第20話 0時1分のクリスマス。
木下さんが予約したレストラン…、めっちゃ美味しかったよな。
二人の前でイチャイチャするのは恥ずかしいけど、花田さんが食べさせたいって言うから…。お腹がいっぱいになるまで食べてしまった。
「そういえば、もう11時か…」
花田さんが今日も来てくれるのかは分からないけど、まずは彼女にあげるプレゼントを用意しておいた。明日は勇気を出して彼女に告る予定だから…。その腕輪が入っているケースを見つめて、しばらく微笑んでいた。
ガチャ…。
「尚くん———!」
てか、すぐ来ちゃった…。
「どうしましたか…? もう寝る時間ですけど」
「うん…。せっかくだし…、もうすぐクリスマスだからね。二人で過ごしたらどうかなと思って…!」
「11時ですけど、大丈夫ですか?」
「うん…」
そして、何かをいっぱい持ってきた花田さんが俺の前に立ち止まる…。
花田さんにうちの鍵を渡した日から、俺の部屋にどんどん自分の物を持ってくる癖ができてしまった。料理とか…いろんな生活用品とか…、自分はいっぱいあるからあげるよっていう彼女に俺は感謝の言葉しか言えなかった。
「今日はまた何を…」
「うん…! 最近ね…。私たち一緒に寝る日が増えちゃったから、これ!」
ペアパジャマ…?
「花田さん…、あの…今日の服もそうだったし…。コーヒーとかシャンプーとか…全部高いメーカーの商品じゃないですか…?」
「うん…。でもね。私は私の尚くんにはいい服、いい食べ物、いい生活用品をあげないと…心が痛くなるから。そして気になるし…」
「すごく嬉しいですけど、たまには負担を感じます…」
「え…! 私の尚くんにお金を使うのは楽しい、だから気にしないで…」
持っていたショッピングバッグを俺に渡して、花田さんは笑みを浮かべていた。
「でも…」
「はい…?」
「私、尚くんのことが大好きだからね。ずっとそばにいてほしい…。いや、永遠に私のそばにいて…」
「え、永遠…」
「それくらいは約束できるよね? 難しくないから」
「……は、はい」
「そう。尚くんは私の物だから…」
なんか、今すごいことを言ったような…。
「ねえねえ…、パジャマ着てみて!」
花田さんの下着と同じ色のパジャマ…。
この色が目に焼き付いて、すぐ思い出してしまう。
てか…、こんな恥ずかしい色のパジャマが俺に似合うのか…? 材質のことについてはよく分からないけど…、このパジャマ…着てみたらめっちゃ着心地がいい…。俺のパジャマとは格が違う…。
「どうですか?」
「可愛いね!」
そう言ってから服を脱ぐ花田さんが、俺と同じパジャマに着替えていた。
「あっ…、ちょっと! 花田さん! 洗面所で…着替えてください!」
「え———。でも、私たちこの前まで一緒にお風呂入ったでしょ? 今更、下着姿を見るのが恥ずかしくなったの?」
「は、はい…」
「私にエッチなことをしたくせに…」
「私、何もしてませんけど…?」
「本当…?」
両手を床に置いて、俺を見上げる花田さん。
パジャマのボタンを全部かけてないから…、下着が見えてしまう…。
「ほ、本当です…!」
「フフッ、緊張した?」
「誰のせいだと思いますか…?」
「知らない〜」
「全く…」
「ねえ、私たちそろそろ一ヶ月じゃない…?」
「そうですね…。会ってから一ヶ月くらい…」
こたつの中に入っている俺たちはくっついてテレビを見ていた。
寂しかったこの部屋に、花田さんが来てくれたのは幸運だったかもしれない。たまには怖い顔で怒るけど、普段は素直で可愛い人だからどんどん花田さんのことが好きになってしまう…。
「あっ! もうちょっとでクリスマスだ…!」
「へえ…、そうですね。でも、どうして当日ではなくイヴに…?」
「当日は大切な人と過ごした方がいいから、イヴに遊ぶのよ…。クリスマスは何が起こるのか分からないんでしょう…?」
指先で俺の太ももを触る花田さんにびくっとしていた…。
「あら…、びっくりしたの…? 可愛い…」
「ぜ、全然…? わ、私は何も…、何も…」
「こうやって同じパジャマを着て、同じベッドで寝て…。どう…? 尚くんは」
「……は、恥ずかしいと思います」
「尚くんは私としたいこと…、ないのかな…? クリスマスだから…」
熱くなったのがこたつのせいか、あるいは花田さんのせいか分からなくなるほど。
その話に心臓が激しく反応していた…。
「うん…?」
じっと見つめる花田さんに、今すぐ告白をしたかった。
実は私も花田さんのことが好きですって、告白したかった…。でも、その言葉が…緊張しすぎて出てこない…。初めて告白する俺には…とても難しいことだった…。そのあめ玉みたいな瞳に俺の姿が映っていて、さらに緊張してしまう。
俺を見つめる真っ赤な瞳はとても綺麗で…、今は心臓の音しか聞こえない。
「尚くん…、私に話したいことあるよね…?」
「……はい」
俺の胸に手を当てる花田さんが微笑んでいた。
———12月24日、午後11時55分。
「うん…。聞いてあげる」
「じゃあ…、目…、目を閉じてくれませんか…?」
そのままじっとしている花田さんに、隠していた腕輪をつけてあげた。
「何…? これ…?」
「まだです…。目を開けないでください」
「あっ、うん…! でも、手首に何か…」
「……こ、これはクリスマスのあの…プレゼントです!」
俺には花田さんみたいなセンスがなくて…。
店員さんにしつこく質問した結果。
ピンクゴールドのチェーン腕輪。女性が好きそうな、シンプルで可愛いデザインだから、きっと気に入ってくれると店員さんに言われた。それでも俺にはよく分からないことだから、花田さんがつけた姿を想像したのだ…。
「……」
そして目を開けた花田さんが、手首につけられた腕輪を見つめる。
「わぁ…! 可愛い! これ…、プレゼントなの?」
「はい…」
「嬉しい…、可愛い…。尚くん好き!」
喜んでくれて…、俺もすごく嬉しい…。
そして…。
「あの…、花田さんはすでにそうだと思ってるかもしれません…」
「うん?」
「私、だ、だらしない人ですけど…。それでも花田さんのことが好きで、ずっと言いたかったから…」
「うん…」
「もっとカッコいい方法なんて知らないから…、つ、付き合ってください! 花田さんのことが大好きです!」
「……」
うわ…、これを言うのがこんなに難しいとは…。
「ねえ…、尚くん」
「はい…?」
「キスしよう…」
「い、いきなりですか…?」
そう言ってから俺の膝に座る花田さんが、笑みを浮かべていた。
見下す時の顔が今すぐやりたいって雰囲気を出していて、少しびびってしまう。
「うん。私も尚くんのことが大好きだから、そう言ってくれて嬉しい…」
「……誰に告白をするのは初めてで…」
「うん。尚くんの初めては全部私だからね…?」
「はい…」
小さくなる彼女の声、そして唇の距離も少しずつ縮まっていた。
———12月25日、午前0時1分。
「力入れすぎ…」
「はい…」
「入れすぎって…バカ」
「はい…」
俺と同じ匂いがして、同じパジャマを着て、同じ日常を共有する人…。
そんな花田さんがそばにいてくれるだけで、俺は十分だった…。
静かに唇を重ねる二人。
それはいつもの軽いキスではなく…。ドラマや漫画で見たそんな…、舌と舌が触れ合うやばいキスだった…。
花田さん、キスが上手い…。
「……尚くんの唇もらちゃった…」
「……」
「その顔、可愛い…」
頬をつねる花田さんが笑っていた。
「好きです…。花田さん」
「うん。私も大好きだよ…。尚くん」
———思い返せば、それを言わなかった方がよかったかもしれない。
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