宣誓の準備

「ねぇ、形君って何歌うの?」


「ボカロとかは聞くけどあんまり歌わないかなー。最近流行りの曲とか」


「へー、なんか歌ってよ」


 2人きりのカラオケってキツくない?先歌っても後から歌った人が上手かったら、先行けよってなるし、先に歌っちゃうと、その後のハードルが上がるし、やっぱりカラオケは1人で来るとこだ。多分これから流行る。一人カラオケ、一人花火、一人銀行強盗。


「任せとけ」


 とりあえずそれなりに歌える曲を入れる。まぁ一曲目ってこともあって点数は伸びない。83点可もなく不可もなくの点数だろう。

そういや何気に同級生とのカラオケは初めてかもしれない。


「じゃあ次私〜」


 そう言って歌い始める。そして始まった地獄の時間。なぜ俺は3時間にしたのだろう。3曲分で充分だった。夜道桜は音痴、いや、ジャイアンなのだ。本当に酷い。たった4分半が4年半ほどの感覚だった。もちろん点数は低い、28点。


 カラオケでもこんな点数出るんだな。俺でも最低58だぞ。因みに作者の行きつけカラオケの最低点は50点に設定されています。俺はフライドポテトを頼み、もう一曲歌う。79点。少し下がってしまった。


「点数下がってるじゃん」


「誰のせいだよ」


「自分でしょ」


 そう言ってもう一度桜がマイクを持つ。俺は耳を塞ぐ。イントロが始まった。これは地獄のスタートの合図だ。俺は息を呑む。


「フライドチキンお持ちしましたー。」


「ギィィブァァァジ♬ャインインイン、ギ♪」


 それと同時に歌い出す。店員は驚きフライドポテトが空中にフライする。桜は流石に歌うのをやめる。


「すみません。今新しいのをお持ちしま……えー?誰君だっただけ?」


 そこに立っていたのは、あの回文を思い出させる掃除道具。そう、タワシこと久留美さんだった。たわしこと久留美さんって説明終わってるだろ。


「あぁ、形です」


「そうだそうだ、思い出した」


 思い出してはねぇだろ。と心の中でツッコミ、ここでもバイトしてるんだなと、感心する。


「ちょっと形君!女の子多くない?」


 桜はなぜかキレ気味で俺にデコピンしてきた。確かに多いのは多いが、俺は多分ゆずるさん一筋だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る