輪っか

「続いていく命の輪っか…。子が授かれないのには理由があるのだ」


「魂の数が、決められている。人間の神様が作るから……?」


ルシア様は、私を見つめる。


「血眼になって、手に入れる場所であるのだろう?そこが…」


「桜木杏奈の悲しみを思えば、そうなのではないですか?」


「お金を払ってでも、そこにいたいのだよな!」


「そうでしょうね?」


「誰かが不幸であってもか?」


ルシア様は、桜木杏奈の髪を撫でる。


「桜木杏奈のように、悲しみを抱える人間がいても、自分だけ幸せならそれで構わないのか?」


「それは……」


「リゼには、まだ難しいかもしれないな!たった、600年しか生きていないのだから…。昔は、こんなに技術が発達していなかった。野生動物達と同じだよ!時期がきたら、みんな世代交代をし、新しい命が産まれる。私は、技術が進歩した事を嘆いてるのではない。ただ、自然の摂理に反されているせいで!我々のような上層部の死神が…。命を終わらせに来ているってわけだ。だから、桜木杏奈のような人間が出来上がってしまうわけだ。本来ならば、今回桜木杏奈は母親になれた筈だった」


「青井俊樹が別れなかったからですよね?」


「それもある!しかし、三井百合子が妊娠をしたがったせいでもあるのだ」


私の情報とルシア様は、別の物を持っていた。


「どういう事ですか?」


「三井百合子は、避妊をさせなかったんだ。本来ならば、三井百合子は今回妊娠していなかった。彼女は、強欲でね!何でも、欲しがるんだよ!人が持っているものを…。手に入れられない事は、あり得ないのだよ。それが、彼女だった!お金持ちの両親に育てられたから、仕方ない!強欲だった」


「それで、桜木杏奈が…」


「命は、バランスを保たねばならない。だから、仕方ないのだよ。リゼ、あまり深入りするな!人間は、所詮魂でしかないのだよ」


ルシア様は、俺の隣に立った。


「この事は、内緒にしといてやる!ただし、今回だけだ」


桜木杏奈の赤ちゃんから、外した輪っかを握りしめられていた。


「何故ですか?」


「私もあの病院にいたのだよ!」


そう言って、ルシア様は小瓶を見せる。


「その子の妹が産まれたのですか?」


「そうだよ!昨日な!一日だけ、待ってあげたのだ。妹の誕生日に、殺すのは可哀想だったから…。それでは、私はもう行く」


「はい、お気をつけて」


「また、いつか」


そう言って、指をパチリとすればルシア様はいなくなった。


上層部の死神は、別格に美しい。ルシア様は、金髪の髪にブルーアイ。まるで、絵画のような美しさなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る