真っ先に出会うは(ユニット:神錘の代行者&)

 セントラルから北へと進む代行者一行は、近くに見える戦艦ゲルゼリアを、十分な距離を保ったまま眺めていた。


「……導きは、神錘しんすいに委ねる時か」


 そう思い、代行者が懐に手を伸ばしたその時。


「……!?」


 突如として、世界をも歪めかねない悪意を彼は察知する。

 だが。


「よもや、直接動かれるとは。姿を示されぬとはいえ、思い切ったことをされるものです」


 悪意とは異なる気配を察知した彼は、安堵の言葉を呟いた。


「さっきから、どーしたの?」


 と、カティンカが話しかけてくる。

 代行者の実情を知らない彼女としては、独り言をブツブツ呟いているようにしか見えなかったからだ。


「ああ、気にするな。こちらの話だ」

「そっか」

「……む、あの竜は」


 今度はヴィグバルトが反応を示す。


「そこな竜よ、止まれ!」


 自分たち目掛けて大急ぎで飛んでくる竜に、しかし敵意は見られない。

 とはいえ、焦る様子が気になったヴィグバルトは、竜――睡夢竜メルテを、呼び止めたのである。


「ッ! ……貴方は、有名なヴィグバルト」

「私を知っているとはな。安心しろ、争うつもりは無い。何故なにゆえ急いでいるのか、気になっただけだ」

「急いであの人たちに伝えたいことがあるの!」


 呼び止められたメルテは、わずかな時間も惜しいとばかりに翼をはためかせる。


「あの人たち……か。我らではないようだが、差し支えなければ事情を話してもらおうか」

「……」


 メルテは一瞬逡巡しゅんじゅんするが、しかしすぐに結論を下す。


「分かった。話す。けど、何があっても口を挟まないで」

「良かろう。皆もそれで良いな?」


 ヴィグバルトが同意を求めると、代行者一行は首を縦に振った。


「だそうだ。話してくれ」

「うん。あれはね……」


 そしてメルテは、自らが見た夢の話をしたのであった。


     ***


「……よく分かった。“黒き悪を滅ぼすための星が、たみたちを狙う”、か……」


 ヴィグバルトは、神妙な顔でうなる。


「これは我らで止めねばなるまいな。皆もそう思うだろう? 特に、ロイヤよ」

「ええ。ですが、止めるメドがありません」

「えっとね。夢だと……北に、何かヒントがあった」


 メルテのアドバイスを受けた代行者が、指示を飛ばす。


「ヴィグバルトよ。北へ向けて、飛んではくれまいか。これも導きかもしれんからな」

「承知した。夢より目覚めし竜よ、その意思は受け取った」

「ありがとう。それじゃ、私は行かなくっちゃ」




 南側へ飛んでいくメルテを見送った代行者たちは、彼女の夢にあった北へ向かうのであった。


---


★解説

 代行者サイドにミッションが追加されました。

 端的に書くと「黒の抑止のために作られた人造の星を、人々に落ちる前に抑える」です。


 というワケで。

 


 空も飛べるし、正直楽勝ですよね。敵さえいなければ。


 あと、ヴィグバルトのセリフにある「罪なく」は、「罪なき」の誤字のでご了承あれ。

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