第78話 嵐のごとく Ⅳ ⑮

【嵐(ケンシン)side】


 格安でパーティーハウスを手に入れた俺達は、自由時間として別行動をしている。

 薄汚れていた屋敷も冒険者ギルドから派遣して貰った冒険者に掃除して貰い綺麗に成った。

 掃除と云っても『クリーン』の魔法を屋敷の外と中の部屋にかけて貰っただけだが、感謝されていた……妹たちが !


 既に妹たち『風林火山』は美少女パーティーとして有名に成っていて妹たちにお近づきに成りたいプレイヤーが沢山居るそうだ。

 マリンやサリーみたいに『仮面』を付けるように勧めたが断られた。

 まあ、妹たちが一般人にどうにか出来るとは思わないがな。


 そんな訳で自分の部屋に置くインテリアを見にプレイヤーやNPCが出店を出しているエリアに来ているんだが……


 ピン ! とくるモノが無いなぁ~ ……なんて考えていたら、一つの古ぼけた茶釜が目についた。


 そうそう、こういう骨董品が欲しかったんだよな !

 どうやらNPCの店のようだから、値段交渉は無理そうだな。

 茶釜を買ったら、オマケで茶釜をみがく布とワックスを貰った。

 パーティーハウスに帰ったら、早速磨くとしよう !




 茶釜を綺麗に磨いていたら、急に茶釜から手足が生えて、尻尾が飛び出し……頭も出てきた…………タヌキ ?


 ピコーン♪

〖妖獣ブンブク茶釜をテイムできます! Yes/No 〗



 …………ヘッ ?


 あっ気にとられれていると、ブンブク茶釜がウルウル悲しそうな目で訴えてきた。


 ええーっい、俺は悪く無いからな !

 Yes の処を叩くと、


〖妖獣ブンブク茶釜の名前をつけてください ! 〗


 ヨシ、良い名前をつけてやるからな !


[ タヌキチ ]


 どうだ、良い名前だろう!

 タヌキチは喜んで両手に日の丸の扇を持っておどり出した。


 これで俺も『テイマー』の仲間入りだな !

 どれどれ、タヌキチの能力は…………


 攻撃力も守備力も低いなぁ~

 魔法は………無いなぁ~


 特殊能力は……『応援 !』『 宴会芸 !』


 …………つっ 使えねぇーーー !



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔



 パーティーハウスに皆が帰ったて来てから、タヌキチを紹介した。


 正直、サナダギレンロッキーにはしかられるかと思ったが、大爆笑した後に許してくれた。


 そう、アレは業とでは無く事故だったんだよ。

 愛想を振り撒くタヌキチは女の子たちに可愛がられているようだ。

 戦闘には 役にたちそうに無いが、パーティーのマスコットだと思えば良いか。

 マリンの流星ペガサス、サリーのユニユニコーン、アゲハのノワールバイコーン、カゲトラのクッパ玄武ウサピョン蹴りウサギと俺のタヌキチブンブク茶釜の初顔合わせをしたら、仲良く成ったようで追いかけっこをしながら遊び始めた。

 アゲハも妹たちもゲーム内の撮影アプリで撮影をしているようだ。


 ……これでアゲハの奴がゲーム専用配信サービスで儲けるのは、腹が立つが蝶子の関心が俺達に向かないなら良しとするか。



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♖♕♔


 その夜、早速 蝶子が配信を始めていた。


【運営side】


「ヤッホー ! みんなのアイドル・アゲハの実況が、はっじまっるよー ! 」



「ウギャァァァー ! また、アゲハちゃんの配信サービスに負けているじゃないかぁーーー ! 」


 運営側のスタッフA子が叫んだのを聞き付けて他のスタッフが Aの管理する画面を見ると、PV数が凄い勢いで上がっていた。


「グッ、 動物モノと幼子の配信は人気があるが……

 これは完全にヤられたな !」


 配信サービスチームのチーフがため息交じり言うと、他のスタッフもため息をしていた。


「前の配信で負けたからって、意地悪をして『バイコーン』をなすり付けるから『罰』が当たったんじゃないか !」


 スタッフBが言うと 反論するスタッフA子が、


「『JC』に負けたのも悔しかったのは否定しないけど、『化粧箱』を使わないで、こんなに可愛いなんて腹が立ったからよ !

 絶対に この娘は『悪女』に成るわよ ! 」


 スタッフA子をなだめながら、チーフは


「 『JC』相手に嫉妬するなよ……

 ここの処、徹夜続きだったから疲れているんだよ。

 明日は休んで良いから、疲れを癒してくれよ」


 A子を家に帰宅させたチーフは、残ったスタッフメンバー達に『げき』を飛ばしていた。


「こっちは 『プロ』なんだから、次は必ず勝つぞ ! 」


 しかし、連日連夜のブラックさに疲れているスタッフの返事は小さかったようだった。



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