第47話 もっと深いところまで。
今日はバレンタインデー、尚くんに可愛いチョコを作ってあげたくて勉強に全然集中できなかった。高校生と大学生だから会えるチャンスも少ないし、また冬休みみたいに二人っきりの時間を過ごしたいなと思ってしまう。
できれば、尚くんがバイトをやめてほしいけどね…。
私も尚くんに少しの自由をあげないと、彼が息苦しくなるからそれは仕方がない選択だった。こんな優しい彼女に、尚くんはもっと感謝するべきだと思う…。他にいないからね…? こんな彼女…。
「ところで、チョコを作ろう…!」
今日はバイトがある日だから、尚くんが帰ってくるまで時間的余裕も十分!
帰ってきたら私の手作りチョコを食べさせてあげたい…! それを想像しただけで楽しいバレンタインデーになりそう。バイトが終わった後は、すぐ帰ってくるって私と約束もしたし…。先に服とか…、選んでおいた方がいいかな…?
大人だったら、お酒とか一緒に飲めるのに…。
尚くんはお酒が弱いからすぐ酔っ払ってしまうけど…。そこが好きだから飲ませたいわけだし。いきなり、酔っ払った時の尚くんが見たくなる。その甘える姿…超可愛かったよね…。
「フフフッ」
……
「よしよし…! これでチョコは終わり…!」
鼻歌を歌いながら服を選ぶ時、菜月のスマホにあるメッセージが届く。
「あれ…? 尚くん?」
尚くんだと思ったのに、あの子からのメッセージだったんだ…。
あれ…? 画像添付…?
「……」
それは尚くんがある女の子に抱きしめられる写真…。
5枚くらい送ってくれたけど、やはりこの女…私の尚くんにくっついている。しかも、この見覚えがある制服…。また、面倒臭いな女に巻き込まれてしまったのかな…私の尚くんは…。あんなに私のことを味わわせてあげたのに…、やっぱり足りないのかな…。ちょっとした刺激で、尚くんを縛り付けようとした私の考えが甘かったかもね…。
もしかして、私のことが嫌いになったとか…?
そっちなの…? だから、他の女とあんな風にくっついてるのかな…?
「……」
だとしたら…、尚くんも…。
じっとまな板に置いている包丁を見つめる菜月だった。
先まで明るかった部屋の電気を消して玄関に座る菜月は、バイトが終わる頃の尚にL○NEを送っていた。
「そんなことは許せない…。尚くんが私から離れるなんて、あってはいけない。もしそんなことが起こるなら…。いや…、私は尚くんのことを信じる。まずは、話から聞きたい…」
ガチャ…。
そしてずっと待っていた尚くんがドアを開けた。
「菜月…?」
「……」
慌てる姿、そして片手に持っているチョコ箱。
やっぱり…、尚くんに好きな人ができちゃったのかな…?
……
そして、私は尚くんに二つの選択肢をあげた。
尚くんが私に「好き」って言ってくれたから、優しい私はその言葉を信じることにしたよ。こんな彼女、他にいないから大切にしてほしい…。すると、尚くんは「後者を選ぶ」と話した。それは、尚くんの体に確実な証拠を刻むこと。
とても嬉しい…、私は尚くんが後者を選ぶと思ってたよ…。
「……優しくしてあげるからね? 尚くん…」
「うん…」
最初は尚くんが私を離れてしまうことに、すごく動揺していたから…。
でも、その制服を着た女子高生…私は知ってる。その遠い場所からわざわざここまでくる人なら、一人しかない。冷静を取り戻すと、私はこうなることをすでに知っていた。ただ、その写真に気を取られて冷静さを失っただけ。
「……」
「尚くん、両腕を上げてみようかな? 抵抗したら傷が深くできるからね?」
「うん…」
どうして尚くんは泣いてるのかな…? 裏切られたのは私だけどね…。でも、そんなことはもう気にしない。今からカッターナイフで、尚くんの体に二人っきりの思い出を刻むから…。やはり作るんだったら、正面がいい…。お腹に書いてあげよう…。
「手錠をかけるね…! へへ…」
相合傘を刻む時に尚くんが抗えるかもしれないから、体を横たえてベッドのサイドに手錠をかけてあげた。そして悲鳴も隠すべきだからちょっと恥ずかしいけど、尚くんの口に乾かした私の下着を突っ込んで黙らせてあげた。
なんか尚くん…、すっごくエッチ…。
「じゃあ! やるからじっとしてね…!」
「……っ」
そう言ってから、ナイフの先でゆっくり尚くんのお腹に相合傘を刻む。
お腹から赤い液体が出ると、尚くんがすごく苦しんでいた…。可愛い形になりそうだから、尚くんの口を塞いで私なりの完璧な形を描く。手錠を外せない尚くんがどれだけ足掻いても、私を止めるのは無理だよ…。私ね? ずっと、これをしてみたかったの…。肌を合わせるだけじゃ…、満足できない体になってしまったからね…?
私は…、尚くんに私の物って証をつけてあげたい。
「……っ!!」
「もうちょっと…、傘はできたから…名前を書こう…!」
涙を流す尚くんの頬に軽くチューしてあげた私は、傘の左側に「ナオ」そして右側に「ナツキ」と刻んでいた。私…、もしかして素質あるんじゃない…? めっちゃ綺麗にできてる…! そして、尚くんカッターナイフが怖いから、これで心の底に強く刻まれたかもしれないね…。あの時のトラウマが…、忘れたくてずっと忘れようとしたあの時の記憶がね? 私は尚くんのそばで、その痛みを消してあげるから。
私の物。
「……綺麗にできたよ? 尚くん…」
もう抵抗する力さえ残っていない尚が、震えている声で答えた。
「う、うん…」
「悪いことをしたのは尚くんだよね…?」
「うん…」
「尚くんの一番好きな人は誰…?」
「な、菜月…」
「可愛い…、今タオル持ってくるからそのままじっとしてね?」
「……うん」
そして尚くんが口に咥えていた下着を取って、私が作ったチョコを食べさせてあげた。
「……これ甘いよ?」
「……」
でも、私…尚くんに言わなかったことがあるの。
それはね…?
「私はこうなるって知ってたよ…? あっ、嬉しくてつい口に出してしまった」
振り向く菜月は倒れている尚にほっとする。
「フフフッ。尚くんは決して私から離れない…。最初からそうなる運命だったから」
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