第51話嵐のごとくⅢ ⑪

【嵐side】


 またしても時間制限のあるクエストだ!

 あらかじめ、クリスに声をかけておいて良かったぜ。

 それも今回は、クリスが連れて来てくれた助っ人が居るから、初のフルパーティーだ!


「『トモエ』だ。 職業は『武将』 よろしく頼む」


 この間、俺達を助けてくれたのは『武士』では無く『武将』だった。

 武将は武士の上級職、つまり超級職だ。


 う~ん、俺達も独自のメンバーを見つけて早く上級職に成りたいが、まずは中級職に成らないとな。


 魔の森の中を進んで行く。 目標は、この間の湖だ。

 子供達は、ヨサークさんの話を聞いて目をキラキラさせていたようだから、湖を目指したのだと…………クリスが言っていた。


 誰だ! 誰だ! 誰だ? 俺達を脳筋パーティーと呼ぶ奴は作者だ!


 冗談はさておき…………妙だ? かなり魔の森を進んだのに敵モンスターに出くわしていない。

 アゲハ以外は、皆が警戒レベルをマックス状態にしている。


「 私の日頃の行いが良いから神様が味方に成ってくれているんだねぇ~♪」


「「「「「………………」」」」」


 能天気な事を言っているアゲハを無視して皆が周囲を警戒しながら進んでいると湖に到着した。


 周囲を隈無く見渡すと湖の辺りに人影が見えた。


「アーウィンくん、グレースちゃん !

 勇者パーティーの聖女のお姉ちゃん僧侶戦士だろう!が迎えにきたよぉ~♪」

 何故か、反応しない二人に安易に近づいて行くアゲハ。


 アッ アホかぁー !

 これが罠だって、俺にだって判るのに無防備に近づきやがって !


 思いは一緒なのか、腐れ縁の為なのか、俺とサナダがアゲハの後を追い駆ける。


「あっ、気を付けて! ケンシンくん」

 クリスが後ろから心配して声をかけてくれる。

 案の定、敵がポップした湧いた


 キメラか? ウシの身体にブタの顔、背中にはニワトリの翼?か。


 敵モンスターの頭の上に『カンピロバクター』と書いてあり、

 Hpバーが3本もある。


「エリアボスだよ、気を付けて!」

 クリスの掛け声に皆が、戦闘体制をとった。


 アニメやゲームだと、普通はアルファベットで表示される敵の名前やプレイヤーの名前が、カタカナで表記されるのは日本人用にセッティングされているためだ。

 ゲーム開始時にあらかじめ日本語か他の言語かセッティングできる親切設計と云う訳だ。


 ワンパーティー 6人で対応出来る敵なのか ?

 初めての『ボス戦』に否が応でも緊張感に包まれる。


 俺とトモエが盾役に成り、先頭で敵の攻撃を受けている合間をってサナダやギレンが物理攻撃をして、クリスが『火遁かとんの術』で敵を攻撃している。


「クリスー! トンマの伊賀者共いがものどもを火遁の術でバーベキューにしてやれぇー!」


 俺がクリスに声援を送ると、


「伊賀者って、エリアボスは伊賀では無いからね。

 当然、わたしも甲賀こうがじゃ無いし !」

 俺の『ボケ』にクリスが『ツッコミ』で応えてくれる。

 一度、クリスをスカウトしてみるかなぁ。


 アゲハも真面目に補助魔法で俺やトモエの防御力を上げつつ、回復魔法で減ったHpを回復してくれていた。


 敵のHpバーは徐々に減っていく。

『俺達も結構やれるんじゃないか !』

 そう思い始めた頃、敵のHpバーが残り1本に成った処で敵の対応が豹変ひょうへんした。


「皆、気を付けて!

 攻撃パターンも攻撃方法も変わるよ!

 ここが、正念場だから気合いを入れ直していくよ!」

 クリスの掛け声で、今まで作業的に戦っていた皆に緊張感が走った。

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