第22話 武術大会

スザンヌと歩いて王宮に向かうサトル。


一応クリスティーナとアグネスに挨拶をして、王妃のもとに向かい、武術大会の担当者を紹介してもらう。

そこでスザンヌとも別れて、サトルは大会参加者の控室に向かった。


スザンヌはクリスティーナ達のところに行き、騎士団を含めた皆で武術大会の特別席に向かった。


武術大会参加者の控室は東と西に二部屋設けられていて、サトルは東の控室に連れていかれ、そこで担当者から皆に紹介された。


「今回急遽参加することになったメッシーナ王国冒険者サトル殿だ、決して荷物持ちでは無いからな(笑)」と女性の担当者なので鼻から馬鹿にした様子だ。


”まぁ、今に見ているがいい、俺の本当の姿を見せてやる”とサトルは黙ってお辞儀して傍の椅子に座った。


既にここにいる5名の競技者の力は見切っていた。

Aランク程度が二人で一人は魔法師でスキルなし、魔法は火属性魔法でレベル4程度、残りはBランクばかりだ。


西の控室にはSランクが居てほしいと願うサトルだった。


一人の女性が「おい、サトル君というのか?わざわざメッシーナから負けるとわかって来る君も物好きものだな」


「ああ俺はもの好きなんだよ」と意に返さない。


いよいよ始まるというので、全員が会場に行く。


西の控室の連中5名も会場に現れた。


サトルは全員を【鑑定】すると一人だけSランクの女性でスキルが【縮地】を持つものがいるが、総じて皆弱い。


よく見ると昨日決闘を申し込んできた女性がいた。

目が合うなり下を向いてそらしてきた。


1回戦で当たったら可哀そうだと思いながら知らんぷりをして他の女性たちをみた。


目が行くのはやはり『おっぱいだ!』、後ろに回って掴んだらスザンヌに怒られるから【インビジブルハンド】で手を動かして魔法を放ったように見せて触っちゃおうと考えて一人ウシウシ喜ぶサトルだった。


観客に向かって、司会者が「ただいまより武術大会を催します、今回は特別ゲストとして、メッシーナ王国の冒険者サトル殿も特別参加致します。決して荷物持ちではないので戦いの最中逃げ出すことはしないでしょう」


観客が大笑いして受けていた。


クリスティーナ達が居る一角だけはニヤニヤしているだけだ。


「今に見てなさい、吠えずらかくのはお宅の国の連中よ」とクリスティーナが小声でつぶやいていた。


試合が始まり、1回戦はなんと昨日気絶した女性とサトルに声を掛けて来た女性が当たった。


昨日サトルに気絶させられた女性が剣で東方の女性の腕を切り、戦闘不能にして彼女が勝った。


次の戦いは東方のAランクの女性が相手のBランクを負かして勝ち、サトルの名前が呼ばれた。


相手はAランクの女性で剣士だ。

サトルは素手でわざとらしく手を前に出して、構えた。


審判の「始め」の合図で相手が斬りかかって来るが、サトルが手を振ると一瞬で気絶する女性、サトルが簡単に勝った。


観客はびっくりしてざわついていたが・・・。


その後も試合が続き5人が勝ち残った。

内訳は西方が3名、東方2名だ。


次にサトルと昨日の女性が当たることになった。

どうやらSクラスの人はシードされたようだ。


サトルは又も素手で昨日同様、胸を触りまくって気絶させて勝った。


次の試合は西方の剣士が東方の魔法師にやられてサトルと魔法師が戦うことになった。


お互い素手の勝負だが、サトルは手を前に出しているだけ、魔法師の女性の胸は大きくて触りがいがあるな、などと思ってはいけない。


魔法師が【ファイアボム】を放ってくる。

サトルの目の前で消えてしまう。


更に【ファイアスプラッシュ】を放ってくる。

これも目の前で霧散する。


サトルは手を前に振ると、魔法師が気絶してサトルの勝利となった。


この辺りになって観客が騒ぎはじめ、サトルの強さに気づき始めたようだ。

スザンヌ等は必死で笑いをこらえて肩が震えているのが解る。


明日の決勝はSランクの女性剣士だ。

一応敬意を表して『鬼切丸』で相手してやるつもりだ。


スザンヌ達のもとに行き「どうだった?」とスザンヌに聞く。


「サトルなぁ、わざとらしく手かなんか前に出して、振ったりしたって可笑しいぞあれは・・・恰好悪いぞ、手の振り方を考えろ」と注意される。


「そうかぁ、何かポーズしないといきなり気絶しても皆が驚くので魔法をはなったつもりなんだけどなぁ!」


「笑えた笑えた」とスザンヌ。


王女達はこの後王妃の招待で園遊会が有るそうで、サトルとスザンヌは街を散策すべく王宮を後にした。


2時間ほど王都を歩き回り、宿の近くの昨日のところでお昼を食べる。


宿に戻って、シャワーを浴び二人で夕食までベッドでスキルのチェックと言いながら合体を繰り返し、スザンヌは完全にサトルの『制御の腕輪』無しでも気絶もせずに相手をできていた。


夕食はファングボアの生姜焼き定食で、サラダとスープがついてスープは飲み放題だった。


食事を終えて、二人でお風呂に入る。


ベッドでもスキル全開でスザンヌはうっとりしているが全く大丈夫なのには驚くサトル。

更にスキルに対して耐性が強くなっていくようだ。


「サトル、明日の武術大会が終わったら、王都のギルドのダンジョンに二人で潜ろう!」


そう話しながら二人は寝入った。


翌朝、朝練を二人でして、朝食後にゆっくり王宮に行く。


競技場では既に観客で埋め尽くされていて、スザンヌはクリスティーナ達のところで観戦するようだ。


東にサトル、西にはこの国最高ランクのSランクの剣士が登場している。


きょうはサトルも『鬼切丸』で相手するつもりだ。


「始め!」の合図で一瞬で間合いを詰めて上段から打ち下ろすSランクの女性。


サトルは未だ抜かない。観客全員が自国の騎士が勝ったと思った瞬間、光よりも早く抜かれた『鬼切丸』を峰に返して、剣士の腹を打って一瞬で意識を奪う。


開始早々2秒もかからずサトルの勝ちだ!


観客が全員呆然として居る。


サトルは【ボディーシールド】をして、気絶して居るSランクの背中に喝を入れて正気に戻してやった。


審判が「勝者、メッシーナ王国冒険者サトル殿」と勝利宣言をしてくれる。


サトルは王妃より優勝賞金白金10枚を受け取り、観客に手を上げて、舞台からおりた。


周りの観客を含めて試合に出ていた9人が皆驚いていた。


男が冒険者になって居る事自体珍しく、ましてBランク以上は今まで一人もいない。

少なくともこの国、プロバラ王国には今も一人もいないのだ。

それが隣国のメッシーナ王国の冒険者の男がたった2秒でSランクの冒険者を負かした。


審判の女性から「後ほど王妃様の部屋でサトル殿の話を聞きたいと王妃様が申しておりますので、このまま部屋に私がご案内いたします」


サトルは目配せでスザンヌに合図して王妃の部屋に寄ってからクリスティーナ王女の所で会おう、と合図を送った。


審判員の連れられて、客間に案内されたサトルは5分ほど待つと王妃を筆頭に3人の王女達が入って来た。


「サトルとやらさすが昨日のお主の話ぶりの通り、男性でも女性のSランクを2秒で瞬殺する力を持って居るのだな、あっぱれであった」


「身にあまるお言葉、光栄にございます」とサトル。


王女の長女らしい女性から「あなたは冒険者ですか?ランクは?」


「はい私はメッシーナ王国キタミというところを中心に活動する冒険者でつい最近Sランクになったばかりです」


「つい最近Sランクになったのですか?」


「はい、何せ冒険者登録したのが未だ三週間経っておりませんので・・・」


「ええええ?冒険者なりたてなの?」と末娘の王女様が驚いていた。


「サトルとやら、メッシーナにはスザンヌを筆頭に他にも二人のSクラスがいたが試合をしたことがあるのか?」と王妃。


「はい、一応騎士団長とスザンヌさんとは模擬戦をして勝ちました」


「サトルさんの相手が皆戦う前に気絶してましたがあれは魔法ですか?」と三女の王女様が聞いてきた。


「あれは私独自の魔法スキルです」


「剣を抜かなくても相手を倒すなんてすごいわ」と三女の王女がしきりに感嘆して褒めてくれる。


「魔法は何の属性をお持ちなの?」と三女の王女。


「一応全特性持ってます」


「王国筆頭魔法師でも2個しか持っていないのに?」 


「メッシーナ王国の筆頭魔法師も属性は3個との話でした」とサトル。


「サトル、我が国とメッシーナ王国はとても仲が良く友好条約を結んでおるが我が国の隣国のキヌーイ帝国は常に領土拡販の野望を持って我が国に幾度となく戦いを

挑んできておる。その度に我が国はお主の国に騎士団の援軍を頼んで居る始末じゃ」


「キヌーイ帝国にはSランクが二人おり、そのうち一人は3属性の魔法師で火炎魔法の達人で我が国は常に其奴に痛めつけられておる。我が住民達を守るためにいずれお主にも王妃より出陣の願いが出ることもあろう、そのときは我が国の民を助けると思って、我らに力を貸してたもう」エルミナ王妃が一介の冒険者サトルに深々と頭を下げてきた。


「王妃様、頭を上げてください!このようなご縁ですが、私で役に立つのであればいつ何時でも馳せ参じますので、そうだ王妃様に私のマジックアイテムの『遠距離通話器』をお渡ししておきますので何かあれば一瞬で【転移】でこちらに馳せ参じます」


「サトル、お主、古代魔法の【転移】が使えるのか?お伽話に出てくる魔法だと思うていた」


「はい、どこにでも【転移】ができるので一瞬で王妃様のところに現れます」


「そうか、それではサトル私とお主の友情の証として我が国の秘宝の『マジックダガー』を授けよう。この国で何かあればこのダガーを出せば誰もお主に文句はいわない」


「有り難くお受けいたします。王妃様ご家族に何かあれば瞬時に私が現れてお助けいたします」


「よろしく頼みますよ」とエルミナ王妃が優しい微笑みでサトルに『マジックダガー』を手渡した。


サトルはお礼を言って王妃達と別れ、スザンヌが待つ部屋に向かった。


向かいながら『マジックダガー』を【鑑定】してみると『狙った的に障害物をすり抜けて必ず当たる短剣』と出て、大切に【次元ストレージ】にしまった。


「サトル、王妃様との謁見は終わったのか?とスザンヌ。


「ああ、何かあればこの国のことも頼むと言われ、この国の秘剣のダガーを授かったよ」


「偉く王妃様に気に入られたな、よかったよかった!」とニコニコのスザンヌ。


「それじゃ、アグネス様、クリスティーナ様私達二人は冒険者ギルドに行ってダンジョンでも潜ってまいります。夕方明日の予定を伺いに又参ります」と言って二人で王宮を出て冒険者ギルドに向かった。


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