#28 手の施しようがない



まだるっこしいのは嫌いでな。


結論から先に言わせてもらおう。



私はここに居る女子全員が催眠アプリを所持し、ソレを皐月きゅんに対して使用したと睨んでいる。



そう思う理由は大きくわけて2つ。


まずひとつ。ここまで皆の様子を伺わせて貰ったが、誰もが自分が彼の1番なのだと何かしらの確信を持っている言動が見受けられる点だ。


皐月きゅん本人はここに居る誰とも、そう言った関係には無いと言ってはいるが、各々がそれぞれあたかも既に彼と関係を結んでいる風を装っている。端的に言えば彼女面をしていた。


それはまるで催眠アプリを使い彼と関係に及んだ花園の話を聞く前の私の様にだ。



そしてもうひとつ。花園の言動だ。


花園は言った「ボクはの幸せを願っている」と、あの場面でと言わずにと言ったのだ。


その点を踏まえた上で、花園の性格から察するに奴が私以外にも催眠アプリを与えている可能性が非常に高い。



そう考えると現状の混沌としたこの場も納得のいくモノになる。


皆が皆、皐月きゅんと関係を持っているからこそ、上岡緑とのベロチューに怒りを表した。


そして当人である上岡緑の突飛な行動の理由もわかる。


既に皐月きゅんと関係を結んでいた上岡緑は皐月きゅんを訪ね、そして気持ちを抑えきれずにベロチューに及んだ。大方、催眠アプリを使えばなんとでもなると思っていたのだろう。


しかし、この場に私達が居た。これは上岡緑としては予想外の事態で、だからこそ上岡緑は私達に対して何故あの様な行動をとったのか説明出来ない。また皐月きゅんとしても、どうしてあんな事になったのか訳が分からないわけだ。


まさか、皐月きゅんに催眠アプリを使いに来ましたなどと言えるはずがない。


故に上手い誤魔化し方が見つからず、内心ではパニックを起こした結果、黙り込んでしまう現状に至ったのだろう。


なるほどなるほど、考えれば考える程にそうとしか思えなくなってきた。


つまりはだ。皐月きゅんはこの場の全員と私がしたように知らず知らずのウチに肉体関係を持っているヤリチンハーレムクソ野郎というわけだ!(違)


まさか7人もの相手と同時に肉体関係を結んでいるとは相当なヤリチンだ(冤罪)。まさに性欲の化け物だ(おまいう)。下半身だけで生きていると言ってもいい(つ鏡)。皐月きゅんの性欲強すぎるだろ!(手遅れ)


はあ……皐月きゅんしゅごしゅぎぃ……皐月きゅんホントしゅきぃい……(キュンキュン)。



まぁ、私のように皆が皐月きゅんと肉体関係に及んでいるかは、まだ分からないのだが。



しかしながら、腑に落ちない点もある。それはみなの言動が花園から話を聞く前の私の様であるという点だ。


もしや花園から「催眠相手は使用者の思考の影響を受ける」という説明をまだされて無いのだろうか?


何故だ?何故、花園はその説明をしていない?


私が催眠アプリを使ったのは昨日だと言うことを鑑みれば皆は私よりに先に催眠アプリを使っている。


花園の事だ。まず間違いなく説明を忘れている訳では無い。ちゃんとした説明をしていないのは確実に意図されたモノだろう。


おそらくだが、初めにこの説明をせずに、後出しで説明したのは催眠アプリに対する抵抗を少しでも軽減し、使いやすくする意図が含まれている。


実際に私がそうだった。こんな便利なものがあるならば、皐月きゅんが私の事を内心どう思っているのか知りたいという軽い気持ちだった。


それで皐月きゅんが私を好きだという気持ちを知り我慢出来ずにヤッてしまったわけだ。


まぁ、今となっては実際の所、皐月きゅんが私をどう思っているかはわからなくなってしまったが。



ふむ。つまりはそういうことか?



この説明をしなければ、皐月きゅんが自分の事を好きなのだと勘違いしたままになる。


花園としては勘違いしたままの方が都合が良かった?


花園目的はなんだ?何故、私にだけこの説明をし、他のみんなを勘違いさせたままにしておく?その意図は?私と皆の違いはなんだ?


皆が皐月きゅんを好きなのは間違いない。だからこそ催眠アプリという誘惑に誘われて関係を結んだのだろう。


花園は皐月きゅんと皆に関係を結んでもらいたかった?


複数人の女と関係を持つ状況に皐月きゅんを堕としたかったのか?


つまり花園は皐月きゅんを中心とするハーレムを築きたかった?


理由はまだ不鮮明な所はあるが、花園の行動は現状の皐月きゅんを取り合いが行われる修羅場へと導いている。


わからない。わからないが、それを答えとするならば、なるほどどうして私にだけ説明した意図が見える。


他の者にこの追加説明を行ったのならば、皐月きゅんが実は自分をなんとも思っていない事にショックをうけ、そして彼の意志をねじ曲げて行為に及んだ自分に激しい罪悪感を覚える事になる。そうしてそれを気に病んでしまい皐月きゅんの元を去ってしまうかもしれない。


それを避けたかったからこそ追加説明を行わなかった。



だが花園は私にはその追加説明をした。


大変遺憾な話ではあるが花園は私の性格を熟知している事だろう。だからこそ、私がそうはならないとふんで追加説明を行った。


実際、私は追加説明を聞き、ちょっとだけ罪悪感を覚えたが、まぁ、皐月きゅんも私のようなアルティメット美少女と肉体関係を持てて嬉しいやろ!とあまり気に病んで無かったりする。



私の今の心情と言えば「皐月きゅんが私のご主人様になってくれるなら、他に女が何人居ようともうどうでもいい」となっていた。


私の最終目標は皐月きゅんにご主人様になってもらって、いっぱい虐めて愛してもらうことに他ならない。


ぶっちゃけ、それが叶うならもう2番でも3番でもなんだったら7番目でもなんでも構わないとさえ思う。ホント都合のいい女でいいから、とりあえず抱いてもらいたい感。


むしろ、私を縛り上げて私の目の前で見せつける様に他の女とイチャラブNTRおせっせしてもらいたいまである。何それ絶対興奮する。私のご主人様鬼畜すぎ(しゅき)



つまりココだ。花園の意図はおそらくココにある。



皆にこういった趣味は恐らくない。皆、皐月きゅんの1番を求めている。しかし私はそうではない皐月きゅんにご主人様になってもらいたいだけだ。そして、これが皆と私の違い。私がこういう趣味だからこそ、花園は私にだけ追加説明をした。



そういう事だろ、花園?(ドヤァ)



そういうことならば、この混沌とする現状で私がとるべき行動は――……。



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