第28話 要さんからのプレゼント
おすすめの動画を流したりしながら、ご飯を食べて、途中で要さんといちゃいちゃしたりしたせいで、気がつくと日付が変わりそうな時間になっている。
要さんは緊張しないというか、普段通りに過ごしていてもそれを許してくれる雰囲気があるので、ついだらだらしてしまう。
「要さん、そろそろお開きにします?」
「じゃあ、一緒にお風呂入る?」
「何がじゃあ、なんですか。1ルームのお風呂に2人でなんて無理だって、要さんも分かってますよね?」
見たことはないけど、要さんの部屋もバスルームのサイズは同じだろう。
「だめ?」
「可愛く言ってもだめです。私が後片付けしている間に、一人で入ってください」
無理矢理入れなくはないだろう。でも、私の心の準備ができてない。
「それは駄目。紗来ちゃんが準備してくれたんだから、わたしが片づける。紗来ちゃんが先に入って?」
それなら、と要さんに片付けはお願いして、私が先にお風呂に入ることになった。
でも、バスルームでシャワーを浴びながら、要さんに帰れと言わなかったということは、今日も要さんが泊まってもいいと認めたことになるんじゃないかと気づく。
嫌、じゃないけど、まだ慣れなくて恥ずかしさの方が先にある。
バスルームから出ると、要さんが玄関から入って来たところだった。
「家に帰っていたんですか?」
昨日みたいにシャワーを浴びに帰ったのかな、と思ったけど要さんの格好はお風呂に入る前と変わっていない。ただ、手には大きめの紙袋があった。
「うん。ちょっとだけ入り口にあった鍵借りちゃった。元の場所に戻しておいたから」
「それはいいですけど、それは?」
「クリスマスプレゼント。もう26日に入っちゃったけどね」
差し出された紙袋は、重さはほとんどない。
「開けていいですか?」
「もちろん」
部屋に入ってベッドに腰掛けると、紙袋をベッドの上に乗せてから中身を慎重に取り出す。
薄い白い紙に包まれたそれを慎重に開くと、白に近いベージュの生地が見えた。
折り畳まれていたものを開くと、
「可愛い……」
それはワンピースで、そんなに体にラインがぴったり出るものじゃない。腰のあたりで一回軽く絞られて、そのまま下に緩く広がっている。
フォーマルな感じじゃないので、ちょっとおしゃれをする時に着る服かな。
「一目見て、紗来ちゃんに似合いそうって思ったんだよね」
「……こんな明るい色のワンピース着たことないです」
可愛いけど私にこれが似合うんだろうか。でも自分で選ぶと濃い色ばかりになるので、着たことがない感じの服だった。
だって、明るい色は膨張色だしね。
「きっと似合うから、今度外でデートの時に着て欲しいな」
「検討はしておきます」
「うん。検討して」
着るのは着られたとしても、この服に合う靴とか鞄とかあるかな、と思いっきり悩みそうだった。おまけに隣を歩くのは何を着ても似合う美人な要さんなのだ。
「えと……有り難うございます」
「うん。今から思うと、下着もありだったなって」
「それ、要さんを喜ばせるだけじゃないですか」
今日だって可愛くなさそうなデザインを避けて、できるだけ可愛い感じの要さんに見られてもいい下着を選んでしまった。でも、ちょっと要さんの期待に応えすぎるのは恥ずかしい。
「だって、紗来ちゃんにエロく誘って欲しいから」
「……しませんからね」
「駄目?」
「駄目です。そんなことを言う要さんは泊めてあげませんよ」
「それはやだ」
「じゃあ、お風呂に入ってきてください」
「うん。待ってて」
触れるだけのキスをして要さんはバスルームに向かって行った。
要さんを待っている間に、貰ったワンピースはクローゼットにいったん吊しておく。タグを見るとブランド名は知っているけど、私は入ったこともない店のものだった。
そこまで高いブランドじゃないけど、少なくとも私の行きつけのファストファッションのブランドに比べるとデザインがやっぱり違う。
要さんと一緒に出かけるなら、もうちょっとそこは頑張るべきなのかもしれない。
要さんにどういうお店で服を探すのがいいか聞いてみようかな。
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