第35話 制服デートですか。
とある休日、今日はバイト行かないから久しぶりにのんびりしている。
この前に買ってきた小説を読む俺と、その後ろでこっそりドラマを見ている花田さんはくっついたまま二人の時間を過ごしていた。
彼女と付き合ってから、俺のプライバシーがなくなってしまって…。
何をやっても、そばには花田さんがくっついていた。
「……」
この小説は一人で読む方がいいのに…。
内容がちょっと、あれだから…。
「尚くん?」
こっそり恥ずかしい文章を読む時、背中をつつく花田さんが俺を呼んでいた。
「うん…?」
「尚くんはそんな女の子が好きなの?」
「えっ…?」
まさか、後ろから俺の小説を読んでいたのか…。
いや…、俺こそ彼女と一緒にいるのにこんなのを読むなんて…。
「尚くんは従順な女の子が好きなんだ…」
「これはただの小説だから…、ファンタジーだよ」
「でも…、尚くん…去年エロ漫画をいっぱい隠してたよね…?」
「なんでそれを…知ってる…?」
「なんとなく…?」
「……そ、そう?」
「それより、尚くんがあんないやらしい絵でやるのは嫌だったから…」
楓…。
「じゃあ、それはどこに…?」
「全部捨てたよ? 彼女がやったことだから文句ないよね?」
「うん…」
どれだけ探しても本は見当たらないからどっかに消えたのかと思っていたけど、やはり花田さんが捨てたのか…。しかし…、花田さんはどうしてそんなことまで知ってるんだ…? まるで俺のことを最初から知っているような…、そんな感じだった。
「尚くん、嫌な顔してる…。もしかして、その本…読みたかったの?」
「いや…、違う」
「私がいるから、いらないよね…? あんな本」
「うん…」
「いい子…」
怖いってことを知っていても、その目には逆らえない。
花田さんの赤い瞳がとても綺麗で…、その瞳に俺を姿が映っていた…。それに気を取られてしまうと、いつの間にかキスをされている俺に気づく。体は自由になったけど、今は花田さんという存在が俺の足枷になっていた。
「まだ…、昼だから…こんなことはやめよう…」
「それを終わってから言うの…? 正直、やりたかったんでしょ…?」
「……ちょっとくらいなら…」
「フフッ」
床に俺を倒した花田さんが人差し指で胸元をつつく。
「私以外の人や絵で抜くのは禁止…、分かるよね?」
「……うん」
「ちょっと生意気…、こんなに綺麗な彼女がそばにいるのに…。どうしてあんなキャラに惚れちゃうの?」
「でも、それがファンタジーだからね。現実世界では会えない可愛い女の子とか、誰かに好かれたり…、自分だけが幸せになりたいそんな世界観が魅力的かも…」
「尚くんがその世界の主人公でしょ?」
いきなり抱きつく花田さんが耳元で囁いていた。
「可愛くて綺麗な人、尚くんだけを見ている人、尚くんを幸せにさせる人…。そして尚くんの部屋で過ごしているこの時間…。全部私と一緒だからね?」
「……それはそうだけど、菜月はそれでもいい?」
「なんで?」
「菜月は女子大生だから、いろんなところに遊びに行ったり…。大事な思い出を作る時期じゃない?」
「それは尚くんも同じでしょ? 高校生活は一度しかないから、友達と一緒に遊ばないの? もちろん女はダメだけど」
「いらない…。友達って言っても楓くらいだし、外に行くことより部屋にいるのが楽だから…」
「じゃあ…、私も尚くんと一緒に部屋で遊ぶ…! こうするのが好き…。外じゃこんな風にキスをしたり、くっついたり…。そしてあんなこともできないから…」
花田さん、本当にあれが好きだよな…。
毎晩…体を噛まれて、彼女と恥ずかしい行為をしているから…。体育授業で服を着替える時に緊張してしまう。まだ高校生なのに、こんな退廃的な生活をしていてもいいのか…。とはいえ、俺も花田さんの首筋にキスマークをつけてしまったから…。もう後戻りなんかできないんだ…。
「そして…尚くんがつけてくれたキスマークが消えないから、外に出られないよ〜」
「……そ、それは初めてだったから仕方がない! な、慣れると…すぐ消えるやつでつけてあげる」
「そんなキスマークはないよ〜。へへ…」
からかう花田さんを後ろから抱きしめて、一緒にドラマを見ていた。
「ねえ、尚くん」
「うん」
「私、尚くんとやりたいことができちゃった!」
「何?」
「制服デート…」
「制服デートって、菜月は大人だから…」
「大人だとしても! たまには高校時代が懐かしくなるのよ!」
「そ、そうか…」
ちょうど見ているドラマの俳優たちが、制服を着たままデートをしていた。
悪くないと思うけど、花田さんが制服か…。
「私の学校はセーラー服だったからね? 実は…、引っ越しする時に持ってきちゃった…」
「へえ…、いいよ。じゃあ、デートしよう。菜月と一緒にデートするのも久しぶりだからね?」
「うん…! しよう! デート!」
「うん…」
こんな時は本当に可愛い笑顔を作るけど、どうしてあの時は…。
いやいや…、嫌なことは考えないように…。
「遊園地とか…! どー!」
「ちょっと寒いかもしれないけど、それもいいな…」
「大丈夫、尚くんのそばにくっつくから寒くないよ?」
「うん…」
そして二人っきりの思い出を作るために、俺たちは冬の遊園地に行く約束をした。
ちょっとだけ…、花田さんの制服も気になるし…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます