第57話 文化祭 ①

【由利凛side】


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 顔を真っ赤にした女子生徒たちが、アンソニー明日菜に見惚れているのじゃ。


 席を案内されて女子生徒が座ると、


「よく来たな ! ゆっくりしてくれよ、嬢ちゃん」


 テリー英里香がメニューを差し出したけど、女子生徒たちはメニューを見ずにテリーに見惚れている。


 教室の入り口では、呼び込み 兼 行列整理として、着ぐるみを着た、カニウシシベリアンハスキーロッキーが対応しているので、お客様が入りすぎてパニックに成る心配は無いのじゃ。


 教室の中に入れるお客様の数を絞ることで、男装した星華ちゃん達の負担も軽いハズ。


 メインの大江戸姉妹は、1ヶ所に留まらずに各テーブルを回っていて星華ちゃんや秋穂ちゃんが男装して接待している。


きみ、可愛いね。

 いっそくさりつないで閉じ込めちゃおうか」「ね」


 シュラパラスが言うと、鼻血を出してしまった女子生徒や


「閉じ込めてください!!」

「私も」「私も」「私も」


 監禁希望者が続出してしまったのじゃ。


「はい、あーん……お姉ちゃん、食べて♪」


 ショッタ子を演じているアスラン恵利凛もだえている女子生徒や数少ない男子生徒に接待されて甘えながら、次々とジュースやお菓子を注文しているラニーニャ蝶子が売り上げに貢献しているのじゃ!


 えっ、妾が何をしているのかと云うと総合プロデューサーとして陣頭指揮をしているのじゃ。

 黒猫の着ぐるみを着てお運びをしながらだから、サボっていないのじゃ。


 沢山、お金を使ってくれたお客様には、スマホでのツーショット写真を好きな執事と写せるので売り上げが凄い勢いで上がっていくのじゃ。

 この分だと仁おじちゃん達の記録を破るのも時間の問題だと思っていたら……



 ガラ ガラ ピッシャーン!


 入り口とは反対側のドアが開き、お母ちゃん由利子先生に乱入されてしまったのじゃ!


「コラァー! 学生の癖に何てハレンチな喫茶店をやっているんだぁー!

 お前達の親も大概たいがいだったが、ここまでアカラサマなことをしなかったぞ!

 責任者は誰だ!

 素直に自首したのなら減刑を考えても良いぞ! 」


 とっさに控えていた只野ただのくんに合図をして売り上げ金を持って逃げて貰った。

 カースト最下位と言っていたけど、彼には『存在感』を限りなく消して空気みたいに成る『潜伏せんぷくスキル』を持っているのじゃ。


 妾は直ぐに、お母ちゃんの前に行った。

 下手な言い訳は逆効果に成るのじゃ。


「妾が責任者なのじゃ!

 総合プロデューサーをして指示したのは、妾だから他の生徒は許して欲しいのじゃ!」


 妾の様子を見て直ぐに大江戸姉妹も自首したのじゃ。

 そんな妾たちを見て少しひるんだお母ちゃん由利子先生の前に、次々とクラスメイト達も一緒に『罰』を受けることを申し出た…………蝶子ちゃん以外が。


 そのせいか、皆で反省文を書く事と売り上げを寄付することで許して貰ったのじゃ。

 当然、執事喫茶店は閉店に成ってしまったけど…………想定内なのじゃ!


 文化祭が終わったら、『反省会』と云う名の打ち上げをやるのじゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る