第54話文化祭 Before ④

【由利凛side】


「決まったのじゃ!

 残念ながら『着ぐるみ喫茶店』では無く、女子生徒による『男装執事喫茶店』に成ったのじゃ!」


 妾が結果を話すと、あきらかに“ホッ”と、している巧お兄ちゃんにムカついたのじゃ!

 だけど、妾は大人だから怒らないのじゃ…………後で、いっぱい働いて貰うから我慢、ガマンするのじゃ。


「それは良いとして、女子生徒の衣装は、どうするんだ?

 流石に、衣装制作は専門外だぞ!」


 …………だいぶ、巧お兄ちゃんも警戒心が強く成ったのじゃのう。


「それは『大江戸グループ会社』の『大江戸紳士服』が特別に無償提供してくれることに成っているのじゃ!」


 妾の言葉に、リビングでくつろいでいた大江戸姉妹も反応したのじゃ。


『どういうことなの、ユリリン?

 てっきり、お母様が社長をしているファッション部門から生地だけ安く譲って貰って、自分たちで制作するんだと思っていたのに!」


 英里香ちゃんも知らない処を見ると、楓おばちゃんも娘に怒られるのは嫌らしいのじゃ。


「何か、交換条件が有るんじゃないの、由利凛?

 アノ、楓お義母様がボランティアで提供するなんて考えられないわ!」


「そんなことをしたら、勇気お義母様から怒られるし、金銭にウルサイ楓お義母様がボランティアなんてしないと思う」


 明日菜ちゃん や パラスちゃんにまでバレているようなので、正直に話すことにしたのじゃ。


「実は、カクカクしかじか で無償提供に成ったのじゃ!」


「なるほど、なるほど、了解したわ…………って、成るかぁー!

 何が『カクカクしかじか』よ、漫画やラノベじゃあるまいし、そんなんで判る訳無いでしょう!」


 英里香ちゃんに怒られてしまったのじゃ。

 可怪おかしいのう、妾の愛読しているネット小説では通じていたのに、アレは やっぱり魔法なのかのう~。


「実は、執事喫茶で皆が執事で接待している姿を『広告』に使うのが、条件なのじゃ。

 メインは大江戸姉妹で、既に仁おじちゃん や 勇気おばちゃん、楓おばちゃん、アリスおばちゃんからは許可を貰っているので大丈夫なのじゃ! 」


 妾が胸を張って教えてあげた張れるだけの『胸』も無いクセにのじゃが、


「 一番大事な私達に許可を取らないで、何が大丈夫なのよぉー!

 私達が、お母様達に弱いのを逆手に取って、外堀を埋めるなんて卑怯よ、ユリリン!」


 ガクガクと妾の胸ぐらを揺すっても手遅れなのじゃ!

 戦争は、始める前に勝利しているのが上策なのじゃ。

 ダラダラと長引かせて被害を増やすだけ増やして結果を出せないマヌケとは違うのじゃ!


「ちなみに『着ぐるみ喫茶店』だったら、どうなっていたの?」


 明日菜ちゃんは、冷静ぶって聞いて来ているけど……マジで怒髪天する5秒前みたいに成っているので、素直に白状することにしたのじゃ。


「 予定では、妾の『着ぐるみ喫茶店』をキッカケに、この冬のルームウェアとして、着ぐるみを流行らす予定だったのじゃ!

『妾や恵利凛、大江戸兄妹は、見目麗しいからインスタ映えするので、絶対に大流行する』と、楓おばちゃんが言っていたのじゃ!

『流行は自然発生するのでは無く、私達ファッション業界が創るモノ』だと言っていたのじゃ!

 どちらにしても、妾たち生徒の負担は軽微だったので、良かれと思ったのじゃ!」


 とりあえず、皆が納得したようで良かった。

 実は楓おばちゃんから、お小遣いを貰って 皆を売ったのがバレなくて良かったのじゃ。

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