第7話 ヒビキの独白 2

ヒビキが カーテンを開けると

騎士の乗った馬が2騎 並走しているのが見える


「そろそろ 国境だな 」


ヒビキはビクトリアの頬をひと撫でし 自分の考えを整理するかのように

独り言を続ける


「実際 執事の手腕も多分にあるとはいえ

この一族に一種の予見の才能があるのは本当だと思う だけど

父上も 夢見というより 転生者なんじゃないかな?


たぶん アイ綺羅の事は小説もアニメも漫画もどれもご存じない。 

ただ 前の世界の記憶をもったままここに転生してきてこの国と家族を大事にするためにその記憶と知識を使っている。

そんな感じかな?


俺の知っている小説では 母上は身体が弱くてビクトリアを産んで間もなく亡くなっているはずなのに 俺が初めてお会いした時だって、今だってとても健康だし、

朝食はとらない家庭が多いこの国で 我が家が大事にいていることは「早寝 早起き 朝ごはん」だし


他にも「ホウ レン ソウ」 とか 「整理 整頓 清潔 清掃」とかって

 俺がこっちへ来る前に聞いたようなスローガンが当たり前のように出て来るしね。


病にも詳しくて 「昔取った杵柄だよ」って笑うのを

俺が はっとして見上げたら もう 何事もなかったような顔をしていたから、

本人は 言う気はないんだろうなあ


前世の常識にのっとって 可愛い娘を教育したのかな? 

あの溺愛には 孫を溺愛するジジイ感もあるから 孫なのかな?


その 父上の家族愛のおかげで 姉上はこんなに可愛らしい 悪いことが出来ない”悪役令嬢”に育った。

だから 俺もクレアも絆されちゃって ついでに 家の者も 周りにもファンができちゃったんだから 面白いよなあ


物語を知らない父上が一番のキーパーソンなんだよな


小説での登場は 『父、ギムレットは妻を失った悲しみにとらわれ 妻に似た娘を甘やかす事しかできなかった』 その一行位だし アニメでもキャラ設定もされていなかったんじゃないかな?


まあ 本人 あれじゃあ あまり絵にする価値ないかな? 

切れ長の目とか 形のいい口とか パーツはいいんだけどなあ配置がいまいちなんだよなあ

あと 髪ね …… 俺も注意しよう 髪の色が同じってことは同じ運命かもしれないしな


髪に良い事思い出して、夢見ってことでわが家に財をもたらせないかな?

マッサージとか アロエ? とか ヘナって有るのかな?


おっと そろそろ 姉上を起こさないとな」


ヒビキが独白を終え ビクトリアに優しく声をかける


「さて 姉上 そろそろ 起きてください

国境ですよ」


「あら 私 眠ってしまったのね ごめんなさい

ヒビキ 重かったでしょ?」


「いいえ 先ほどまで 僕も寝ていたので 大丈夫ですよ」


ヒビキはさらりと嘘をつく


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る