悪意の排除1(??? vs〝罪源・世〟の概念体【Fredrick】)

 エリア0、首都セントラルの上空2,000mメートルほどにて。


「街並みに溶け込む、ここまでは辿れたものだ」


 謎の機体は、悪意の源――その一つが存在する地点を、ある程度までは特定していた。


「強き何者かが手を回し、危うくも人々が狂う寸前にて留めたか。しかし……この手助け無くしては、私にもいくばくか蝕みにかかる悪意だ」


 謎の機体が“悪意”と称するは、特殊な領域だ。

 正しき名を――罪源領域ざいげんりょういき、ないしは七つの大罪【septem peccata mortalia】と称するそれは、範囲内の“”たる要素を含むあらゆる存在を汚染し、地獄を生み出す。


 機械にして神である謎の機体は、汚染されるおそれのあった青年を機体の外に出してはいたが、がゆえに自身も汚染されうる存在であった。

 もっとも、仮に汚染されたとしてもSGエネルギーで自身を中和し、その上で因果律操作にて汚染されない未来を作る――悪意こと罪源領域の源たる存在、概念体“Fredrickフレドリック”を因果を超越して排除する方針であったが。


 しかし、謎の機体が「強き何者か」――正体は日向ひなた日和ひよりが生み出せし式神――と称する存在により、この領域は中和されていた。

 謎の機体としてはこの中和が無くても耐えうるためにそこまでの問題は無かったが、この中和現象があるがゆえに、より集中してフレドリックの位置を追跡出来ていた。

 とはいえ、万が一汚染を受けたとしても、即座に位相をシフトさせれば「そこに在れど、そこに在らず」となるがために、やはり謎の機体にとっては領域に脅威を感じえない。謎の機体が敢えて位相をシフトさせず、光学的ステルスのみにとどめているのは、である。


 やがて、謎の機体はフレドリックの位置を完全に特定する。


「動かぬか。戸惑う様子もあるな。しからば」


 スッと構えた武器は、謎の機体が手甲に内蔵するビーム砲――SGアームカノン。最小出力に絞り、ピンポイントでフレドリックのみを仕留める算段だ。


「これ以上災禍を招かぬうちに、滅せよ」


 わずかな音も立てず、弾丸状に成型されたビームが放たれる。

 それはセントラルの街の、人影の乏しい場所に潜んでいる「黒い僧衣の上からローブを羽織った、晩年に差し掛かった禿頭の男」――フレドリックが本体に狙い過たず命中し、SGエネルギーを体内に体外に充填させた。


「励起」


 そして、謎の機体の号令と共にSGエネルギーが活性化すると……文字通り、存在を消失させる。それと同時に、罪源領域もまた消失した。


「まずは1体。あと2体、か」




 謎の機体は、いまだ消えぬ悪意を探す――その前に、もはや乗せても脅威足り得なくなった青年を回収しに、一度高高度へ転移するのであった。


---


★感想

 緊急事態。謎の機体こと桜付きの積極戦闘を解禁させた元凶。

 中の人はフレドリックの出現報告と同時に血相を変えました。


 珍しく、「数字が付いている割に、単話(一話)で撃滅できた敵」。というか多分、これが初めてだと思われる。


 ぶっちゃけた話、フレドリック本体に関しては楽勝。

 というか桜付きは切り札を通り越して禁止カードなので、このレベルの圧倒的かつ瞬間的な決着でないと話にもならない。


 フレドリックの能力がどの程度通用するかは本編で書いた通りだが、桜付き(皇子不在時)の場合、「人の意思を解する」以外がまるで通じないために侵食は限定的。しかもそれをSGエネルギーで中和できるため、脅威は無いも同然。とはいえソルト様の組まれた設定と応援コメントを考慮するに、「完全無効はありえない」となる。

 が、それも「領域内に、同じ位相で存在したら」という仮定によって成り立つ話であるため、SGテレポートによる位相シフトで簡単に対策可能。

「どれだけ神性があろうが、“人”であるならば全てが無意味(有原注:フレドリックの項目ページの一文を意訳したもの)」というメッセージがあったが、有原は強引に「機械だし神だから“強力な抵抗があり、しかし無効化には至らず”」と解釈した。最悪この解釈が外れていたらSGテレポートか、領域外からの超長距離狙撃で仕留めていた。


 で、何でこの“楽勝”な敵を最優先で排除したかというと……

 その脅威度たるや、かのノックス以上。というか、ノックスが「戦術・戦略への最大級の脅威」であるならば、フレドリックは「勝利条件そのものへの最大級の脅威」となる。

 ぶっちゃけ『(陸式識勢・和御魂竜殻天将)ナ号』がいなかったら、有原陣営的に即ゲームオーバーだった。あと、ナ号の中和結界があったので、より余裕を持って勝利できた。

 こんなの、いるだけで「厄竜討伐がバカンス」とたとえられるレベルの脅威。FFXX本隊を、エリア1を経由させる方針にして本当に良かった。エリア0に直行していたら、一瞬だろうと何だろうと、確実に汚染されていた。


 それでもって、「あと2体」と書いたが――ソルト様の新規概念体はすべて桜付きに排除してもらう予定。

「おい、一人で全部取るな!」というコメントが来そうだが、正直「桜付き以外で誰が勝てるの、あいつら?」というのが本音。少なくとも、フレドリックに関しては神錘の代行者ですら汚染されるのは確定的。


 それでも「だからって、全部は……」という方のために、抜け穴じみたものを書いておく。

 有原陣営的に、というか桜付き(と中の人)的に、“インチキ三体衆(by ソルト様)”における脅威の優先順位を書いておく。


1(最優先排除対象):〝罪源・世〟の概念体【Fredrick】

2(排除対象):〝変転・反〟の概念体【Stanford】

3(排除対象だが余裕あり):〝形態・崩〟の概念体【Faust】


 フレドリックは最優先排除対象に挙げただけあって既に排除したが、この中ではファウストならば比較的遅く排除しても有原陣営的には問題が少ない。

 最低限、(どこにいるか明記されていないため)「遭遇しなければ大丈夫」ゆえに、桜付き以外に遭遇させなければどうにでもなるのだ。


 ただし、インチキ三体衆の存在自体に対して血相を変えた中の人……有原は、執筆順序を変更(割り込ませる)してでも全部排除するつもりマンマン。というか、どなたも予約されない場合、絶対に確実にやる。断言する。

 でもって、「これのどこが“抜け穴”だ!」という人に向けて書くと、「ファウストなら予約が一番遅くなるよ」という意味。有原は上記の順番で排除します。


 なお、仮にインチキ三体衆を全て桜付きで排除した場合、エッツェルに桜付きの存在がバレる。とはいえ「あ、あそこに桜付きいるな」という感じのバレ方ではなく、「なんか私とする存在がいるかも?」という感じのバレ方となるが。

 が、正直、有原としては「バレてもいい」である。戦略を考えればバレるリスクなど些末さまつなもの。むしろバレることで「今変な手を出しても無駄になりそうだ、やめておこう」と(一時的であっても)取る手段を限定できるから。


 つーか、(ソルト様にその意図があったか否かは定かではないが)フレドリックをはじめインチキ三体衆のスペックは、「桜付きがどこまでやれるか(の限界)」を見定めにかかっているようなシロモノばかりである。

 これらインチキ三体衆ならばまだ勝利条件が見えているため何とでもなるが、他にも四体目や五体目といった“インチキ”が来られると、個体によっては桜付き(というか中の人)の対応能力の限界を超えかねない。

 桜付きはぶっちゃけ「攻めるより守る側に振ったスペック」のため、「負けはしない。ただし、勝てるとは限らない」ということになるし、中の人である有原は「これ桜付きのスペックじゃ対応不能だわ」と判断するのが一瞬である(逆説的に、「これはこのユニットで、こう勝てるな」というシーンを思い浮かべるのも、スペックを見たらほぼ一瞬で組み立てられる)ために、(出来るかどうかは分からないが)桜付きメタなど出されようものなら手の施しようがなくなる。つまりバッドエンド直行案件。

 というか、桜付きで太刀打ち出来なかったら、いったい誰が勝てるんだか。やっぱり日和さん?


 正直、インチキ三体衆を速攻で仕留めて通常の進行に戻りたいレベル。

 ロールプレイの方針的に「放置など論外」であるフレドリック(他2体)だが、こんなのぼんぼこ出されるとお手上げである。エッツェルだから出してきそうだけど、正直な話、しばらくはご勘弁を。


 とりあえず、シメに冒頭の言葉をもう一度。

 フレドリックをはじめとした三体の新規概念体は、存在そのものが緊急事態である。

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