ボルゾイの大きさを存じておりますか?
「ねえ、父さん」
「なんだ」
「この間、夜中になんか物音がしてたんだけど、父さん夜中に出かけてるの?」
「ああ……そうか。うん。見られていたのか。見られていたなら仕方ない。そうだ。父さんは夜中に出かけてる」
「なんでそんな夜中に出かけてるのさ。てか、どこへ何しに」
「近所を
「いや、散歩なんて昼間にすればいいじゃん。ボルコだって可哀想じゃん」
「別にいいじゃないか。なあ、ボルコ」
「ワァン!」
その時の俺は、それ以上食い下がることをしなかった。父は何かを隠している。機を見て、父が本当は何をしているのか探ることにした。そして、その機は早くもやってきた。
その日の夜、自室で寝たふりをしていると、玄関の扉が動く音がした。俺はすぐさま部屋を出て玄関に向かった。父の靴がなくなっている。父が出かけたのだ。確認すると、靴と一緒にリードとボルコの姿もなくなっている。散歩しているというのは、嘘ではなかったか。
いや、散歩を口実にしてどこかへ向かい、そこで別の何かをしているに違いない。
俺は音を殺して外に出る。家の前の道に出て、左右に首を振る。まだ遠くへは行ってないはずで……いた。数十メートルほどの先の道の上で、犬と人らしき一組の影を見つけた。
俺は尾行を開始する。見失わないように遠すぎず、かといって見つからないように近づきすぎず。しかし、何か様子がおかしかった。
やがて夜の暗闇に目も慣れて、俺の目はだんだんとその姿を鮮明に捉え始めた。そして、はっきりと見えた彼らの姿に、俺は黙って引き返すことにした。
そりゃないって。
果たして俺が見たものは、俺の人生を大きく変える衝撃を与えた。俺が見たものとは――二足歩行するボルゾイのボルコ。そして、リードに繋がれて四足歩行する父親の変態的姿だった。
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