第6話 ヒビキの独白
「姉上?
姉上?
ふふふ 寝てしまわれましたね
あーーーー かわいいなあ トリア」
ヒビキはビクトリアの頭に頬を寄せる。
「ねえ トリア
俺は”夢見の一族”なんかじゃない
そんな稀有な能力なんて持たない
ただの”転生者”なんですよ
生家のスクラブ家の第5子として生まれて 贅沢はできないけれど 平均的な下級貴族としてごくごく平凡に生きていた。
たった一度、あの日 姉上の夢を見た時に自分が”愛と友情は綺羅星のごとく”という少女マンガの世界に居る事に気が付いたんです。」
トリアがムニャムニャとなにか言ったようだ
「聞こえ
て…ないですよね?大丈夫 うん
そして ストーリーの全てを思い出した
俺は 悪役令嬢の義理の弟、容姿端麗 頭脳明晰であるにも関わらず 姉に徹底的に無視されて お嬢様が無視するならと使用人たちも俺を無視して 伯爵家の中で孤独を感じながら生きていく弟 ヒビキ ネイビー。
もちろん 同じ王立学園に入学し クラスも同じなのに互いの間に交流は無い。
そして ビクトリアは 早くに母親を亡くし 母親と同じ髪色と瞳の王子に執着。
一時は王子の婚約者候補にまでなっていたのに ライバルたちを蹴落とすために手段を選ばず行動する。そして 信じていた取り巻きの裏切りによって王子にばれて、婚約破棄だけでなく国外追放までされるお嬢様。
残されたヒビキは ネイビー家没落の過程で主人公 スーザンホワイトと出会い 恋に落ちる
いや~ よりによって 俺、ヒビキかあ って
あんまり出番ない役だし 没落とか面倒だし スクラブ家の一員としてこっそり生きて行こうかなとも思ったんだよね
でも 夢の姉上が、ビクトリアがあまりに美しくて 実際の姉上を近くで見られれば ずっと無視されてても 没落も耐えられるかな?
意地悪されるわけでも無いし 最後にヒロインに拾われるなら死ぬことも無いしってかなり打算的な思いで 「アイ綺羅」のストーリーに乗っかることにしたんだよねえ
ガッカリしました?
可愛がっていたおとうとうがこんなやつで…ひっ 今 うん って言いました?
寝言ですよね
うん 大丈夫 寝息は正常ですね」
ヒビキはしばらく黙って 眠るビクトリアの様子を伺う
「姉上にあって驚いたよ。
俺さ 中身は15歳なのに頭脳が5歳になってたのかな? 15歳のビクトリアに会う気満々 だったんだよね。
アホやろ俺?
だから 6歳の貴女のかわいらしさにすごく驚いた。
ズキューンって心臓を撃ち抜かれる音がたしかに聞こえた。
貴女が俺に笑いかけてくれた時に、恋だと確信した。
6歳の幼児になんて ちょっと気持ち悪い気もするけど、
心臓わしづかみされるって こういうコトなんだって納得したんだよね
ホントに 死ぬかと思った あ 思い出すだけで…」
ヒビキは胸を押さえて ビクトリアの寝顔を見つめる
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