第16話 風邪を引いた。−2
「は、花田さん…?」
「うん。何…?」
「やはり自分でやります…。さすがに…、花田さんが脱がしてくれるのは…」
「嫌…?」
「……」
彼女が「嫌?」と言った時の顔が怖くて、何も言えない俺だった。
熱のせいで花田さんが脱がしてくれたけど、これはどう見てもエロすぎだろ…。しかも、年上の女性にこんな格好を見せるなんて、俺はこのままでいいのか…。顔が熱くなったのが風邪のせいか、あるいは花田さんのせいか…もう分からない…。
彼女の前で恥ずかしい姿をしている…。
「あの、恥ずかしいからタ、タオルください…」
「嫌」
「……はい」
なんか、俺…花田さんのことを怒らせたような気がする。
そして目の前でセーターを脱ぐ彼女から、刺激的な下着が見えてきた。派手な花の刺繍が入った紫色のブラに白い肌、俺はこんな人に「好き」って言われたのか…。俺なんかと一緒にいる時間が惜しいほど、花田さんは綺麗な人だった。
じっと見つめる尚に気づく菜月。
「うん? 尚くんが脱がしたい?」
「い、いいえ…。ちょっと、こんなこと初めてだから…」
「尚くんはまだ高校生だからね。分からないことは私が一つずつ教えてあげるから心配しなくてもいいよ…?」
ストッキングを脱ぎながらそんなことを言うんですか…。
「ううっ…」
下着姿のまま、俺を抱きしめた花田さんが微笑む
「熱いね…。風邪移るかもしれないから、マスクをかける!」
そのまま下着を脱いでから、俺を浴室に連れて行く花田さんだった。
これはやっぱりやってはいけないことだ…。花田さんの裸が見えてきて目をどこに置けばいいのか分からない…。どうすればいいのか、この状況にすごく緊張してしまう…。でも、どうして花田さんは俺の前でこんなことができるんだ…? 普通なら恥ずかしがるんだろう…?
「……っ」
それと…、先花田さんの胸を揉んだことを思い出して…下から嫌な反応が…。
「頭がから洗ってあげるね〜」
「はい…」
髪を洗ってくれる時に、早く冷静を取り戻すのだ…。
このままじゃ花田さんに欲情している俺のモノが見えてしまうから…。精一杯我慢して、エロいことを思い出さないように頑張ってみたけど、背中から感じられる花田さんの胸に全てが水の泡になってしまった。
それと、花田さんの胸からちょっと硬い何かが感じられる…。
「尚くん、気持ちいいでしょう〜」
「は、はい…。あれ? でも、これ私が使ってたシャンプーとは違うような…」
「へえ? 分かるの? これ私のだよ。尚くん、いつも安いシャンプー使ってるんでしょう? これお母さんが送ってくれた高級シャンプーだから、香りがすっごくいいの」
「そんな…、いい物を…」
「大丈夫、うちにたくさんあるから尚くんにあげても問題ないからね? ちなみに、ボディーソープもあるよ!」
「あ、ありがとうございます…」
髪を洗ってからボディータオルに手を伸ばすと、俺の手首を掴む花田さんがこう話した。
「何するの?」
「ボディータオル…」
「どこに使う?」
「体を…洗わないと…」
「大丈夫、私がやるから尚くんはじっとして」
えっ、体まで…?
「いいえ…! 花田さんにそんなことまで…」
「私じゃなくて、他の女にやってもらいたいわけ?」
「……」
「私は好きな人の体を洗ってあげたかっただけなのに…。尚くん、もしかして他に好きな女の子でもいるの? 私が洗ってあげるのは嫌…? うん…?」
「いいえ…。お、お願いします…」
「うん!」
俺のためにやってくれるんだから、花田さんの機嫌を損ねることはできなかった。
ボディーソープで体の隅々まで拭いてくれるのはいいけど、どうしてボディータオルを使わず…手で拭いてくれるのかは分からない…。ここで何かを言ったら、また花田さんに怒られるから…何も言わず黙々と鏡を見つめていた。
しかし、裸の花田さんが目の前に…。
目を閉じた方が良かったかもしれないな…。
「……っ!」
「あれ? 尚くん…ここ…」
モノを指先でつつく花田さん。
「こ、これは仕方がないから…! 気にしないでください!」
「フン…。でも、気になる! ここもちゃんと洗わないといけないよね?」
「はい…?」
そのまま、人差し指で敏感なところを触る花田さんが微笑む。
ぎゅっと握りしめたり、握ったまま動かしたりして…後ろから「もっと可愛い声を出してみて」と囁いた。
「はあ…」
「尚くんの声は可愛い…、ここも可愛い…」
抗えないように頭の部分をいじって、少しずつ恥ずかしい声を漏らしていた。
すごく気持ちいいけど…、これが良くないってことは分かっている。でも、花田さんに怒られることよりはこっちの方がいいと思っていたから。仕方がなかった…。
「ここも風邪を引いたのかな…? 体よりも熱いよ…? 尚くん…」
「いいえ…。花田さんがずっと離してくれないから、こうなるんです」
「これ、私のモノだからね? そうでしょう?」
モノを握ったまま力を入れる花田さんに、すぐ答えてしまう。
「は、はい…」
「安心して、何もしないから…。尚くん、ずっと緊張してる」
「知ってましたか…?」
「背中に胸を当てた時、震えている尚くんの体が感じられたよ」
「……恥ずかしい」
静かな浴室、二人は体を流してから風呂に入る。
「はあぁ…」
やっぱり気持ちいい…、体を温めるこの温もりは嫌じゃない。
一応目の前の全裸に恥ずかしくなるけど…それでも気持ちいいことだった。やっぱり俺がこんなことをするにはまだ早いかもしれないな…。
花田さんの肌に触れているし…。近い。
「二人が入るにはちょっと狭いけど、尚くんとくっついて気持ちいい」
「……はい…」
こいつもずっと勃ったままで…、先から花田さんに握られている…。
恥ずかしいって言っても俺のモノを離してくれない花田さんは、俺がどうにかできる相手じゃなかった。
「気持ちいいよね?」
振り向いて、俺の首筋に口を当てる花田さん…。
「はい…」
「尚くんの体に私のキスマークがたくさんある…! 好き」
「全部、花田さんが残したものですよね」
「うん…。消えないなら隠すしかないから…」
清水が残したキスマークを自分のキスマークで隠した花田さん。
あの日は、もっと大きくてもっとたくさんのキスマークを体に残してくれた。
「んっ…」
そのまま首筋のところを舐めて、噛んで…。
花田さんの愛情表現が激しい…。
あの日…。俺は「大好き」って話したけど、それも言葉だけで…まだちゃんと告白をしていなかった。やっぱり、こんな関係を続けるなら…花田さんと付き合った方がいいよな…。
「ねえねえ…、私男と一緒にお風呂入るのは初めてだよ?」
「えっ? そうですか…」
「なんだよ…。そのびっくりした顔は…! 私誰かと一緒に寝るのも、お風呂入るのも全部初めてだよ? 尚くんが私の初めてなの———!」
「は、はい…。でも、花田さんはすごい美人だから、てっきりたくさんの男と付き合ってきたと…思っていました」
「そんなことないよ? 私、こう見えても恋愛経験ないし…。ずっと尚くんしかいなかったからね? キャー、好きな男の前でこんなことを…! 恥ずかしいっ!」
「こっちの方がもっと恥ずかしいんですけど…」
「知らないよ! 言わせたのは尚くんでしょ? うるさいから抱きしめて…」
「はい…」
それから裸の二人は抱きしめ合い、ちゃんと体を温めていた。
……
「なんか、今日すごく迷惑をかけたような…」
「ううん…。尚くんのことが好きだから、ちょ、ちょっと恥ずかしかったけど! 私は…気持ちよかった! そ、そして尚くんの…、あの…キャー恥ずかしい!」
「……は、はい…。私も…」
今更だけど、花田さんが握りしめたそこがちょっと痛い…。
「また二人でお風呂入りたい! 尚くんもそうでしょう?」
「……はい」
笑顔で髪の毛を乾かす花田さんと、あの日も一緒に寝てしまった。
やはり俺の中からがどんどん大きくなる花田さんが気になってしまう…。
寝る時、彼女に抱きしめられるのも好きだし…、彼女から同じ匂いがするのもすごく好きだった。俺のそばにいてくれる人が花田さんで、本当によかったと思う…。
「おやすみなさい。花田さん…」
「明日は尚くんの風邪が治りますように…」
寝言を言いながら眠る菜月。
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