第七話

「お疲れ様ー!!」


 メンバー屈指の元気キャラが疲れることなく元気のまま帰って来た今の時刻は5時過ぎ、

 日も傾き多少赤みを帯びてきている時間に俺たち四人は和気あいあいと役所へと戻って来た。

 それも大量の袋を得て。


「いやーほんとお疲れ様!」

「俺らは超良い成果出せたぜ!」

「二人はどうでしたか?」

「途中で別の部隊と組むことになって悪くはない収穫になった」

「何より楽しかった!!」

「そうかそうか!」


 なんだか頭のない快離と同じく頭のない八神の会話を見ているとなんだか親子を感じさせる。年齢差は、よく知らないが。

 4人は役所に入ると真っ先に机へと向かった。

 そして机を取り囲むように立つ。


「とりあえず私の国なんで細かいことは私に任せてください」

「ということはお前に目玉渡せばいいのか?」


 そう勇が言うと快離が楽しそうに懐のバッグから袋をいくつか取り出した。

 どのバッグも異様な臭いを発しているが皆疲れているのだろうか、苦しい顔を見せない。とはいえ俺もモンスターを狩りすぎて慣れてしまった。

 服やカバンも汚れてしまっているのでお金が入り次第洗濯をしなければ。


「とどのつまりは結果発表……!?」

「互いがせーので発表だ」

「了解」


 そういうと快離は敬礼をした。

 そんなやり取りを俺と時雨は他人事のように見ている。

 時雨に至っては表情がほぼ変わらずずっとニコニコしており若干不気味だ。


「「せーの!!」」

「47個!!」

「203個だ!」


 そう言った瞬間、快離は2つ、八神は6つの袋を取り出した。


「お、多いね!?」

「おいおいそんなもんか!?」


 予想以上の量に快離は目を点にしていた。

 八神は勝ち誇ったかのように「ははは!」と笑っていた。

 何故こいつらはこんなにもテンションが高いのだろうか……


「じゃぁこれらは私がお金に換えてきますね」

「よろしく!」

「ど、どうやってそんな大量に!?」

「いやー、都合よくモンスターの巣を見つけてな」

「けど二人じゃ結構危険じゃない?」

「おいおい忘れたのか?俺のチートは『不死身』だぜ?」


 この世界における勇の『チート』。

 『不死身』。その名の通り死なない。

 この世界の人間はほとんど年を取らないので実質不老不死だ。

 勇に聞いたところ痛みでさえも感じないらしい、生物的に危ない気もするが何よりも回復力が高いのだろう。

 なんて考え事や話をしていると時雨が焦った表情をしてこっちへ来た。


「皆さん!」

「ど、どうした!」

「そんなにも焦ることなのか」

「いや、そんなことないんですけど」

「なんか期待して損した気分」

「快離さん!?」


 葛楽は手に持ってた紙を卓上に置くと上の方を指さして説明し始めた。


「モンスターの討伐をお金に変えるっていう仕事なんですけどこれが部隊じゃないと駄目でして」

「俺等部隊じゃないのか?」

「それそうですけど、いわば会員限定みたいなものでして」

「す、すごい分かりやすい説明だね……」

「ということでこの部隊の名前を決めたいのです」

「おぉ!! 何それ!!」

「面白そうじゃねぇか!」


 何故か今はテンションが高い二人が目を輝かせ楽しそうにしている。

 確かに命名は面白そうだが如何せん今回しか使わなさそうなものじゃないかと心配にもなる。

 ただそうなると適当な名前でもいいのか。


「ちなみに都合が良いのでお留守の四人もメンバーということにしてます」

「責任重大だね!」

「迷惑以外の何物でもないだろうな」

「うーん、名前でしょ?」

「俺ら八人に共通するモノって」

「まぁどう考えても……」

「感情だよね!」


 快離がそう言う。

 そもそも俺たちは感情が個々でそれぞれ欠如している。

 そしてどういうわけかそんな人たちを時雨を起点にどんどんとメンバーに入れていった。

 つまりはそれの集まりというわけだ。


「感情が、ないだろ?ロスト」

「ロストエモーションとか?」

「なんだその名前」

「漆黒の……」

「お前は黙っとれ」


 それぞれにツッコミを入れなんだか面倒になって来た。

 その時、時雨が手を叩き思いついた表情をした。


「『感情消失』なんてどうですか?」

「えー、なんか安直じゃない?」

「まぁ……俺のネーミングセンスは良いと言っている、どうだ?白咲」

「ご自由に、俺の出る幕じゃない」

「じゃあもう『感情消失』で決定です!」


 そういって時雨がペンを走らせ始めた。

 半ば強引に決めることになったが二人のネーミングセンスを活用するのは怖い。

 ここは引き際を考えて正解だっただろう。

 少し時間が経った後、潤った財布を笑顔で見せてくる時雨を2人が歓迎し、役所を出た。

 そのほとんどが飲食に消えそうだなと心の中で呟いた。

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