おつかい
『この間、五歳の息子に初めておつかいを頼んだのよ。そしたら、レタス一玉頼んだのに、間違えてキャベツ買ってきちゃってさ』
『あー、まあ、似てるっちゃ似てるからね。私も子供のころはどっちがどっちかわからなくて、頭の中でこんがらがってたし』
『でもそれだけじゃないのよ。そのおつかいの時にブロッコリー五個買ってきてって頼んだら、あの子間違えてカリフラワー買ってきちゃって。形は似てるけど、ブロッコリーとカリフラワーじゃ色が全然違うじゃない。レタスはもしかしたらって思ってたけど、まさかブロッコリーまで間違えるとは思わなかったわよ。ほんと、やんなっちゃうわ』
『まあ、仕方ないよ。まだ五歳でしょ。小学校にも行ってないような子にそれ以上を期待するのは酷ってものだよ』
『いやいや、それだけじゃないのよ。そのおつかいのときに、わたし、「大根七本買ってきて」って頼んだの。そしたら何買ってきたと思う? カブじゃないわよ。なんとあの子、人参を買ってきたの! 名前も違うし、見た目も色も違うし、唯一同じなのは根菜ってだけ! もう、信じられなくて。来年小学校に上がるってのに、ほかの子と同じようにやっていけるのか、私心配で心配で。出来なさすぎて虐められるんじゃないかって』
『まあまあ、落ち着いて』
『それだけじゃないんだって! 人参以外にも、「コシヒカリ20㎏」買ってきてって頼んだに、買ってきたのはササニシキだし、本当にもう──』
『あのさ、さっきから薄々思ってたんだけど』
『なに!?』
『何っていうか、買わせようとしてる食材がことごとく重いんだよね。え、なに、君の子って五歳児だったよね』
『そうだよ。でもって体重70㎏、身長173cm。私よりも力があるからおつかい頼んだのに、これなんだもん』
『うん。わかった。一つ言えるのは、虐めの心配はしなくてもいいってことかな』
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