第80話 嵐のごとく Ⅳ ⑯

【嵐side】


 俺達は連携の練習の為に一緒に狩りに来ている。

 エンジャーお金は、テイマーの事を情報屋ギルド『王様の耳はロバの耳』に売りつけたら、かなりの金額に成った。

 その結果、ファーストの街では チラホラとモンス従魔を連れたプレイヤーが出始めていた。

 長靴を履いた猫や背中にまきを背負ったタヌキ……カチカチ山か? ピンクのウサギは、何の物語だろう ?

 そんな俺達も周りのプレイヤーから注目されているのには気がついていた。

 正直、俺のタヌキチぶんぶく茶釜は、バカにされる覚悟をしていたのだが、タヌキチが歩きながら周りに愛想を振り撒いているのか、アチコチから『カワイイィィー !』の女性プレイヤーの声が聞こえてきた。

 流星ペガサスユニユニコーンノワールバイコーンも、まだ子馬の為に乗らないで一緒に歩いているマリンやサリー、アゲハも仲良さげにしているのに……

 カゲトラ龍騎カメクッパ(玄武)は口喧嘩しながら歩いていた。


お前玄武を助ける為に、俺の貯金が消えたんだから、現実世界リアルワールドに帰ったら弁償しろよ!」


「……セコっセコい ! 相変わらず青龍は狭量きょうりょうだなぁ~、本当に龍族なの ?

 だけど、今から人間に転生しても赤ん坊だろうから、返すのは大分先に成ると思うよ ! 」


「くっ、使えねぇー !……せめてゲームでは、役に立てよ ! 」


 ふたりの口喧嘩を見てウサピョンがオロオロしている。

 従魔に心配させているんじゃねえよ……


 そんな事をしている内に目的の里山に着いた。

 サナダギレンロッキーは、ともかく妹達や、女の子達が喧嘩を止めなかったのを不思議に思っているとユカリン由利凛が教えてくれた。

 ……要は、戯れているだけだから放っといたと云うことだ。

 ドライ過ぎじゃ無いですか、君たち妹たち



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔



 里山の近くにある小さな村、その畑を荒らす『ゴブリン・ライダー』を退治する依頼を冒険者ギルドから受けたのだ。


 ゴブリン・ライダーと云ってもグレーウルフにゴブリンが騎乗しているだけなんだか、機動力が有って村の自警団の手に負えないので冒険者ギルドに依頼したと云うことだ。

 こちらも『馬』が3頭と『ウサギ』が1羽いるから機動力なら負けないハズ !


 村長に挨拶をした後に、ゴブリン達が現れる畑に案内された。

 ファーストの街のような城壁は期待していなかったが……

 外の境界が壊れた木の柵だけとは……


 えっ、壊れたのはゴブリン達が暴れたからだって !

 ごめんなさい。


 悪かったら謝る ! 幼い頃から由利子オバチャンにしつけられたせいか、条件反射で出来るように成っていた。

 スパルタだったもんなぁ~。


 畑で待つことゲーム内時間で数時間、奴らが現れた !

 俺達がゴブリン・ライダーを引き付けている間に従魔達は奴らの後ろに廻り込んで退路を断つ計画だ。

 只、カメクッパ(玄武)はカゲトラに付いて防御に徹している。

 そしてタヌキチぶんぶく茶釜は、俺達の後ろで『応援』している。


 チャッ チャッ チャッ ♪ チャッ チャッ チャッ ♪

 チャッ チャッ、 チャッ チャッ チャッ チャッ チャッ ♪


 三三七拍子かよ !


 それを三回繰り返すと、


〖パーティーのステータスが 10% 上昇しました。

 制限時間は 10分です〗


 …………ごめんなさい !

『使えねぇー !』 と思っていた、タヌキチが支援系だったとは !

 人は見かけによらぬもの と云うのは本当なんだな……タヌキだけど。


 エデン英里香が二丁拳銃でグレーウルフを撃ち抜くと、ゴブリン達が次々と落馬……落狼していった処にアリア明日菜リアスパラスが槍でゴブリン達に攻撃的をしている。

 撃ち漏らしたゴブリン・ライダーはユカリン由利凛サリー秋穂が氷魔法『ギガ・ブリザード』で足留めをしてマリン星華が回し蹴りで攻撃、弱って動け無いゴブリンやグレーウルフをアゲハ蝶子がサンダースピアで止めをしていた。

 後方ににげだしたゴブリン達は、サナダギレンロッキー流星、ユニ、ノワール達 ペガサス、ユニコーン、バイコーン、に捕まり全滅していた。


 俺とエリーゼ恵利凛は、最終防衛ラインだったから活躍の場は無かったが、俺の従魔であるタヌキチの手柄は俺の手柄だよな …………誰かが『役立たず !』と言っている気がするのは気のせいだよな !

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