最終話 逃亡
気付けば週末になっておりサッカー部の練習試合の日になっていた。俺は凛達と一緒にうちのサッカー部の応援をした。雄二はベンチスタートで後半まで出場はなかったが残り20分でフォワードとして途中出場した。
得点は1-2でうちのチームが負けていた。残り時間が少ないということもあり相手が防御に徹し、雄二たちが果敢に攻めているが決めきれず時間だけが過ぎていった。残り数分というところで雄二がペナルティエリア内で倒されPKを獲得した。
PKを蹴るのは雄二だった。俺達は雄二を精一杯応援したおかげか雄二はゴールを決めた。その後すぐに試合終了のホイッスルが鳴った。なんとか同点で終わることが出来た。サッカー部は練習試合後に今日の反省会が、あるみたいで終わるのがいつになるか分からないということだったので俺達は少し遅めの昼食をファミレスで食べて解散をした。
練習試合が終わった翌日、来週のテストに向けて今週からテスト勉強週間が始まった。そのため、どの部活動も活動休止になったのでみんなで放課後、テスト勉強をすることにした。テストは現代文、数学、英語、世界史、化学、地理、古典の7科目である。大体の科目は凛が教えるが各教科で得意な人がいればその人に教わるという形で勉強を始めた。それぞれの得意科目をまとめると
俺:数学、化学
雄二:英語
小林:現代文、古典
秋元:現代文、古典
このような感じになった。放課後には教室でそれぞれ分からない所を教えあったり、憶えにくい所の暗記方法を話し合ったりして学習をした。休日には再来週からテストが始まる五反田を交えて、ファミレスや雄二の部屋で学習を行った。テストはどの科目も皆と勉強をしたことにより、結構な手応えがあった。最後のテストが終わり、午前中で学校が終わったのでみんなでテストの打ち上げ会を行った。
テストが終わった次の日からちらほらとテストが返され始めた。どの教科も7割は取れており数学に関しては9割を取ることが出来た。テストが返却された日の昼休憩にはみんなで自分達の点数を言い合ったりしていた。皆でテスト勉強をしたおかげで結構な手応えがあったらしい。
テストも終わり、土日遊べるようになったので金曜日の夜、凛に
『土曜日デート行かない?』
と誘うと
『その日は茶道部の人達と有名な抹茶屋さんへ行くので厳しいです。』
と断られた。
今までは凛とデートにいったりする機会が減ってきている気がする。というよりも二人きりになるのを避けられているような気がする。考えていると良くないことばかり考えてしまうので寝ることにした。
いつもなら遅くても午前中にはおきているのだが今日は昼に起きた。昨日のこともあり、気分転換に電車に乗って遠出をすることにした。電車を降りてゲームセンターが見えたのでそこへ向かっていると驚くことに茶道部の本田が数人と遊んでいるのが見えた。しかし、その中には凛の姿が無かった。本田に凛について聞いてみたかったが、俺に凛が嘘をついていることを理解するのが怖くなり、その場から離れた。それからのことはあまり、憶えていないが気付けば日曜日の夜になっていた。結局、凛に土曜日のことを聞くのが怖くなり聞くことが出来なかった。
次の日、凛に合いたくないと思い一人で学校へ行くと職員室横にある掲示板に各教科と総合点の20位までランキングが載っていた。それぞれの得意科目では皆ランキングに載っており凛に至っては全ての科目でトップ10に入っていた。総合点では凛が1位、秋元が11位、俺が19位に入っていた。嬉しいことなのだが気分は上がらなかった。
皆にはバレないように平静を装いながら1日を過ごした。HR前に凛から『今日の放課後、大事な話があるので4階の美術準備室に来てください。』
とメッセージが来ていた。この感じだと小説や漫画などではよくある別れ話を切り出す雰囲気だが、そうでないと願いたかった。震える指で『了解』とだけ送った。内心では誰とどこで俺のどこが悪かったのか等をずっと考えていた。
放課後のチャイムがなったので荷物を持って重い足取りで美術準備室に行った。中には凛が1人おり、気まずそうな表情をしていた。俺が来たのを確認すると凛は緊張した声で、
「奏君、私と別れてください。」
と一言言ってきた。悪い予想が現実となってしまった。最後の希望として
「最後に一つだけ確認したいことなんだが、誰かに脅されてこんなことを言っている訳じゃないんだな?」
そう言って周りを見ると凛の死角だが、こちらからは見えるところにサッカー部の林が廊下に立っているのが見えた。
「はい。実は、」
凛が何かを言おうとしたがそのつづきは想像出来たし凛の口から聞きたくなかった。凛の言葉を遮って俺は「分かった。別れよう」と一言言って教室を飛び出した。(凛は林のことが好きになったから別れて欲しかったんだ。多分土曜日も林とどっかに行ってたのかもな)
後ろから凛が「奏君待ってください。」という声が聞こえたが、俺は無視をして学校を飛び出した。スマホにはメッセージの通知や電話がなっていたがうるさかったので電源を切った。少しでも遠くに行きたいということだけを考えて走っていると気付けば辺りは暗くなっていた。
走るのを止め歩いていると、雨が降り始めた。これで泣いてることもバレずに済むと考えていると急にクラクションが聞こえた。そこには乗用車が迫ってきており、運転手が驚いてるのが分かった。(あぁ、俺はこれで死ぬんだ)と思った瞬間体に強い衝撃が伝わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます