#13 常習犯
[♡♡♡皐月お兄ちゃん♡♡♡]
涼:兄さんの部屋なう(ノ*´>Δ<)ノ
涼:お夕飯作って待ってますね(و' Δ ')و
涼:寄り道しないで帰ってきてくださいよ|ㅿ•̀)
涼:ちなみに
涼:今日のゴハンは
涼:兄さんの大好きな私です(*' Δ '*)
皐:妹は食べ物じゃありません
涼:あにうま
皐:兄を食べるんじゃありません
皐:兄も食べ物じゃありません
皐:生徒会の手伝い終わったら真っ直ぐ帰るよ
涼:まってます(*´Δ`*)
涼:終わったら連絡ください
涼:今夜のオカズが温まっておきますので
皐:誤字が凄い
皐:わかった
涼:( ˙ㅿ˙ )
涼:そろそろ終わる頃合だとみました
涼:終わりました?
皐:すまん
皐:今終わったからこれから帰るよ
涼:わーい‹‹\(´ω` )/››‹‹\( ´)/››‹‹\( ´ω`)/››
涼:兄さん
涼:まだですか?
涼:真っ直ぐ
涼:帰るって
涼:言ってましたよね?
涼:兄さん
涼:返信
涼:何かありました?
涼:兄さん
涼:兄さん
涼:兄さん
皐:たすけて
涼:なにかあったんですか?
涼:今どこにいますか?
皐:みはるととりのが
皐:かえれない
涼:場所
涼:どこにいるんですか?
涼:兄さん
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
涼:[不在着信]
◇◇◇
結局、兄さんとの電話は繋がりませんでした。
話の流れから察するに『みはる』はあの幼なじみで『とりの』はおそらく生徒会長。
兄さんはそれに捕まり拘束されたのではないかと予想します。
流石に3人が何処に居るのかはわからないので、もう私に打つ手はありませんね……おのれ。今度兄さんにはGPS付けましょう。
くっ……兄さんが帰ってきたら「おかえりなさい!ゴハンの私にしますか?お風呂を私と入りますか?それとも私にしますか?」ってやろうと思っていたのに……これでは兄さんがいつ帰ってくるのかわかりません。
はぁ……待っていても仕方ないですね。今日の所は帰りますか。
それにしても忌々しい。あの幼なじみ……それと生徒会長も。何かに付けて兄さんを呼び出す生徒会長。あの人、絶対兄さんの事を狙ってますよ。
兄さんは私だけの兄さんなのに。
まぁでも兄さんが好きなのは私ですし、兄さんがあの2人に手を出す事は考えられません。
あのクソビッチ共が無理矢理に兄さんに迫るとなったら、その時はあることないこと言いふらして世間的にぶっ殺してやります。
しかし、兄さんが優しいのは良い事ではありますが、誰彼構わず優しくしすぎます。
結果として兄さんに色目を使うクソビッチのなんと多いことか、兄さんに惚れてしまう気持ちは大いにわかるところではありますが、自分の身の程をわきまえて欲しいものです。
私以外に兄さんに釣り合う女性なんて存在していないのです。ですから兄さんは私と結ばれるのは確定事項。予め決められていた運命。世界の真理です。
それを横からあれこれちょっかいを出すクソビッチが煩わしいのなんの。
そして兄さんも兄さんで本当は私のことを襲いたいにも関わらず、いつまでたっても襲ってくる気配などなかった。
それはまぁ私の事を大事に思ってくれていたからだというのはわかっているのですが、私としては何時でもウェルカムだったので、さっさと押し倒して欲しいところでした。
しかし、今となってはそれも昔のこと。催眠アプリのおかげで秘められていた兄さんの欲望は解き放たれ、無事、私と兄さんは結ばれました。
思い出すのは数日前の私と兄さんが愛し合った熱い夜。
思い返すだけで身体が火照ってしまいます。
「そうですね…………兄さんは帰ってきませんし……帰る前に……」
思い立ったが吉日。
手馴れた手つきでガサゴソと兄さんの衣類を物色。兄さんの使っている下着を拝借して兄さんがいつも寝ているベットへ向かいました。
◇◇◇
「はぁ……はぁ……いまさら、これじゃ、満足出来ません……」
これまでに何度も同じような事をしてきましたが"本番"を知ってしまった今の私にとって、この程度では満足出来ず、荒い息と共にため息をひとつ吐き出しました。
もどかしい。
そして事後処理のなんと虚しい事か……。
これまでも事後処理をしている時は虚しい気持ちになりましたが今日は一段と虚しく感じますね。
あぁ、兄さんが……本物の兄さんが欲しい。
兄さんの気持ちが知れた今では、実際に兄さんが私に手を出すのは時間の問題となりました。私がアピールを続ければ、そのうち兄さんの理性は決壊することでしょう。実際、決壊しましたし。
それに私には催眠アプリがある。
これさえあれば、いつでも兄さんと出来ます。幸いにも私と兄さんが2人きりになれる時間は山ほどありますから。
しかし、それには注意が必要です。
私は昨日、会ったあの胡散臭い女の人との会話を思い出しました。
◇◇◇
「注意事項、ですか?」
「ああ、そうさ。知っての通りコレは他者を言葉のままに操る事ができる。そんな常識外れのモノなんだ。当然、危険性はあるさ。それの注意事項だよ」
「き、危険、てッ……!そんな事、一言も……!」
「普通に考えればわかる事だと思うんだけどね。キミはこの催眠アプリがなんの弊害も無しに使えるものだと、そう短絡的に考えていたのかい?それは実に怠惰がすぎるね。どう考えたって危ないものだろ、これは」
「……………」
「でもまぁ安心してくれよ。注意事項を守ってくれさえすれば早々に問題が起こることも無いよ」
「そ、そうですか……それでその注意事項というのは?」
「まずは催眠中にあった事を、おいそれと話さない事だ。自分の記憶には無いが、体験した事があるような事をあれこれ聞かされれば脳がパニックを起こす。最悪の場合、それを上手く処理出来なかった脳が異常をきたして廃人になってしまう恐れがある」
「は、廃人……兄さんが……」
「不安がることは無いさ。催眠中にあった事を話さなければいいだけの話で、それならば特に難しい事でも無いだろう?催眠中の忘れた記憶を蘇らせたいと思っても、それは止めた方がいいね。催眠中にした事はキミだけの記憶に留めておく事だ」
「わかりました」
「あとは当然といえば当然な事なんだが、やはり催眠アプリの過度な使用は控えた方がいい。度重なる使用や連続使用でいずれは現実との折り合いがつかなくなってくる。そうすると脳に異常をもたらしてしまうかもしれない。使用はほどほどにって、ところだね」
「そうですか……」
「おやおやぁ?なんだか落ち込んでる様子だねぇ?なんだい?そんなに頻繁に使う予定があったのかい?いやはや最近の女学生というのは随分とお盛んなんだね。まぁ私も1人の女学生ではあるけれど、そこまでではないなぁ。何にしてもだ。こんなモノを頼らずとも、実際にそういう事を出来る関係になりさえすればいいんだ。精々、頑張ることだね」
ケタケタと愉快に笑うその女はやはりどうしようもなく胡散臭かった。
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