートによる脱出、そしてスタンフォードの位置を特定して撃破」と遠回りになっていた。ストーリー的にはコチラが美味しそうだが、桜付きに関しては「むしろ苦戦させないでストレートに勝つのがそれらしい」との判断により、あっさり決着させる路線を貫いた。手を抜いた、とそしらばそしれ。


 エッツェルが呼んだ新規概念体3体のうち、これで2体目を桜付きで排除した。

 たぶん、既にエッツェルに桜付きの存在がバレていると思われる。バレかたとしては「なんか私とする存在がいるかも?」と、“曖昧だが”という感じだろうが。

 というか、まさか「(新規概念体たちを)呼んだら、瞬く間に呼んだメンツの3分の2が排除された」というのは、さしものエッツェルですら想定外ではなかろうか。私なら絶対に驚く。


 とはいえ、フレドリック、スタンフォード、ファウストの3体は、有原としては「縛り解禁待った無し」、桜付きとしては「介入度合いが強まろうと、即時排除を実行するのが何よりの益」となるレベルで、リア様の世界にとって厄介。なので高速排除はやむを得ない……はず。


 そういうわけで、インチキ三体衆のうち残すはファウストのみ。たぶん戦法はこのスタンフォード戦と同様。超長距離狙撃、さもなくば“認識させずに一方的に仕留める”ステルス戦術。攻略情報があるなら、フル活用するのが有原です。

 ただし、ファウストに関しては、桜付き以外で倒しても最低限のつなげ方を見定めているため、そこは問題なし。


 このまま現在の緊急事態を、畳み掛ける勢いで解決する方針。

 エッツェルにとっては幸か不幸か(おそらく“不幸”だろうが)、新規概念体の召喚は「桜付きを本気にさせた」という結果を迎えた。

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